
寒い時期によく見られる、手肌のひび割れやあかぎれ。見た目も痛々しく、手洗いやアルコール消毒のたびにしみるため、悩む人も多いと思います。また、ひび割れ・あかぎれは手指など水にさらされることの多い部位にできやすいので、完全に保護することが難しく、なかなか治りにくいのも特徴です。そこで、ひび割れ・あかぎれが起こるしくみや、正しいケアの方法、症状の改善が期待できる食べ物などについて、管理栄養士の小玉奈津実さんに教えてもらいました。
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ひび割れ・あかぎれの原因は乾燥や気温の低下
あかぎれは、皮膚の表面にできたひび(切れ目)が悪化して赤みや炎症を伴った状態で、ズキズキと痛む場合もあります。ひびやあかぎれが手指や足のかかとによく見られるのは、乾燥しやすく、よく使う部位だからです。

皮膚が乾燥した状態が続くと、皮膚の弾力性が失われて硬くなり、その状態で皮膚を曲げ伸ばしすると切れ目が入りやすくなります。
冬にひび割れやあかぎれができやすいのは、空気の乾燥に加えて、気温の低下も関係しています。寒さにより血行不良が起こると、肌のターンオーバーがうまくいかず古い角質が残ります。すると、蓄積した角質が硬くなって乾燥し、ひびが入りやすくなるのです。
ひび割れ・あかぎれの正しいケア
ひび割れ・あかぎれには、こまめな保湿と傷口の保護が大切です。

ひび割れ・あかぎれができたときに保湿クリームを塗る人が多いと思いますが、尿素配合のクリームは、傷口にしみる可能性があるため控えましょう。ワセリンなど低刺激のものや血行を促進するビタミンE入りのものを選び、皮膚をこすらないようにやさしく塗り込むと効果的です。
また、油汚れに強い食器用洗剤は、皮膚の皮脂膜まで落とす可能性があり、乾燥を促進する原因になります。食器洗いの際は、ゴム手袋を着用しましょう。

また、水に触れると皮膚の水分も一緒に蒸発するので、手洗い後はすぐに水気を拭き取り保湿します。また、外出の際も乾燥した外気から皮膚を守るために、手袋をするとよいでしょう。肌にやさしいシルク素材のものがおすすめです。
ひび割れ・あかぎれを改善する栄養素・食べ物とは?
ひび割れ・あかぎれの症状改善には、日々の食事も大切です。薬ではないので即効性は期待できませんが、ひび割れ改善に役立つ栄養素を意識して摂ることで、内側からのケアが期待できます。
大根の葉

冬野菜の代表ともいえる大根。寒い時期は新鮮で安いものが多く出回り、1本まるごと買う人も多いと思います。その時に、捨てずに食べてほしいのが「大根の葉」です。大根の葉は根よりも栄養価が高く、ひび割れの症状改善に役立つ栄養素も多く含まれています。
とくに、皮膚の修復を助けて健康に保つサポートをするビタミンAや、血行を促進し肌のターンオーバーを促すことが期待できるビタミンEが豊富です。
ビタミンAやEは脂溶性ビタミンなので、油と一緒に摂ると効率よく摂取できます。大根の葉をごま油で炒めたふりかけを作り置きしておくと、手軽に食べられておすすめです。また、肌の水分保持に役立つコラーゲンの合成に必要なビタミンCも多く含まれます。ビタミンCは熱に弱いため、短時間でさっと調理するようにしましょう。
さくらえび

殻などもまるごと食べることができる桜えびは、干すことで栄養素が凝縮されており、栄養価が高い食材です。桜えびは、皮膚の材料となるたんぱく質や細胞の合成に関わる亜鉛が豊富です。亜鉛は新しい細胞形成に役立つため、皮膚に生じたひび割れの修復をサポートする効果が期待できます。
汁物や煮物のトッピングに使うとコクや風味が出て、食卓の彩りもよくなります。
豚肉

豚肉は、皮膚の材料となるたんぱく質が豊富です。他にも、肌の再生を促すのに役立つビタミンB2やビタミンB6が多く含まれているので、ひび割れの修復サポートが期待できます。
さらに、豚肉は不飽和脂肪酸の「オレイン酸」も豊富。適度な脂質の摂取は、肌の潤い不足の改善にも効果的です。部位を選ぶときはロースやバラよりも、ビタミンB群が豊富で低カロリー高たんぱくな豚もも・赤身肉がおすすめです。
肌の乾燥でお悩みの人には漢方薬もおすすめ
保湿をしていてもなかなか治らないひび割れ・あかぎれには、漢方薬もおすすめです。
漢方薬は皮膚科の治療でも使われており、ひび割れ・あかぎれの原因となる皮膚の乾燥に体の内側からアプローチするので、保湿や食事では効果が見られなかった場合も改善が期待できます。

漢方では「血(けつ)」の不足があかぎれの原因
ひび割れやあかぎれといった肌荒れの症状は、漢方では「血(けつ)」の不足が原因と考えられています。血が不足すると皮膚に栄養が行き渡らなくなり、皮脂や汗の分泌低下が起こるため、皮膚が乾燥しやすくなります。
ひび割れ・あかぎれ改善におすすめの漢方薬2つ
皮膚の乾燥に用いられるおすすめの漢方薬を以下にご紹介します。
・四物湯(しもつとう)
四物湯は血を補って巡りを整えることで、肌に栄養を行きわたらせ与えます。しもやけやしみの他、冷え症にも用いられます。
・当帰飲子(とうきいんし)
当帰飲子は乾燥肌の定番ともいえる漢方薬です。血を補うのに加え、肌を整えるための栄養を養うので、乾燥肌や皮膚のかゆみなどに用いられます。
漢方薬を始めるときの注意点

漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こる場合もあります。自分に合う漢方薬を見つけるためにも、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
なお、あかぎれが悪化し、出血がひどい場合は、医師に早めに相談しましょう。
◆教えてくれたのは:管理栄養士・小玉奈津実さん

管理栄養士資格取得から食に関する職務に携わってきて15年目。サプリメントの商品開発・外食のメニュー開発・高齢者施設の栄養価計算や献立作成などに従事。現在はサプリメントの監修や食に関する記事の執筆、オンライン栄養指導などフリーの管理栄養士として活動中。さらに、オンラインで漢方を購入できる「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで情報発信もしている。