
何気ない日常会話からでも、品性や品格は言葉遣いとしてにじみ出ます。答えづらい質問を受けた場合にも、いやいや答えてしまったり、無礼だとつっぱねては大人女性としての魅力が下がってしまいます。では、どうすればいいのか。このほど『「ふつうの人」を「品のいい人」に変える 一流の言いかえ』(光文社)を上梓したマナ―スクール代表の諏内えみさんに、対処法を聞きました。
答えづらい、言いにくい質問への対処法
年齢、学歴、収入、住居などの個人情報を聞かれたとき。その場にいない人の悪口を振られたとき。自宅に長居している来客に帰ってもらいたいとき…。なんと返していいのか困った経験はないでしょうか。
「個人情報など答えたくない質問にどう対応すればいいのかという相談をよく受けます。答えづらいからとあいまいな言動をせず、毅然とした態度で“踏み込みすぎないこと”と意思を明確にすることが大切です」(諏内さん・以下同)

ケース1|答えたくない質問「夫の勤務先」
あまり親しくもない人にプライベートな質問をされると困ってしまいます。たとえば夫の勤務先を聞かれた場合、相手のペースに乗せられて、しぶしぶ答える状況になってしまうかも。
◆「え…それはちょっと…」→【品のいい言いかえ】「会社名は申し上げられないんだけど、IT関係です」
「ご主人の勤め先やお子さんが通っている学校名などを聞かれて口ごもってしまうこともあるでしょう。伝えたくないことや、“その場で言うのはマナー違反だ”と感じたことに対しては、答えられない旨を伝えるのも品格のある対応です。上記の例のように“○○は言えませんが、ここまでは教えます”と毅然とすると、きちんと自分を持っている人だという印象を与え、それ以上聞けない雰囲気を作ることができます」
ケース2|答えたくない質問2「現住所」
「どこに住んでるの?」「最寄り駅は?」と尋ねられた場合、どのように対応したらよいでしょうか。
◆「えっと……。○○駅のほうです」→【品のいい言いかえ】「詳細はお伝えできませんが、都内です」
「詳細は言えないとはっきり意思表示したうえで、少し広い範囲の情報を教えると、最後に伝えたという印象が残ります。ただし、基本的にはあれこれ個人情報を尋ねるような礼儀を欠いた人に合わせて答える必要はまったくありません。答えたくないことを相手に明確に伝える習慣をつけましょう。“申しわけない”とすまなそうな表情をする必要もありません」

ケース3|他人の噂や悪口を持ちかけられた場合
その場にいない人の悪口や噂話が始まったとき、つい目の前の人の味方になりがちです。それでいいのでしょうか。
◆「えーっ、本当に!?それはひどいわね」→【品のいい言いかえ】「まあ、そうだったのね」
「その場にいない人の悪口や噂話に同調すると、相手と同じ土俵に立つことになります。用事を思い出したふりをしてその場を離れるのが理想ですが、抜けられない場合は否定も肯定もせず“そういうことがあったのね”とだけおっしゃるのが賢明です。自分の意見を言わないことが、話がエスカレートしないポイントです」

ケース4|帰らない来客
自宅に招いた客がなかなか帰らない。「そろそろお帰りください」と言うわけにもいかず、困ってしまいます。
◆「…(早く帰ってくれないかしら)」→【品のいい言いかえ】「あ、○○へ行くので、そこまでご一緒しない?」
「黙ったままでは事態は変わりません。発想を転換して、一緒に家を出る提案をしてみましょう。“夕飯の買い物があるからスーパー辺りまでご一緒しない?”などと誘えば、相手を追い立てるイメージを与えずに、それとなく外に促すことができます」

品のある言葉をマスターするには、真似から始める
品のよい切り返しを覚えて女性としてワンランクアップしたい。だけど難しそうだという人に、諏内さんは「真似から始めて」とアドバイスします。
「武道や芸術は模倣から始まります。マナーや言葉使いも同じです。憧れのかたがいらしたら、そっくりそのまま真似しているうちに、上品な振る舞いが自然と身につくはずです」
◆教えてくれたのは:マナースクール ライビウム代表・諏内えみさん

結果を出すマナースクール 「ライビウム」、難関幼稚園や名門小学校の高合格率「親子・お受験作法教室」代表。オンラインレッスンから、レストランでのテーブルマナーや個別レッスンも受けられる講座「Class the SUNAI」が人気。「やんごとなき一族」を始めドラマや映画での女優のエレガント所作指導に定評がある。「世界一受けたい授業」「ホンマでっか!?TV」「王様のブランチ」などテレビでも活躍中。 “品のいい伝え方”がテーマの新刊『「ふつうの人」を「品のいい人」に変える 一流の言いかえ』(光文社)など著書多数。https://www.livium.co.jp/profile/
取材・文/小山内麗香