
湿度・気温が高い日本の夏は、肌のべたつき、テカリ、化粧崩れが気になる人も多いと思います。そこで、夏の肌悩みケアができる食べ物と漢方薬について、皮膚科医の金城里美さんに教えてもらいました。
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日本の夏に起こりやすい肌悩み
気温が高いと汗をよくかきますが、湿度も高いと、汗が蒸発せずに肌にずっと残るようになります。また、夏は皮脂の分泌も盛んになります。そのため、汗と皮脂の影響でべたつき、テカリが起きやすくなるのです。

そして、べたつき、テカリがあると化粧ノリも悪くなります。そのため、化粧崩れが起きやすいのもこの時期の悩みといえるでしょう。
夏の肌悩みを食事で内側からケア
肌のべたつき、テカリの改善には、肌の状態を良好にする栄養素を摂ることが効果的です。そこで、積極的に摂りたい栄養素とそれを多く含む食材を紹介します。
ビタミンB1

糖の代謝を助け、疲労回復に効果的とされるビタミンB1は、皮脂の分泌をコントロールする働きをします。ビタミンB1を多く含む食材には、うなぎ、豚肉、たらこ、落花生、玄米、昆布、枝豆などがあります。食事への取り入れ方の一例としては、白米に胚芽米や玄米を加えたり、枝豆で豆ご飯を作ったりするのもいいでしょう。
ビタミンB2

脂質の代謝を助け、食事でとった脂質をエネルギー源に変えるのに必要な栄養素のビタミンB2。これには、老化の原因となる活性酸素から細胞を守るアンチエイジング効果があります。ビタミンB2が多く含まれる主な食材は、レバー(牛、豚、鶏)、牛乳、納豆、うなぎ、卵、干ししいたけ、生しいたけです。干ししいたけは戻し汁にもビタミンB2が含まれているので、だしとして汁ものや炊き込みごはんなどに活用することをおすすめします。
ビタミンB6

ビタミンB6は脂質の代謝を助けるとともに、たんぱく質の代謝も助けます。私たちの体に必要なたんぱく質を合成するときに働く栄養素なので、きれいな肌を作るためにも欠かせません。ビタミンB6が豊富な主な食材は、にんにく、ししとう、パプリカ、かつお、まぐろ、さんま、レバー(牛)、バナナなどです。スタミナが欲しい暑い時期にぴったりのにんにくを、ぜひ香辛料として調理に取り入れてみてください。

これらの栄養素を総称するビタミンB群の摂取量を増やすには、ビタミンB2やB6が豊富なナッツをサラダにトッピングしたり、魚を主菜にするときにはビタミンB12が多く摂れる赤魚を選ぶのもよいです。
肌悩みには漢方もおすすめ
夏の肌悩みには、皮膚科でも使われている漢方薬を用いて、体の内側からアプローチするのもおすすめです。漢方薬は自然の生薬からできているため、西洋薬と比べて一般的に副作用が少ないといわれているため、安心して使うことができます。
血流をよくしたり、新陳代謝を高める漢方薬で根本からケア
炎症を抑えたり、血流をよくしたりする漢方薬によるアプローチは、肌のべたつきだけでなく、しみ、にきび、肌のかゆみ、肌荒れなども改善します。さらに、血流がよくなると肌に栄養がいきわたり、くすみなどが改善されます。また、水分の循環がよくなることで、体から毒素が排出され、みずみずしい肌を手に入れられます。
また、刺激に反応しやすい敏感肌の人やアレルギー体質の人の肌トラブルには、炎症を抑えたり、肌の新陳代謝を高めたりして解毒を促す働きのある漢方薬が使われます。

漢方には、あらわれている症状だけを治療するのではなく、体質を改善することで治すという考え方があります。そのため、体質からの根本的な改善を目指すことができます。食事制限や運動などは時間や労力がかかりハードルが高いと考えている人も、毎日漢方をのむことで体質改善ができるなら気軽に始められますよね。
肌のべたつき、テカリにおすすめの漢方薬2つ
・桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)
桂枝茯苓丸加薏苡仁は比較的体力があり、肩こりやめまい、足冷えがある人の血の巡りをよくする働きがある漢方薬で、にきび、しみ、湿疹、皮膚炎などの皮膚トラブルに使われます。肌のべたつき、テカリがあり、にきびができやすい人におすすめです。
・荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)
荊芥連翹湯は、体力が普通(差し障りなく生活を送れる程度)以上で、皮膚の色が浅黒く、ときに手足の裏に脂汗をかきやすい人の蓄膿症、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、にきびなどに効果があります。肌のべたつき、テカリがあり、にきびができやすく、鼻炎もある人におすすめです。
漢方薬を始めるときの注意点
漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こる場合もあります。自分に合う漢方薬を見つけるためにも、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:皮膚科医・金城里美さん

かねしろ・さとみ。皮膚科医。薬剤師。東京大学薬学部卒業後、医師を目指して、東京医科歯科大学医学部に入学。体、精神とも関わって多様に現れる皮膚の病態に興味を持ち、皮膚科医の道を選ぶ。卒業後、大学病院、総合病院、クリニックでの皮膚科勤務を経て、一般皮膚科から美容皮膚科まで皮膚科領域の診療を幅広く行う。 現在、総合病院の皮膚科常勤医として勤務。今までの経験をいかし 、「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで情報発信している。