
全国各地の人気パン屋さんのパンをお取り寄せできるパンのECサイトが続々と増えています。ちょっとした手土産やおもたせアイテムとして「お取り寄せパン」は注目です。そこで今回は、1万個以上のパンを食べ歩いた実績を持つパンマニアとしてさまざまなメディアで活躍する片山智香子さんに、パンのECサイトの使いこなし術、人気サイトの特徴について教えてもらいます。
パンの通販サイト急増の理由とは?
メロンパンやフレンチトースト、高級食パン、ブリオッシュと毎年のようにブームが巻き起こるパン業界。消費者の舌が肥えるなか、増えているのがパンのECサイトです。

「以前から『お取り寄せパン』はありましたが、一気にその数が増えたのはコロナ渦になった2020年の春頃からです。やはりステイホームにより“宅食”へのニーズが高まったことが要因でしょう。次第に(通販をもじった)『#通パン』というハッシュタグが流行るくらい、みんながこぞってパンを取り寄せるようなり、都内の人気店もその頃から“通パン”を始めるところが増えました。
私がお取り寄せパンを始めたのは、今のように流行る前で、北海道や沖縄など、なかなかすぐには買いに行けない、でも食べてみたいパン屋さんのパンを取り寄せました。(ブーランジェリーコロン〈北海道〉、宗像堂〈沖縄〉など)
いまでも都内のパン屋さんのパンを取り寄せるというよりは、地方の名店のパンを取り寄せることの方が多いです。特にその土地ならではのものがはいっているパンは取り寄せの価値があると思います」(片山さん・以下同)
注文前に冷凍庫のスペース確保を!
注意しなければいけないのが、一旦保管するスペース。

「大抵のパンのECサイトがダンボールなどに、パンが10個前後はいって冷凍された状態で届きます。誰かにおすそ分けするにしても、一旦は保管しなければならないので、事前に冷凍庫の整理をしておかないといけません。商品到着日がわかったら、その日に合わせて冷凍庫を整頓して、引き出し半分くらい空けておくと安心です」
送料と実際に行く交通費を比べたら損なし!ただし、詰め合わせのデメリットも
パンの通販サイトの利用をためらう人の中には、「送料がもったいない」という声がありますが、近所にある場合を除いては、おいしいパン屋さんにたどり着くまでにはそれなりに交通費がかかります。もちろん労力も時間も。東京に住んでいて大阪の名店のパンを購入すると考えると、交通費は言うまでもなくかかります。そう考えると、ちょっと離れた有名パン屋さんのパンを注文できるパンの通販サイトは、お得かもしれません。
「自宅にいながら日本全国のパンを食べることができること。特に、その土地の地のものを積極的に具材に取り入れているパン屋さんもあり、日本全国の味を堪能できるのは、お取り寄せパンの醍醐味です。
また、これはデメリットとも取れますが、取り寄せのパンは多くが詰め合わせなので、自分の好きなパンだけが届くわけではありません。でもこれ、個人的にはメリットと感じています。
いつもの自分なら選ばないパンがはいっていて食べてみると、めちゃくちゃおいしかったり、新たなおいしいパンに出合える可能性が広がります。ただし、詰め合わせなので、金額もそこそこいってしまうことは覚悟しておいてください」
「ぱん結び」|名店のパンが注文後に焼かれ、焼き立てを冷凍→直接発送される
全国のパンの名店から直接通販、取り寄せができるオンラインサイト。全国のパン屋さんに原材料を販売したり、開業支援をしたりと、多くのパン屋さんと共に歩んできた、いわば“裏方“スタッフであるカネカ食品が運営しています。

そのシステムは、パン屋さんが、注文がはいってから焼き上げ、焼きたての状態で冷凍。直接、お客に届けているので、お店で焼きたてを購入するように、鮮度のいいパンが食べられます。さらに、届け日を指定できるから、贈り物にもぴったり。具体的には、注文日から5日後~2週間分の日付から到着日を指定可能です。
人気のパンを買うなら夜中の0時が狙い目
1日に届けられる商品の数は、パン屋さんの商品ごとに異なります。なので、購入しようと思ったら売り切れていた、なんてことも。商品の在庫は毎日0時頃に次の日付分が追加されるので、そのタイミングだと商品を購入しやすくなるとか。

「ぱん結びは、ラインナップが魅力的。個人的に感動したのは岩手の『福田パン』。実際に岩手に行き福田パンのコッペパンを食べたことがあるのですが、ボリューミーでありながらエアリーでめちゃくちゃおいしいのですが、地元の人により愛されたいとのことで岩手以外に出店しないお店なのです。
だから、こちらのコッペパンを食べたければ、今までは岩手にいかないとダメだったのだけれど、それを取り寄せられることが分かったときは驚きましたし、とても嬉しかったです」
「rebake(リベイク)」|食品ロスの削減に貢献しつつ、名店のパンをお得に購入できる!
おいしいパン、廃棄ロスになりそうなパンをお取り寄せできる、パンの通信販売マーケット。この「廃棄ロス」が他のパン通販と違うところ。廃棄になってしまいそうな「ロスパン」を積極的に扱っています。

コロナ禍で、おいしいパン屋さんがつぶれてしまうという話も聞きますが、このリベイクは、「せっかく心を込めて作ったパンを廃棄せず、誰かに食べてもらえる」という作り手の喜びにもつながります。
注文すると、パン屋さんに直接メッセージを送れるのも特徴。通販だと、“交流”というのはなく、一方通行になりがちですが、こういったコミュニケーションが取れるのも人気の理由です。
人気の「ロスパン」の待ち人数が二桁、30日以上待つ場合も
パンを探すには、パンセットから探したり、パン屋さんから探したりできます。「ロスパン」マークがついているパンセットは、ロスパンを提供している印。ロスパンは、おいしさはそのままに少しお得な価格で箱にはいって送られます。

ただし、人気のパンセットは「ロスパン 待ち72人」などと表示されています。待ち人数が多いから待つというわけではなく、ロスパンが多く出るパン屋さんである場合もあるので、ロス待ちの人数で判断できるわけではないですが、待つ可能性が高いことも覚悟してください。
また、ロスパンは日々の残りパンの状況によるため、いつ発送されるかは定かではありません。なかには30日以上待つ場合も。人気殺到のパンは、「購入制限中」となっていて、現時点では買えないけど買えるようになったらメールで通知が届くように、登録できるシステムもあります。
売り上げの一部を環境保護団体等に寄付
売り上げの一部は森林を保護する団体や子供の食を守る団体などに寄付されています。パンをおいしく食べるということが、誰かのため、社会のためになるので、利用すればするほど、いいことをしているような感覚を味わえるのもいいですね。
「リベイクは、実際には取り寄せたことはないのですが、社長の斉藤優也さんに取材したり、テレビ番組の取り寄せコーナーで何度か利用したことがあります。フードロスという考え方にとても共感できますし、パン屋さんもリベイクを利用することで、攻めの営業(ロスが出ることを恐れない)ができるようになったとおっしゃっていて、みんながWin-Winになるサイトだと思っています」
「Pan&(パンド)」|糖質オフ、栄養バランス◎など健康を気にする人におすすめのパンも
大正時代からやっていた群馬桐生市のパン屋さんから、2006年に冷凍焼成パンを売るメーカーに転身。社長の田中知さんはもともとパン職人で「タナカパン」の4代目としてパン作りをしていたので、パンへの熱意はひと一倍あります。

焼きたての最高の状態を-45°Cで急速冷凍し、鮮度を閉じ込めています。急速冷凍することで、焼きたて直後の薄いパリッとしたクラスト(表皮)と、みずみずしく、もっちりとしたクラム(中身)の食感が、そのままキープされます。だから、保存料や余計な添加物は使っていません。トースターで焼くだけで、新鮮なパンの味わいがいつでも焼きたてで楽しめます。
いろいろなパン屋さんのパンを食べたい人には物足りなさも
パンドは、小ぶりなテーブルパンなど、料理に合うパンがメイン。とはいえ、総菜パンや菓子パン、デニッシュ系など、常に50~60種類のパンを販売しています。ですが、リベイクやぱん結びと違って、いろいろなパン屋さんのパンではないので、さまざまなサイズ、いろいろな店のパンを頼みたい人にとっては少々物足りなさを感じるかもしれません。

パンに合うスープや総菜も一緒に買える
パンドでは、パンに合うスープやカレー、ハンバーグなども販売。国産野菜を使ったものや鉄分不足を解消できるスープなど、種類豊富にそろいます。パンだけだと栄養の偏りが気になるという人には便利です。

ヘルシーな糖質オフパンもある
種類は少ないですが、糖質オフ、低糖質パンも販売されています。クロワッサンは、1個あたりの糖質はわずか6.6g。通常のクロワッサンに比べて糖質50%オフを実現。リッチな味わいながら食物繊維がたっぷりとれるので、便秘を気にする人にもおすすめです。
「パンドのパンも食べたことがあります。最大の特徴は余ったパンを凍らせるのではなく、最初から冷凍にすることを目的に作っているので、本当においしい瞬間を閉じ込めており、リベイク(トースト)したときに、本当に焼きたてのようなおいしさが復活すること。あとパンドは小袋に2個入りのもが主なので『ちょっと食べたい』ときにもいいかなと思っています」
◆教えてくれたのは:パンマニア・片山智香子さん

これまで1万個以上のパンを食べ歩いた、旅するパンマニア。国内・海外のパンを求めて旅をし、海外は、台湾、ベトナム、ハワイ、シンガポール、オーストラリアなどに及ぶ。また、バインミーマニアとしても活動中。2018年にはYouTube『片山智香子のパン旅ちゃんねる』(https://www.youtube.com/channel/UCTrVsMpIerB_1bTTeMt1mag)を開設し、各地のパン屋の魅力を配信。