
ダイエットや美容のために、あるいは不調を改善するために「水はたくさん飲んだほうがよい」と言われることがあります。しかし、著書『予約の取れない漢方家が教える 病気にならない食う寝る養生』(学研プラス)が話題の漢方コンサルタント・櫻井大典さんは、「過剰な水のせいで不調を招くことがある」と指摘します。その理由とは――。
「1日2リットルの水」が不調を招くことも
「水を飲むことは大切ですが、飲みすぎは胃腸の負担になり、さまざまな不調の原因となります。“1日に〇リットル”と数字で考えて飲まずに、水はのどが渇いたときに、常温のものを少しずつ飲んでください」(櫻井さん・以下同)
水の飲みすぎによる不調とは、どんなものでしょうか。

「巡りにくい」体になる
「水を大量に飲みすぎてしまうと、まず胃酸が薄まって消化力が落ち、栄養の吸収が不足します。すると、体を温める力、血や栄養を体のあちこちに届ける力などが弱くなり、結果的に冷えやすくなったり、疲れやすくなったりします。過剰な水のせいで、“巡りにくい体”になり、溜まった不要物がさらに巡りを妨げる悪循環が起こってしまうのです」
普段から消化不良や冷え、頻尿、むくみ、軟便や下痢などに悩まされている人は、特に水分摂取の仕方を見直す必要があるそうです。
熱中症予防にはたくさんの水が必要?
テレビなどでよく言われるように、「夏場は熱中症対策として水を多めに飲んだほうがいい」と思いがちですが、櫻井さんは「体質や場合による」と指摘します。

それぞれに合った水の量を
「炎天下で運動や作業をする場合などは、水分をしっかり補給したほうがいいでしょう。汗を大量にかくと水分とともにミネラルも失われるので、あわせて塩分を補給することも大切です。
一方、冷房の利いたオフィスや自宅など、屋外に出っ放しでない場合は別です。汗をほとんどかかないのに水分を過剰に摂取していると、かえって夏バテにつながります」
1日のトイレの回数が10回以上、むくみがある、いつも胃腸の調子が悪い、足先が冷えてしまうといった人は、水を飲みすぎている可能性がある、と櫻井さんは注意を促します。
「飲みすぎない」ための3つの工夫
水分の摂りすぎが習慣化している人は、上手に予防していく必要があります。最後に、「水を飲みすぎない」ための3つの工夫を聞きました。

【工夫1】まずクチュクチュうがいを
「水を飲みたいと思ったら、いったん口に含みましょう。口内をクチュクチュゆすいで、吐き出してください。それでもまだのどの渇きを感じるなら、ひと口だけ飲みましょう。のどが渇いているのではなく、口の中が渇いている場合もあるため、この方法を試すことで、水を飲む回数を減らせます」
【工夫2】手元に置かない
「水やお茶を入れた水筒やコップを身近に置かないようにしましょう。すぐ手の届く場所があると、つい“ながら飲み”をしがちです。オフィスなら水筒はロッカーにしまったり、自宅ならのどが渇いたときにキッチンまで飲みに行く、を徹底してみましょう」
【工夫3】なみなみ注がない
「マグカップやコップになみなみと注がないようにしましょう。十分だと感じていても、残りを飲み干してしまいがちです。小さめのサイズのマグカップやコップに換えるのもおすすめです。
ただし、高齢の方は感覚機能が衰え、のどの渇きを感じにくくなります。高齢の方の場合は、のどの渇きを感じる前に、こまめに水分補給してください」
どれも簡単にできることばかり。普段「水分を多く摂ってしまいがち」というかたは、ぜひ実践してみてください。
◆教えてくれたのは:漢方コンサルタント・櫻井大典さん

漢方コンサルタント。国際中医専門員。日本中医薬研究会会員。漢方薬局の三代目として生まれ育つ。カリフォルニア州立大学で心理学や代替医療を学び、帰国後はイスクラ中医薬研修塾で中医学を学ぶ。中国の首都医科大学附属北京中医医院などでの研修を修了し、国際中医専門員A級資格を取得。これまで年間数千件の健康相談を受け、延べ4万件以上の悩みに応えてきた。今年7月、病気にならないための食事と睡眠の新常識をまとめた『予約の取れない漢方家が教える 病気にならない食う寝る養生』を出版。https://yurukampo.jp/