秋も深まり、保湿剤や加湿器が活躍する季節になってきました。犬も人間と同じで、冬は皮膚が乾燥しやすくなります。犬の肌ケアをどのようにするといいか、獣医師の山本昌彦さんに聞きました。
冬は犬も被毛の下でお肌がカサカサ
冬は空気が乾燥しがち。水蒸気が結露して、空気中の水分量が減ってしまうからです。さらに、空気中の水分が少ない部屋でエアコンや暖房器具を使って室温を上げると、相対湿度(その温度の空気が含むことができる水分量に対する、実際に含んでいる水分量の割合。家庭で使う湿度計などでパーセンテージ表示されている)が下がります。
このために、冬場は肌がカサカサして、人によっては粉が吹いたような状態になったり、かゆみを感じたりします。冬は夏以上に保湿に気を付けているという人は多いのではないでしょうか。
犬も冬は乾燥による皮膚トラブルが起きやすくなります。山本さんによれば「見るからに被毛がパサついたり、毛並みがガサガサしたり、フケが出たり。あとは乾燥のせいでかゆくなって足でかいたために、かき壊してかさぶたになったりする子もいます」とのことで、「スキンケアはぜひしてあげてください」と言います。
角質層が人間の3分の1、刺激に弱い犬の肌
ただし、犬の皮膚は人間と異なるところもあるので、人間用のシャンプーや保湿剤をそのまま流用するのは禁物です。
「犬の皮膚は表皮・真皮・皮下組織からなり、この構造は人間と同じです。ただし、表皮が人間より薄いので、注意が必要です。表皮はさらに角質層、顆粒層、有棘層(ゆうきょくそう)、基底層に分けられます。人間の角質層は10~15層で構成されますが、犬の角質層は2~3層と人間の3分の1ぐらいしか厚みがなく、刺激に弱いんです。
有棘層の厚さも人間に比べ犬の皮膚は薄くなっています。これらの皮膚の構造のため、水分が失われやすいので、空気の乾燥に実は人間以上に弱いです」(山本さん・以下同)
人間と同じシャンプーを使うのはNG
犬は被毛で外部刺激から身を守れるので、その分、表皮が薄くできているのではないかとも言われています。理由は定かではないですが、皮膚が薄いことは事実なので、スキンケアは“低刺激”がポイントになりそうです。
「洗うときのお湯の温度は37~38℃ぐらいがいいでしょう。人間と同じシャンプーを使うのは避けてください。犬には刺激が強すぎて薄い角質層を(シャンプーの成分が)超えてしまって、かえって皮膚が乾燥したり荒れたりします」
そもそも、犬は人間と皮膚のpH(水素イオン濃度、酸性・アルカリ性の度合い)が異なります。人間の皮膚pHが弱酸性なのに対して、犬はもう少し中性に近いのだとか。皮膚pHを保つ意味でも、やはり犬用に開発されたシャンプーを使うほうが安心です。そして、シャンプーを使ったら丁寧に洗い流して、皮膚に残らないようにすることが大切です。
「シャンプーあとの乾かし方にも注意してください。可能な限りタオルドライで水分を拭きとり、ドライヤーを使用する時間を短くし、高温に注意を。ドライヤーと犬の体の間に自分の手を入れ、温度を感じながら乾かすとよいです」