
1万人以上に食べ方を指導し、不健康な食事を改善させてきた「食べ方コンサルタント」で管理栄養士の岸村康代さん。ダイエット指導では2000人以上を成功に導き、落とした脂肪の合計は10トン超! 著者『続食べ~結果が出る食べ方がカンタンに続く方法』(かんき出版)でリバウンドしない一生モノの食べ方を紹介している岸村さんに、「食べ方」をテーマに、太らずに健康的な食生活を持続させる秘訣を聞きました。
50代の急激なダイエットは老化が進む可能性
――女性はいくつになってもダイエットが気になるもの。一方、年齢が重なると過度なダイエットは危険と提言する専門家もいます。岸村さんは、50代からのダイエットをどのようにお考えですか?
岸村:50代からのダイエットは若い頃と比較すると、工夫が必要だと思っています。というのは、急激に痩せると老化が進むからです。
また、急激なダイエットによって筋肉が衰えると、たるみが生じやすくなります。さらに、腸内環境の悪化や免疫力の低下で風邪をひきやすくなったり、動脈硬化が進んだりしたという人もいます。

――ちなみに、急激なダイエットを若い頃から行っている場合はどうでしょうか?
岸村:老化は、30代から進む場合があります。年齢相応のしわならよいですが、若いのにしわが多い女性は、おそらく少量だけ食べる、食事はフラペチーノだけ、プリンだけなど、甘いものだけを偏ってとっている可能性があります。エネルギーは摂っているけど、たんぱく質が不足してしまうという「老ける食べ方」をしているとしわが増えやすくなります。
理由は、コラーゲンが変性するためです。キャラメルは溶けてドロドロになり、固まるとバリバリになりますね? 急激に痩せたときのお肌は、これと同様にコラーゲンが黄ばんで固くなります。これがしわやたるみの原因になるからです。逆を言うと、30代や40代から正しい食べ方で結果を出し続けると、老化や病気のリスクを下げることができるのです。
――「正しく結果を出す食べ方」というのはどういったものですか?
岸村:まず大事なのはストレスを抱えないことです。「これを食べたらダメ」という罪悪感をもってしまうと、楽しい食事から遠ざかっていきます。食事は本来、人を幸せにすることができるすばらしい行為。食べたいものを我慢ばかりしているとストレスもたまります。適度な我慢は必要ですが、我慢しすぎると反動でリバウンドしたり、逆効果になることもあるのです。
リバウンドしないためには「食べたいものを軸に」
――ストレスをなくして楽しい食事をするには、どうしたらいいでしょう。
岸村:「食べたいものを軸にして帳尻を合わせる」ことです。
食べたいという欲求を抑えたり、ダイエットにいいからと食べたくないものを食べ続けると心や体が抵抗したりします。その後は、必ず反動が起こってリバウンドにつながります。そこで私は「食べたいものを軸に帳尻を合わせる」ことを提案し、その方法として「ジリジバ」をおすすめしています。
「ジリジバ」とは、「順番」、「量」、「時間」、「バランス」。まず「順番」は、コース料理を思い出してください。前菜、スープ、メイン、主食と続きますね。野菜から先に食べることで、血糖値が急に上がらないようになっています。コースの順番にも健康上の意味があるのです。

次に「量」。ご褒美としての甘いものなら、ちょっと奮発していつもより高めのスイーツなら、少量でも満足しやすくなります。
「時間」は、自分でコントロールできるときだけでもいいですから、夜ごはんを1時間早めてみるなど。最後に「バランス」。糖質や高カロリー食が多いかなと感じたら、野菜をいつもより多く摂取するなど、意識して帳尻を合わせることをおすすめします。
どうしてもやめられないものや、食べたいときは「ジリジバ」を活用することで、ダメージを少なくして、好きなものも食べ続けられるようになります。
甘い物は食物繊維やたんぱく質と一緒に。ゆっくり噛んで食べる
――ストレスをためない食べ方、とても参考になります。では痩せたいのになかなか痩せられないときはどうしたらいいでしょう。
岸村:ダイエットを挫折した人のお話を聞いていると、5kg、10kgと高い目標を掲げている傾向があります。「頑張っているのに今日はたった100gしか減らないんです」と嘆いている人には、長期目標だけではなく、短期の目標を掲げることをおすすめしています。
例えば、今月の目標は1㎏、今週は0.5kgのダイエットの目標を設定すると、100g減量で「できた!明日も頑張ろう」とやる気になります。目標設定の仕方も大事ですね。

―――なるほど。あと、ダイエット中の空腹感はどのように乗り越えたらいいでしょうか?
岸村:まず栄養が偏っていると、無駄な食欲が湧き出やすいことを理解してください。空腹感が長く続き、それを満たすために甘いものを食べると一時的に血糖値が上がりますが、すぐに下がってしまって、余計にお腹がすき、もっと食べたくなります。
このような悪循環をなくすために、糖分が多い甘いものを単体でとるのではなく、食物繊維やたんぱく質、水分と一緒に上手に摂ると、空腹感がおさまります。
食物繊維はほとんどが不溶性で水に溶けないため、水分と共に胃腸に入るとそこで膨らむという性質があります。膨らむと満腹感を感じやすくなります。
食物繊維の代表的な食材は玄米、ごぼう、大豆製品ですが、たんぱく質とバランスよく摂取すると、さらに腹持ちがよくなります。
満腹感を覚えるまでつい食べ過ぎてしまう人におすすめは、ゆっくり噛んで食べることです。途中で温かいみそ汁やスープなどを飲むことで、食べることが一時中断されます。すると、脳で“おなかいっぱい”と感じるまでの時間をやりすごすことができて、満腹感を感じやすくなります。さらに、ゆっくり食べることで血糖値が急激に上がりにくくなるので、太りにくくなるというわけです。
◆教えてくれたのは:管理栄養士・岸村康代さん

管理栄養士。野菜ソムリエ上級プロ。一般社団法人「大人のダイエット研究所」代表理事。1万人以上の食べ方の指導をもとに、不健康な食事を改善させてきた食べ方の専門家。ダイエット指導では2000人以上を成功に導き、落とした脂肪は合計10トンを超える。ダイエット失敗経験を経て、論文や研究データや専門書を読破し、医療現場での臨床経験も活かして食について学び直し、自身も15kgの減量に成功。『あさイチ』(NHK)、『ヒルナンデス!』(日本テレビ)など、メディア出演も多い。http://www.power-food.jp/
取材・文/夏目かをる