
寝ても疲れがとれない、肩や背中のコリがつらい、という症状をこの時期に感じている場合、冬バテが原因かもしれません。夏バテは秋になると自然に回復することが多いですが、冬バテは放置すると春の体調不良につながる可能性があるので注意が必要です。そこで、漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんに、冬バテにおすすめの食材と効果が期待できる漢方薬について教えてもらいました。
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自律神経の乱れからくる「冬バテ」
自律神経とは、体温調整や呼吸、消化・吸収・排泄など、人が生きていくのに欠かせない生理機能を無意識下で調整する神経です。
自律神経には、興奮や緊張をもたらす交感神経と、安心やリラックスをもたらす副交感神経の2種類があり、バランスを取りながら全身の機能をコントロールしています。

外気温が低下する冬は、交感神経が緊張し、体が熱を逃がさないように血管を収縮させます。さらに、年末年始を目前にやるべきことが多くなり、気を張る場面が増える人も多いのではないでしょうか。このようなときにも、交感神経が働いています。
交感神経が優位な状態が続くと、副交感神経が働きづらくなります。交感神経が優位に働き、心身の緊張状態が長く続くことで、体調不良を引き起こした状態が冬バテです。
冬バテチェックリスト
冬バテになると、下記のような症状が現れます。
・倦怠感やだるさ
・頭痛や肩コリ、背中のこわばり
・動悸や不安感
・めまい、吐き気
・寝つきや目覚めの悪さ
・胃腸のトラブル、食欲不振、食欲過多
・下痢、便秘
・集中力の低下、やる気が出ない
・冷え、肌荒れ
・風邪などの感染症にかかりやすく治りづらい
・イライラ、気持ちが落ち込む
交感神経が過剰に働くのを抑え、副交感神経を働きやすくするためには、夕方以降にリラックスして過ごせるようスケジュールを工夫したり、ゆっくりと入浴する時間を確保したりするのが理想です。
冬バテ予防におすすめの栄養素と食材
食事で冬バテにアプローチするには、ストレスを和らげて脳の興奮を鎮める効果があるとされるGABA(ギャバ)を取り入れ、自律神経のバランスを整えることが有効です。
神経伝達物質のGABAはアミノ酸の一種で、たんぱく質とビタミンB6によって体内でも合成される物質です。普段の食事で効率よくGABAを得るために、たんぱく質とビタミンB6の両方を多く含む食材を食事に取り入れましょう。
ブリ

ブリはたんぱく質とビタミンB6が豊富に含まれ、GABAの生成に役立つ食材です。天然ブリは脂がのる11~2月に旬を迎えます。この時期のものは寒ブリとも呼ばれ、おいしいとされています。
塩焼きやブリ大根など定番のメニューはもちろん、刺身や竜田揚げ、しゃぶしゃぶにしてもおいしく食べられます。
サワラ

サワラは回遊魚で、関西では5~6月、関東では12~2月に漁獲量が増えます。冬場のサワラは産卵前で栄養を蓄えているため、脂がのり濃厚な味わいです。サワラはたんぱく質とビタミンB6を多く含み栄養価が高いだけでなく、小骨が少なく臭みもあまりないので食べやすい魚です。
鶏むね肉

鶏肉のなかでも、むね肉はビタミンB6をたっぷり含んでいます。鶏むね肉は加熱するとたんぱく質が変性し、水分を押し出してパサつきやすいので、調理に注意が必要です。
下準備のときにフォークや包丁で肉を叩いたり、塩麹やヨーグルト、マヨネーズなどに漬けこんでおくと柔らかく仕上がります。
冬の体調管理には漢方もおすすめ
冬バテの予防や解消には、漢方薬をのむのもおすすめです。冬バテの症状である気力や体力、食欲などの低下に効果がある漢方薬もあります。さらに、漢方薬は症状を和らげるだけでなく、不調を根本から改善する効果が期待できます。
冬バテの原因となる自律神経の乱れは、ホルモンバランスの乱れやストレス、過度な緊張、過労などにより生じると考えられています。

そこで、「ホルモンバランスの乱れを整える」「血流をよくして自律神経の乱れを整える」「消化・吸収機能を高めて栄養を全身に届け、心と体を元気にする」「体を温めることで、免疫力を上げ疲れた筋肉をほぐす」「自律神経を整えて睡眠の質を上げ、心身の疲労を軽減する」などの働きをする生薬を含む漢方薬を選びます。
冬バテにおすすめの漢方薬2つ
・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
エネルギーである「気」の巡りを促し、余分な熱を冷ます漢方薬です。不眠やイライラなど精神症状のある人に用います。
・加味帰脾湯(かみきひとう)
胃腸の働きを助け、「気」と、全身に酸素や栄養を運ぶ「血(けつ)」を補う漢方薬です。貧血症状のある人や疲れやすく気力がない人に用います。
漢方薬を始めるときの注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:管理栄養士・小原水月さん

おはら・みづき。管理栄養士。ダイエット合宿所、特定保健検診の業務に携わりのべ600人以上の食事と生活習慣をサポート。自身が漢方薬を使用して体調回復した経験から、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。あんしん漢方(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで執筆中。