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年末年始の食べすぎによる「胃の疲れ」改善のカギは低脂質!「たら」「白ごはん」など胃をいたわる食材

お腹を押さえてよろける女性
正月明けの胃の不調は年末年始の暴飲暴食が原因かも
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ごちそう続きの年末年始を終えた今は、シクシク、キリキリと胃が痛んで困っている人が増える時期です。「軽度の胃痛であれば、食事を見直すだけで改善が期待できる」と話す、漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんから、胃が痛むときにおすすめの食事と、効果が期待できる漢方薬について教えてもらいました。

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正月明けに胃痛などの不調が出る理由

胃痛は、胃粘膜を守る粘液と食べ物を消化する胃酸のバランスが崩れ、胃酸が胃粘膜を刺激しているときや、胃の機能が低下したときに起こります。年末年始は胃にダメージが蓄積する条件が揃いやすい時期で、正月が明けて通常の生活を始めた頃に、胃痛などの不調になって現れるのです。

原因の1つが暴飲暴食。胃のキャパシティー以上に食べ物が詰め込まれると、胃が過労の状態となり機能が落ちます。また少量でもダラダラ食べ続けていると、胃が休む時間がとれず、消化が不十分な状態になり、胃酸のバランスが崩れやすくなるのです。

お酒とおつまみ
アルコールや塩気の多いもの、脂っこいもの、刺激物の摂り過ぎは胃の負担に
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さらに、アルコールや塩気の多いもの、甘味の強いもの、辛いもの、脂っこいものの摂り過ぎは直接胃壁を刺激したり、胃の負担になったりします。

胃痛の症状・特徴

胃の不調や胃粘膜にダメージを受けたときには、下記のような症状が起こります。

・食前、食後の胃痛 (シクシク、キリキリ、ズキズキ、締め付けられるような痛み)
・胃もたれ
・胸やけ
・吐き気
・むかつき
・膨満感
・食欲不振
・食欲過剰

一時的な症状で、短時間で落ち着く場合は、それほど心配はありません。しかし、痛みが長引いている、2つ以上の症状が発生している、痛くなるときと落ち着いた状態が交互に起こる、発熱や下痢、便秘などの症状もみられる場合は医療機関の受診をおすすめします。

お腹を押さえている
症状が重い場合は医療機関の受診も視野に
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年末年始で疲れた胃におすすめの食事

胃の不調があるときの食事で気をつけたいことは、脂質を控えることと、十分に咀嚼(そしゃく)をすることです。

脂質の多い食事は胃の滞留時間が長く、負担が大きくなります。また、口で咀嚼すると連動して胃のぜん動運動が行われますが、使わないと機能が衰え、低下します。また、十分に咀嚼せずに未消化のまま胃に食べ物を送ると、胃の負担が増えます。

胃への負担が軽く、しっかりとぜん動運動が行える食事をとることが早く回復するためのポイントです。

白ごはん

器に盛った白ごはん
脂質の少ない白ごはんは胃にやさしい主食
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胃が疲れているときは、脂質の少ない白ごはんを主食にすると負担を軽くできます。食パン6枚切り2枚(120g)には5.0g、うどん1玉(200g)には0.8gの脂質が含まれているのに対し、白ごはん1膳(150g)に含まれる脂質の量は0.5g(文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」)です。

また、小麦を粉にして加工した「粉食」のパンや麺類に比べ、米を粒のまま食べる「粒食」の白ごはんは咀嚼がしやすく、ぜん動運動を促すことができます。

具だくさん味噌汁

具だくさん味噌汁
β-カロテンを含む野菜を具材にするのがおすすめ
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温かい汁物は胃の血行を促すのに効果的で、胃粘膜が受けたダメージの回復も助けます。さらに味噌汁を具だくさんにし、咀嚼の回数を意識的に増やしましょう。

緑黄色野菜に多く含まれるβ-カロテンは体内でビタミンAに変換され、粘膜の修復に役立つ栄養素なので、にんじんやほうれん草、かぼちゃなどの野菜を入れるとより効果的です。

たらのホイル焼き

たらのホイル焼き
脂質が少なくたんぱく質の多いたらを、油不使用の調理法で
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100g中に含まれる脂質が0.2gのたらは、魚のなかでもとくに低脂質です(文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」)。そして、たらは胃粘膜の材料になるたんぱく質を多く含んでいます。さらに、油を使わずに調理するホイル焼きは、胃が疲れているときにおすすめのメニューです。

鶏ささみや豆腐も脂質が少ない高たんぱく食材なので、組み合わせて食卓に並べるのもいいでしょう。

胃腸を元気にする漢方薬もおすすめ

年末年始の胃腸トラブルは、暴飲暴食だけではなく、生活リズムの乱れや冷えによる胃腸の働きの低下も原因として考えられます。

ざるに乗った生薬
胃の不調のケアに効果的な漢方薬も
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「胃痛」「胸やけ」「吐き気」に効果が認められている漢方薬は、消化器内科でも処方されており、「胃腸の消化吸収機能を回復させる」「不規則な生活リズムで乱れる自律神経のバランスを整えて胃もたれを軽減する」「体を温めて、胃の働きを改善する」といった働きをもつ漢方薬を選びます。漢方薬はトラブルの原因を根本から改善することで、体の調子を整えるので、続けることで不調が起こりにくい体を目指すことができます。

胃の不調の改善におすすめの漢方薬2つ

・安中散(あんちゅうさん)

胃腸を温めて冷えを除き、胃を健やかにする漢方薬です。げっぷ、胃痛や腹痛などの症状がある人に用いられます。

・五苓散(ごれいさん)

余分な水分を排出することで、下痢や急性の胃腸炎を改善する漢方薬です。口の渇きやむくみなどがある人に用いられます。

→五苓散について詳しく知る

漢方薬を始めるときの注意点

漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。

ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。

◆教えてくれたのは:管理栄養士・小原水月さん

小原水月さんの写真
管理栄養士の小原水月さん
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おはら・みづき。管理栄養士。ダイエット合宿所、特定保健検診の業務に携わりのべ600人以上の食事と生活習慣をサポート。自身が漢方薬を使用して体調回復した経験から、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。あんしん漢方(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで執筆中。

●年末年始の不摂生を腸活でリセット!便秘解消にも役立つ簡単「腸ひねり」のやり方

●「果物は焼いて食べる」ほか 漢方コンサルタントがすすめる「胃腸を冷やさない食べ方・飲み方」のコツ

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