
昨年、入院と手術を経て境界悪性腫瘍であることがわかった、ライター歴30年を超えるベテランのオバ記者こと野原広子(65歳)。退院から4か月、予後は良好だが、思わぬ体調の変化に悩まされることがあるという。
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体験主義だから「卵巣がん疑い」で手術も“経験”だけど…
前々回、30代から40代にかけての20年、麻雀にハマって、たばこの煙もうもうの中で徹夜に次ぐ徹夜。不摂生の限りを尽くしたツケが65歳で一気に噴出して、心臓と卵巣にきた。若い頃の体の無茶は、いずれちゃあーんと利子をつけて払うことになる、という話を書いたら、「読んだわよ。そんなことがあったの!」と驚かれた。

私のモットーは、「何でもやってみなければわからない」だけど、実のところモットーというほど立派なものじゃないね。農業高校卒でちょっとだけマスコミの専門学校に顔を出した程度の学歴の私は、理屈をこねろと言われてもムリだから、どうしたって体験主義になるわけよ。
それでたいがいのことはクリアしてきたし、どや顔もしてきたけれど、ここにきて壁にぶち当たっているわけ。そりゃあ、「卵巣がんの疑い」であらゆる検査をしたのに、最終的には「手術して卵巣と子宮を全部取り出して細胞検査をしてみないとわからない」という“思いがけない結論“で、これだって「卵巣が12cmに腫れてます」になってみなければわからなかったこと。
ここまでは「やってみなければわからない」はOKだったの。12日間入院して、子宮、卵巣の全摘手術をして、「境界悪性腫瘍」という“判決”をいただいたのも、これ以上ない経験よ。

「体の状態をチェックする能力が落ちている」
だけど、ここに来て、ちょっと困ったことになっているの。というのは、術後の体調なんだよね。病院の3か月検診では「はい、異常ありません。お腹のぜい肉ですか? これからどんどん腹筋運動をしてシェイプしてください」と太鼓判を押してもらったけれど、これがなかなかうまくいかないんだわ。

病み上がりの体調管理がうまくいかないっていうか、体の状態をチェックする能力が落ちているんだよね。先月、温泉に入った直後に心臓発作を起こしたときだってそう。後から思えば数日前から3~4時間しか寝られなかったのに、それが意識からすっぽりと抜けて、「温泉に入りたい」が抑えられない。
そうしたら心臓がぴくぴく動き出して、そのうち肩から背中まで痛くなってきた。指先も痺れている。腰もお尻も痛い。これって、いくら何でもヤバいでしょ。
ヨガに行っても自分の思う半分も動けない
で、かかりつけ医で看てもらったら血圧は正常だし、心電図をとっても異常なし。それでやっと、「もしや、私、眠れてないんじゃ?」と思い至ったわけ。で、睡眠導入剤を飲んだら、もうてきめんよ。なんか手術前の体調に戻ってないか? で、3年ぶりに区のスポーツセンターの日曜ヨガに出かけてみたら、何ですかい? 手も足も、でくの棒で、自分の思う半分も動かないではないの。

「3年ぶりだからなぁ。病み上がりだからなぁ。年だしなぁ」と帰り道、自分に言い聞かせたけど、翌日は昼まで泥のように眠って起きられないんだわ。
そんな時、思うわけよ。病み上がりの私は、ちょっとずつ回復しているのかしら、と。それとも良くなった風を装いながら、一度体にメスを入れた体は元にはもどらず、階段を下り続けているのか、と。

こればかりは同じ手術をした人に聞いても、そもそも体質が違うんだから、どうしたら回復するのか、悪化するのかわからないんだよね。「やってみなくちゃわからない」だけではなくて、世の中には「やってみたってわからない」ことが山ほどあるのか?
失敗だらけの20代、ヤケのヤンパチでギャンブル漬けだった30代、40代に戻りたいとは思わないけれど、年をとるのもカンタンじゃないんだね。
◆ライター・オバ記者(野原広子)

1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
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