マイナスもプラスも公平に起きている
これを現実の目的や夢への道のりと考えてみましょう。マイナス方向は、目的や夢の実現に向けてマイナスの出来事が起きたとき、プラス方向はプラスの出来事が起きたときと考えます。
コインを投げたときと同様に、目的や夢に向かう道のりもマイナスの出来事、あるいはプラスの出来事ばかりが続く場合は少なくありません。しかし長期的にみれば、必ずマイナスとプラスの出来事が入り込みます。結果はプラスの出来事がほぼ半分、マイナスの出来事がほぼ半分、となるのです。
運が悪い人というのは、この長期的な視点をもつことができません。なので、マイナスの出来事が続いたときにゲームをおりがちなのです。たとえば投資やギャンブルで負けが続いたとき、最後に一発逆転を狙って持ち金をすべてつぎ込み、結局破滅してしまう人がいます。これと同じように、自暴自棄になって目的や夢をあきらめてしまうのです。
運のいい人は最後までゲームをあきらめない
一方、運がいい人は、マイナスの出来事が続いても簡単にゲームからおりません。負けが続いているときには最小限の損失になるよう努力し、次のチャンスに備えるのです。運がいい人も悪い人も、長期的にみれば、プラスの出来事とマイナスの出来事はほぼ同じ割合で起きているといえます。しかし運の悪い人はゲームを途中でおりてしまい、運のいい人は最後までゲームをあきらめません。結果、運のいい人はさらなる運を手に入れ、運の悪い人はますます運が悪くなってしまうのです。
つまり、運を手に入れられるかどうかは、その人がもともともっている運のよしあしではなく、「ゲームをおりるか、おりないか」の差にすぎないのだ、ともいえるでしょう。
そこで、目的や夢へ向かう道のりは常にランダムウォークモデルのように進む、と心得ておくのです。マイナスの出来事が立てつづけに起きるかもしれないけれど、いつかは必ずプラス方向に振れるときがくる、と考える。いつかくるプラスのときのためにいま何ができるかを考え、準備しておく。逆にプラスの出来事が続いても気をゆるめずに、夢の実現に向けてする。とにかくゲームをおりずに粘りつづける。これが最後に勝つコツといえます。
◆教えてくれたのは:脳科学者・中野信子さん
東京都生まれ。脳科学者、医学博士。東日本国際大学特任教授、森美術館理事。2008年東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行う。著書に『エレガントな毒の吐き方 脳科学と京都人に学ぶ「言いにくいことを賢く伝える」技術』(日経BP)、『脳の闇』(新潮新書)、『サイコパス』(文春新書)、『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』(アスコム)、『毒親』(ポプラ新書)、『フェイク』(小学館新書)など。