健康・医療

スマホが猫背の原因に 肺炎、首こり、肩こり、片頭痛も…猫背を改善するカギは「舌」

ひじをついてスマホを見ている女性
猫背のままスマホを長時間見ている人は要注意!(Ph/イメージマート)
写真7枚

あなたはスマートフォンを見ているとき、どんな姿勢をしているでしょうか。無意識に猫背の姿勢になっている人は多いのではないでしょうか。『スマホがあなたをブスにする 歯科医師が教える1日3分でキレイを保つ方法』(大和出版)の著書があり、鍼灸師で歯科医師でもある中城基雄さんは、「猫背の姿勢でスマホを1時間以上見続ける習慣は、さまざまな健康被害をもたらす」と警鐘を鳴らします。詳しく教えてもらいました。

猫背姿勢が口臭のもとになる理由

「私は歯科医師として口臭専門クリニックを開業していますが、口臭に悩んでこられる患者さんのほとんどは姿勢が猫背になっています」と、中城さん。

確かに、スマートフォンを使うときは、片手で持ってうつむき姿勢になる人が大半でしょう。自分ではわからなくても、他人を見れば明らかです。駅のホームや電車などでスマホを片手に操作している人には、うつむき姿勢の人が目立ちます。

「このうつむき姿勢が長時間続き、毎日の習慣になると、背中は自然と猫のように丸くなってしまいます。もちろんスマホだけでなく、パソコンを長時間見ているデスクワーカーにも言えることです。うつむいた猫背姿勢を続けていると、首の骨にストレスがかかり、いわゆる『スマホ首』という、首が前に出ている『ストレートネック』が誘発されます」(中城さん・以下同)

浅い呼吸、首こり、肩こり、手足のしびれ、便秘なども

この姿勢が続くとさまざまな健康被害が出てくると言います。

デスクワーク中の女性
パソコンやスマホ中、うつむき姿勢になっていませんか?(Ph/イメージマート)
写真7枚

「猫背で首が前に出ている姿勢が続くと胸部が狭くなり、横隔膜も硬化。血流も滞ってくるため、誤嚥性肺炎、めまい、浅い呼吸、首こり、肩こり、片頭痛、手足のしびれ、便秘、胃もたれ、喘息症状、うつ病、認知症予備軍、内斜視といった健康被害が出てくる可能性があります。なぜかわからないけれど疲労感がある、といった不定愁訴も猫背姿勢が原因である場合もあります」

スマホ操作やデスクワークによる猫背姿勢は、健康に害があるだけでなく、スタイルにも…。

「スマホやパソコンを見るために、頭や首、肩が前に傾いた状態が続くと、首と背筋のS字カーブがなくなり、背中が丸くなります。すると、背中やお腹の肉がたるみ、バストも下がってきます。使われるべき腹筋や背筋も動かなくなるため、代謝が衰えて脂肪がつきやすくなります。

さらに、骨盤がゆがむことによって、ますますお腹の筋力が低下し、支えられなくなった内臓が下がり、下腹部がポッコリ膨らんできます。

デニムが入らないお腹アップ
うつむき姿勢はポッコリお腹など見た目にも影響が(Ph/photoAC)
写真7枚

また、猫背姿勢のまま飲食をすると、食べたものが胃へたどり着くのに時間がかかるようになるため、満腹のサインが出るのが遅くなり、食べ過ぎにもつながっていきます」

顎を“ちょい上げ”する習慣を

ここまで読んで、スッと首を引っ込め、背筋を伸ばした人もいるでしょう。もちろん背筋を伸ばすことも大切ですが、正しい姿勢は、もうワンポイントあります。

中城さんは、「顎先をちょっと上げてキープする」姿勢こそ、骨格から見た最も自然な頭の位置であり、ベストポジションだと言います。

「顎先をちょっと上げてキープするだけで、全身のバランスが弛緩した状態になり、副交感神経(リラックス神経)が優位に。そして全体のパフォーマンスがアップし、脳のキレも体のキレもグンとよくなり、若さがみなぎってくるのです」

女性が上を向いてる写真
顎をちょい上げにすると自然な頭の位置になる(Ph/photoAC)
写真7枚

要は、顎を引いたうつむき姿勢と、真逆の姿勢。うつむき姿勢では交感神経(ストレス神経)が優位になり、自分でも気づかないうちにストレスをため込んでしまうため、意識して顎をちょい上げするようにしましょう。

ちょい顎上げ姿勢のコツ

さらに詳しく、ちょい顎上げ姿勢のコツを教えてもらいました。言うまでもなく、スマホを両手で持ったまま猫背の姿勢で「顎だけを上げる」のはNG。スマホはいったん、脇に置いておき、次の手順で進めてみましょう。

【1】頭のてっぺんのつむじあたりに「百会(ひゃくえ)」というツボがあります。ここは自律神経を調整するツボで、めまい、耳鳴り、肩こりによく効きます。自分が操り人形になったと考え、百会のツボをつままれているとイメージしてみてください。すると、大幹がまっすぐに整います。

【2】その状態で、顎をちょっと上げる姿勢をキープ。

ここまでが、姿勢の改善法です。次は、唇や舌先の動きにも注意を払ってみましょう。

舌先が動いていない状態も口臭の元に

「スマホを長時間使用しているとき、唇や舌先は動きが停止しています。止まったままだと、唾液の分泌量が減るだけでなく、脳の活性を妨げることにもつながります。できれば、スマホを操作しているときやデスクワーク中は、舌を正しい位置に持ってくるように意識しましょう」

舌のベストポジションとは?

正しい位置とは、舌先の先端が、上の顎の前歯のつけ根あたりから、「口蓋皺壁(こうがいすうへき)」と呼ばれる、上顎の真ん中から横に広がっているザラザラとしたシワの部分に接していること。

この「舌のベストポジション」をキープすることで、全身の姿勢が安定した位置に納まりやすくなると言います。

スマホを操作中の女性
スマホを操作中は舌もベストポジションに(Ph/イメージマート)
写真7枚

「さらに、舌先を上顎に付けると、唾液の出口の唾液腺が解放され、唾液が旺盛に分泌されるようになります。この状態では、口から息が出せなくなるため、自然と口呼吸から鼻呼吸に切り替わります。口呼吸は口内を乾燥させて唾液の分泌を低下させるため、口臭につながりやすい。ですから、鼻呼吸に切り替えることが大事なのです」

「舌のベスポジ」のチェック方法

早速試してみても、舌が正しい位置にあたっているか少し不安な人もいるかもしれませんね。そこで、簡単にチェックする方法を中城さんに教えてもらいました、

【1】まず、舌先を上顎の前歯のつけ根に当ててみる。

【2】その体勢をキープしたまま、鼻を一瞬つまんですぐに離し、息を吐き出してみる。

【3】で、もし口から空気が漏れるようであれば、残念ながらベストポジションではありません。舌がベストポジションにあれば、口内が密封されて、耳の内圧が上がり、ツンと感じるはずだからです。自然と鼻呼吸ができるようになるまで、舌の位置を動かしてベストポジションを見極めてみましょう。

女性がスマホを持ってソファに座っている
スマホ操作する時は姿勢に気を付け口呼吸から鼻呼吸へシフトしよう(Ph/photoAC)
写真7枚

いかがでしょうか。1回やってみただけでは効果は実感できないかもしれません。ですが、1日1回でもいいので、舌の位置や顎の位置を意識してみると、口呼吸から鼻呼吸にシフトして唾液が出ていること、猫背ではなく背筋が伸びている状態の気持ちよさを感じることができるのではないでしょうか。この1つ1つの動作や快感に慣れ、毎日の習慣になっていくと、これまでの自分とは違う自分になっているはずです。

◆教えてくれたのは・歯科医師・中城基雄さん

歯科医師・中城基雄さん
歯科医師・中城基雄さん
写真7枚

歯科医師、鍼灸師。口臭専門クリニック「中城歯科医院」院長。1984年に東京歯科大学を卒業し、1988年に日本大学大学院歯学研究科修了後、中城歯科医院院長に就任。日本歯科東洋医学会、日本東洋医学会、日本歯科麻酔学会所属。日本歯科色彩学会理事、全日本鍼灸学会認定師。ラジオ、新聞、雑誌などのメディア露出も多数。近著に『スマホがあなたをブスにする 歯科医師が教える1日3分でキレイを保つ方法』(大和出版)がある。

●「スマホ口臭」に注意!あなたもニオってない? 自分の口臭を知る方法を歯科医が伝授「10のチェックリスト」も

●スマホを長時間使っていると「口が臭くなる」のはなぜか?歯科医師が語る意外な理由

関連キーワード