やせる体づくりには腸活も必須
自律神経を整えることに加えて、やせる体づくりのために重要なもう1つの要素が、腸内環境を整えること。「腸と自律神経には密接な関係があるからです」と小林さん。
腸と脳は互いに影響を及ぼしあう関係
腸と脳とは、自律神経、内分泌系、免疫系の3つの経路を介して、互いに影響を及ぼしあう関係にあり、交感神経が優位なときは、便を排出するための運動であるぜん動運動は停滞し、副交感神経が優位なときは、ぜん動運動は活発になるといわれています。
「ぜん動運動がしっかり起こっていると、便などの腸内の不要なものが次々と押し出され、腸内環境にもいい影響がでます。そのため、ストレスを受けて交感神経が優位な状況が続くと、便秘しやすくなるといわれています。また、逆に腸内環境が悪くなると、脳が不安を感じ、自律神経が乱れやすくなるといわれています」
腸活でダイエットを助ける「短鎖脂肪酸」を増やす
さらに、腸活によって腸内環境が整うと、「短鎖脂肪酸」というやせる物質の産生にも役立ちます。「短鎖脂肪酸」は、ビフィズス菌などの善玉菌と呼ばれる腸内細菌が、食物繊維やオリゴ糖などをエサとして食べることで産生する、代謝産物の1つ。「短鎖脂肪酸」にはいくつかの種類がありますが、そのうちの1つである「酢酸」には、脂肪細胞に余分なエネルギーが取り込まれるのを防いで、脂肪をたまりにくくする効果があります。
「この『短鎖脂肪酸』の恩恵をうけるには、善玉菌が元気でなくてはなりません。そのためには、善玉菌が元気に活動できる環境を整える必要があります。そして、その環境こそが腸内に便がたまっていない状況なのです。つまり、代謝を下げる自律神経の乱れから身を守るためにも、やせる物質である『短鎖脂肪酸』を体内で多く産生するためにも、腸内環境をよくする腸活は、欠かせないものなのです」
過度な食事制限で急激に体重を落とすのではなく、「自律神経」と「腸内環境」を整えて、徐々にやせていくことが、ダイエットを成功させる秘訣だといえます。
◆教えてくれた人:医師・小林弘幸
こばやし・ひろゆき。順天堂大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任。「腸のスペシャリスト」として、順天堂大学に日本初の便秘外来を開設。著書に『お医者さんがすすめるバナナの「朝食化」ダイエット』(アスコム)、『医者が考案した「長生きみそ汁」』(同)など。