
やせる体づくりに重要な「自律神経」と「腸内環境」を整えるために、1日2本のバナナを食べるといいと話すのは、『お医者さんがすすめるバナナの「朝食化」ダイエット』(アスコム)の著者で順天堂大学医学部教授の小林弘幸さん。小林さんが提唱する、朝に1本以上、1日に2本バナナを食べる「モーニングバナナダイエット」と、モーニングバナナダイエットの継続を助ける「クラッシュバナナ」について教えてもらいました。
* * *
朝にバナナを食べる「モーニングバナナダイエット」はなぜいいのか
小林さんが提唱する「モーニングバナナダイエット」では、「朝にバナナ1本以上食べること」と「1日にバナナを2本以上食べること」をルールとしています。
なぜ、朝にバナナを食べるといいのか。それは、バナナに含まれる食物繊維には腸内の善玉菌を元気にする効果があるうえ、バナナはGI値が低く食後の血糖値の急上昇を防ぐ食品であり、二食目以降の血糖値に影響を及ぼす「ファーストミール(1日の最初の食事)」として最適だからです。
バナナなら忙しい朝に簡単に食べられ、胃腸にもやさしい
朝は「交感神経」と「副交感神経」が切り替わるタイミングであるため、自律神経を整えるには、朝食をとることによってその切り替えをスムーズにしてあげる必要があります。バナナは調理不要で食べられるため、忙しい朝でも続けやすいということも大きなメリットです。

「もう1つ加えるのであれば、消化にいいので、目覚めたばかりの胃腸にやさしい食材であるという利点もあります。これは、バナナに含まれるアミラーゼという消化酵素の働きによるものです。『ちょっと体調がすぐれない』というような朝でも、バナナなら食べられる可能性が高まります」(小林さん・以下同)
1日2本のバナナを推奨する理由
胃腸にやさしく、朝食として継続しやすいバナナ。ではなぜ、小林さんは1日2本食べることを推奨するのでしょうか?
「2022年の1月に、順天堂大学漢方先端臨床医学研究室と小林メディカルクリニック東京の共同チームによる実証実験をしました。その結果、バナナを1日2本、2週間食べ続けた成人男女13人のうち、過半数の7人について、腸内の悪玉菌が作り出した『インドール』と呼ばれる腐敗物質が減少し、腸内環境が改善するという効果が確認されました。また、うれしいことに、自律神経が活性化する効果も見られました。つまり、続けやすさと効果の面を鑑みて、朝には必ず1本以上食べる、バナナを1日2本食べるというメソッドになったのです」
さらに、1日2本のバナナを食べることは自律神経を整えることにも効果的なのだそうです。
モーニングバナナダイエットのやり方は3種類
「朝にバナナ1本以上食べること」と「1日にバナナを2本以上食べること」がルールのモーニングバナナダイエットですが、2本目を食べるタイミングは決められていません。それは、ライフスタイルやその人の性格によって、続けやすいやり方が違うから。「いくつかやり方を示したほうが、もし忘れたとしても、リカバリーができる可能性があります」と小林さん。小林さんが用意した、モーニングバナナダイエットのやり方は全部で3種類あります。

「1つ目は、朝に2本食べる方法です。朝に、『1日2本』を一気にすませてしまおうというわけです。なにも加工をせずに、そのまま2本を食べてもよいですが、おすすめはあとで紹介する『クラッシュバナナ』です。『クラッシュバナナ』は、バナナ2本を使った、簡単に作れる朝食の素です」
朝に「お目覚めバナナ」1本、間食で1本
「モーニングバナナダイエット」の2つ目のやり方は、「朝に1本食べ、間食で1本食べる方法」。朝食をとる前にバナナを食べ、その後、ごはんやパンなどの炭水化物をいつもより減らした朝食をとります。減らす量は、最初は半分ぐらいからはじめ、慣れてから徐々に減らしていきます。
炭水化物を減らすと、日中にお腹がすいてしまいそうですが、「バナナは食べ応えがあり、満腹感を得やすく、適度な甘みで満足度も高くなるため、さほど無理なく炭水化物の量が減らせます」と小林さん。さらに、バナナには食物繊維が含まれているため、先に摂取することで、食後の血糖値の急上昇を防ぐ効果も期待できるそうです。

「満腹感を覚えるまで、おおよそ20~30分かかりますし、食後血糖値の急上昇を防ぐ効果も、同じぐらい時間を空けることが最も効果があるといわれています。そのため、食事の直前でも構いませんが、可能であるならば、朝起きてからバナナを1本食べて、その後食事などの朝の準備をするなどして20~30分経ってから朝食をとる『お目覚めバナナ』がおすすめです」
朝に1本、バナナファーストで昼か夜に1本
「モーニングバナナダイエット」の3つ目のやり方は、朝食で1本食べ、昼食または夕食にバナナを1本食べる方法。
「こちらはすべて、『バナナファースト』を心掛けてください。それぞれの食事を作る前、昼は働いていて外食をすることが多いという人は、外食先に向かう前にデスクでぱくっと食べるなど、食事との間に時間を空ける工夫をするとより効果的だといえるでしょう」
モーニングバナナダイエットを助けるクラッシュバナナ
モーニングバナナダイエットで最初に紹介したやり方は、朝に2本のバナナを食べること。しかし、朝に2本のバナナを食べるとなると、少し量が多いと感じる人もいると思います。そんな方のために小林さんがすすめるのが「クラッシュバナナ」です。
「バナナはつぶしてまとめてみると、握りこぶし大ぐらいの量になります。そこに、白みそとレモン汁を加えたものが『クラッシュバナナ』です。白みそにはヨーグルトと同じくらいの乳酸菌が含まれているため、腸内環境を整える効果がありますし、ストレスを軽減してくれるGABAも豊富なので自律神経を整える効果も期待できます。レモン汁にも、代謝アップが期待できるクエン酸が入っており、『クラッシュバナナ』にすることで、より高い腸活ダイエット効果が期待できます」

クラッシュバナナのダイエット効果の期待値は1年間で約10kg
朝ごはんの摂取カロリーは成人でおおよそ、500~600kcalだといわれています。一方、クラッシュバナナのカロリーは約220kcalであり、アレンジレシピを試すにしても、平均で300~400kcal程度に抑えられると考えられるため、1日に約200kcal減らすことができる計算です。これを1年に換算すると200kcal×365日で7万3000kcalになります。
「1kgを消費するのに約7200kcal必要なので、1年間で約10kg、半年で5kgのダイエットが期待できるということになります。さらに自律神経と腸内環境が整って、『勝手にやせる体』になることを考えると、リバウンドのしにくい、理想的なダイエットになるといえるでしょう」
クラッシュバナナのレシピ
クラッシュバナナは、冷凍庫に入れて保存できるよう、保存袋に入れてつぶします。冷凍すれば、バナナが熟しにくくなったり、黒く変色しにくくなったりするため、1週間は保存が可能。週末などに1週間分作り置きするのもおすすめです。

「冷凍した『クラッシュバナナ』は、朝、電子レンジ(600W)で1分解凍すれば食べられます。前の晩に冷蔵庫に移して解凍すると、黒く変色しやすいのでご注意を」
《材料》(1食分)
バナナ…2本 白みそ…大さじ1 レモン汁…大さじ1
《作り方》
【1】バナナ2本の皮をむき、冷凍保存可能な保存袋に入れる。あとで冷凍保存しておくと毎日の手間が省けるので、冷凍できる袋を選ぶ。
【2】袋の口を閉じ、手近なビンなど硬いもので、袋の上からバナナをつぶす。バナナは柔らかいので、身近にあるもので簡単にクラッシュ可能。
【3】粗い状態までつぶせばOK。バナナの形が少し残っているくらいのほうが、食べるときも食感が残り楽しい。
【4】分量の白みそとレモン汁を加え、袋の口を閉じ、袋の上から手でもむなどして混ぜる。食べ慣れてきたら、好みでレモン汁を増やしてもOK。
「クラッシュバナナのハニーマスタードソース添え」レシピ

そのまま食べても十分においしいクラッシュバナナですが、毎日食べていると飽きることもあると思います。そんなときは、クラッシュバナナのアレンジレシピを試してみてください。
《材料》(1人分)
クラッシュバナナ…1食分 キャベツ…1枚(50gくらい) プレーンヨーグルト…適量(写真は50g) 【A】[マスタード…大さじ1 はちみつ…大さじ1]
《作り方》
【1】クラッシュバナナを器に入れる。
【2】キャベツはざく切りにして耐熱容器に入れ、電子レンジ(600W)で2分加熱。冷水にとり、キッチンペーパーで包んで水気を絞る。
【3】【2】を器に入れてプレーンヨーグルトと【A】を混ぜ合わせたソースをかける。
◆教えてくれた人:医師・小林弘幸

こばやし・ひろゆき。順天堂大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任。「腸のスペシャリスト」として、順天堂大学に日本初の便秘外来を開設。著書に『お医者さんがすすめるバナナの「朝食化」ダイエット』(アスコム)、『医者が考案した「長生きみそ汁」』(同)など。