健康・医療

更年期に気をつけたい「糖尿病」 今すぐ始めたい高血糖を予防する運動&食事法

血糖値を測っている
糖尿病を予防するためには高血糖を防ぐことが重要
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糖尿病は体調不良や重い合併症のリスクを高め、最悪の場合は死にいたる怖い病気です。血糖値が高い状態である「高血糖」が糖尿病の原因なので、血糖値を正常に保つことが予防につながります。そこで、血糖値を正常に保つための生活習慣や食事、漢方薬について薬剤師の山形ゆかりさんに教えてもらいました。

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高血糖には自覚症状がない

高血糖は自覚しづらく、痩せる、のどが渇きやすい、頻尿、疲れやすいなどの自覚症状があらわれたときには、すでに糖尿病になっている場合があります。糖尿病は、意識障害(「糖尿病性昏睡(急性合併症)」)や失明などの重い合併症を引き起こしたりする可能性もあり、危険な病気です。

コップに水を注いでいる
のどが乾きやすいなどの症状が出たら要注意!
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なお、高血糖とは血糖値(血液中に含まれるブドウ糖の濃度)が、空腹時血糖ないし随時血糖100mg/dl以上またはHbA1c(糖化ヘモグロビン)5.6%以上の状態をいいます(厚生労働省「高血糖」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-025.html)

健康診断などの採血結果が高血糖判定値の人は、症状が出ていないからと油断せず、生活習慣の改善が必要といえるでしょう。

血液検査の結果にマーカーを引いている
高血糖と診断されたら生活習慣を意識して
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高血糖になる原因

血糖値を正常に保つカギを握るのは、すい蔵から分泌される「インスリン」という物質です。とくに女性は更年期以降に糖尿病発症のリスクが高まりやすい理由も踏まえて、原因をチェックしましょう。

女性ホルモンの減少

更年期以降は、女性ホルモンの「エストロゲン」が徐々に減少します。脂質代謝を促して内臓脂肪をつきにくくする働きがあるエストロゲンには、血糖値を調整する「インスリン」の働きを正常に保つ働きもあるため、更年期以降は高血糖になりやすいのです。

また、内臓脂肪はインスリンの働きを弱める「悪玉ホルモン」を分泌するため、エストロゲンの分泌が乱れたり、減ったりして内臓脂肪がつきやすくなってしまうことも高血糖の原因といえます。

飲食の不摂生とストレス

パンやうどん、ラーメン、白米といった炭水化物などの「糖質」の多い食事を過剰に摂った際には、通常よりもインスリンが必要になります。そのような食事を続けていると、すい臓に負担がかかり、やがて機能低下を起こします。

炭水化物
炭水化物過多な食事を続けるとすい臓に負担がかかりやすい
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すい臓が機能低下を起こすとインスリンの分泌量も低下するため、血糖値の調節が難しくなり、高血糖や糖尿病が起こりやすくなります。

また、過度なストレスは、血糖値を上昇させる作用のあるホルモン「コルチゾール」などを分泌させるため、血糖値を正常に保つにはストレスコントロールも大切です。

高血糖を予防する方法

それでは、高血糖の予防において重要な、内臓脂肪の代謝、ストレスの発散、食生活の改善について、紹介していきます。

生活習慣の改善

適度な運動は内臓脂肪を代謝したり、ストレスを発散したりする効果が期待できます。

内臓脂肪の代謝には、有酸素運動を中心に行うことが有効です。それには、少なくとも週に10エクササイズ(10メッツ・時)以上(厚生労働省「内臓脂肪型肥満」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-05-002.html)の運動量が必要です。

「メッツ・時」は身体活動の強度に実施時間をかけたものです。たとえば、分速100m程度の速歩の強度は4メッツのため、10エクササイズ(10メッツ・時)を達成するには週に2.5時間以上歩行する必要があります(4メッツ×2.5時間=10エクササイズ(10メッツ・時))。

ランニングしている女性
高血糖を予防するための運動の目安とは?
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厚生労働省が「健康づくりのための運動指針 2006 ~生活習慣病予防のために~」(https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/07/dl/s0719-3c.pdf)」へ掲載している運動強度を基にした、おおよそ10エクササイズ(10メッツ・時)を達成するための各運動の目安時間は以下の通りです。なお、週に10エクササイズ以上であれば、1日の時間が短くても、長くても構いません。

・軽い体操:1日30分×6日(週に180分以上)
・速歩:1日30分×5日(週に150分以上)
・ウェイトトレーニング:1日20分×5日(週に100分以上)
・エアロビクス:1日30分×3日(週に90分以上)
・ジョギング:1日15分×6日(週に90分以上)
・平泳ぎ:1日30分×2日(週に60分以上)

べジファーストを心がける

1日の炭水化物(糖質)の摂取量は250~325g(公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「三大栄養素の炭水化物の働きと1日の摂取量」https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/tansuikabutsu.html)が望ましいとされ、それ以上の摂取や、血糖値の急上昇もすい臓の負担となります。

そこで、食後の血糖値の上昇が緩やかになる「ベジファースト」を実践してみましょう。

和定食
食事の順番を意識することで食後血糖値の急上昇を防ぐことができる
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ベジファーストとは、野菜→たんぱく質→炭水化物(糖質)の順に食べる食事法です。野菜に多く含まれる食物繊維ですが、とくに「水溶性食物繊維」には糖質を包み込んで吸収を緩やかにする働きがあります。そこで、食事の最初に食べることで、後から食べる炭水化物(糖質)を効率的に包み込み、血糖値の急上昇を抑えることができます。

高血糖を予防する食材

高血糖の予防には、インスリンの働きをサポートする「クロム」と、インスリンの分泌量を調整する「亜鉛」を摂取しましょう。

クロムは「乾燥あおさ」に、亜鉛は「干ししいたけ」に多く含まれ、どちらもスーパーで一年中入手しやすい食材です。

あおさの味噌汁
クロムが豊富なあおさを食事に取り入れてみて
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クロムと亜鉛は一緒に摂取することで効果が発揮される性質があるため、乾燥あおさと干ししいたけの両方を入れた味噌汁などにして食べるとより効果が期待できます。

また、クロムはビタミンCと一緒に摂取することで吸収率があがります。9〜10月に旬をむかえる「新れんこん」はビタミンCを多く含んでいるので、味噌汁にプラスしてみてはいかがでしょうか。インスリンに関わる機能の効果アップが期待できます。

れんこんの梅和え
クロムの吸収を高めるビタミンCを多く含むれんこん
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なお、玄米やごま、いんげん豆に多く含まれる「フィチン酸」は、クロムや亜鉛の吸収を阻害するため、一緒に摂取するのは避けましょう。

高血糖には漢方薬も役立つ

漢方薬によって直接的に血糖値を下げるのは難しいですが、「脂質代謝を改善する」「イライラや気分の落ち込みを改善する」といった作用のある漢方薬で、高血糖の原因となる内臓脂肪やストレスにアプローチすることは可能です。

漢方茶
高血糖の予防に役立つ漢方薬を紹介
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おすすめの漢方薬

・大柴胡湯(だいさいことう)

体の余分な熱を取り除いて肝の働きをよくし、脂質代謝を整える漢方薬です。イライラして過食をしてしまう人や肥満症の人に向いています。

→大柴胡湯について詳しく知る

・防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)

脂質代謝機能を改善し、ため込んでいる脂肪を減らす漢方薬です。お腹がぽっこり出ている人や便通が悪い人に向いています。

→防風通聖散について詳しく知る

漢方薬を始める際の注意点

漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。

ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。

◆教えてくれた人:薬剤師・山形ゆかりさん

白衣の女性
薬剤師の山形ゆかりさん
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やまがた・ゆかり。薬剤師、薬膳アドバイザー、フードコーディネーター。病院薬剤師として在勤中、食養生の大切さに気付き薬膳の道へ。牛角・吉野家ほか薬膳レストラン等15社以上のメニュー開発にも携わる。「健康は食から」をモットーに健康・美容情報を発信する「Medical Health -メディヘル-youtubeチャンネル」(@medicalhealth–7900)で簡単薬膳レシピ動画を公開するなど精力的に活動している。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)でも薬剤師としてサポートを行う。

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