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更年期で高まる「痛風」のリスク!プリン体に注意、でも「ビールだけじゃない」気をつけたほうがいい食べ物

ビールで乾杯している
痛風予防に注意するべきはビールだけじゃない?
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食欲の秋。バーベキューをしたり、アルコールを飲んだりする機会が増える人も多いと思いますが、食べ過ぎや飲み過ぎには注意しましょう。「一般的に男性がなりやすいとされる「痛風」は、更年期以降の女性も罹患リスクが高まるのです」と話す薬剤師の山形ゆかりさんに、更年期以降の女性と痛風の関係、予防のための生活習慣や食事、漢方薬について教えてもらいました。

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痛風の原因は過剰な尿酸

痛風の発作は足の親指のつけ根(関節)に出やすく、歩けなかったり、眠れなかったりするほどの激しい痛みが突然あらわれます。痛みのピークは約半日~24時間で、その後、1週間程度で症状は治まりますが、原因を解決しないかぎり発作を繰り返す可能性があります。

足の親指をつまんでいる
親指の付け根などに痛みが出ることが多い痛風
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また、放置するとひざ関節や手関節などほかの部位にも症状があらわれたり、関節に硬い塊ができたり、尿路結石ができたりすることもあるため、痛風が疑われる場合は速やかに内科または整形外科を受診しましょう。

内臓脂肪型肥満やプリン体の過剰摂取に注意

痛風の原因は、過剰な「尿酸」です。血液中の尿酸が7.0mg/dl以上で「高尿酸血症」と呼ばれる状態(厚生労働省「高尿酸血症」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-007.html)になります。この状態が続くと、やがて尿酸が結晶化し、関節内に剥がれ落ちます。それを白血球(からだの免疫機能)が異物と認識して攻撃するために炎症が生じ、激烈な痛みが引き起こされるのです。

尿酸にマーカーを引いたリスト
痛風の原因は過剰な尿酸
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なお、尿酸が増える原因には、尿酸の合成を亢進したり、尿酸の排出をしにくくしたりする「内臓脂肪」の蓄積や、尿酸の素となる「プリン体」の過剰摂取があげられます。そのため、内臓脂肪型肥満(CTスキャン時の内臓脂肪面積が100平方センチメートル、女性は腹囲90cm以上:厚生労働省「内臓脂肪型肥満」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-051.html)の人は、とくに注意しましょう。

更年期以降の女性と痛風の関係

尿酸の排出を促す働きがある女性ホルモンの「エストロゲン」の分泌は、更年期以降は減少し、閉経後にはほとんど分泌されません。そのため、更年期以降は尿酸が排出しにくくなり痛風のリスクが高まります。

エストロゲンを増やすには「ホルモン補充療法」といった専門的な治療が必要ですが、生活習慣などに気をつけることで、正常な尿酸値である血液中の尿酸:2.1 mg/dL以上7.0 mg/dL未満(公益財団法人 痛風・尿酸財団「血清尿酸値の正常値は?」https://www.tufu.or.jp/gout/gout2/61)を目指すことは可能です。

下がっていくグラフ
エストロゲンの減少が更年期以降の痛風リスクにつながる
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高尿酸血症・痛風を予防する方法

尿酸の生成の亢進や尿酸の排泄をしにくくする「内臓脂肪」の代謝と、尿酸の素となる「プリン体」の多い食事を避けることが、高尿酸血症・痛風の予防につながります。

適度な運動を心がける

内臓脂肪を代謝し、痛風の原因となる高尿酸血症の予防によいとされる運動は、ウォーキングなどの軽い有酸素運動です。運動習慣のない人は10分からはじめ、徐々に分数を伸ばし、最終的には毎日30分行うことを目指しましょう。

なお、尿酸の生成を促進し、尿酸値が上昇する恐れのある激しい運動や無酸素運動(短距離走や筋力トレーニングなど)は、高尿酸血症や痛風の予防にはおすすめしません。

ランニングしている女性
痛風の予防には適度な運動が◎
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プリン体の多い食べ物を避ける

痛風の原因とされるプリン体は、分解時に尿酸が生成されます。そのため、体内にプリン体が多くなるとそれに伴って尿酸も増えるので、鶏レバー(312.2mg)、マイワシの干物(305.7mg)、豚レバー(284.8mg)、真アジの干物(245.8mg)、牛レバー(219.8mg)、カツオ(211.4mg)などプリン体が多く含まれる食事は避けましょう(()内は100gあたりのプリン体含有量)。

なお、プリン体含有量の指標は、食品100g中に200mg以上が「多い」、300mg以上が「極めて多い」とされ、プリン体の摂取制限量は1日400mgに設定されています(公益社団法人 痛風・尿酸財団「食品・飲料中のプリン体含有量」https://www.tufu.or.jp/gout/gout4/447)。

ビールと焼き鳥
痛風にビールがNGと言われる理由って
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また、プリン体が多いイメージのある「ビール」ですが、100ml中に含まれるプリン体は3.3〜6.9mgで、「多い/極めて多い」には該当しません。しかし、アルコールは体内で分解される際にプリン体と「乳酸」が産生されます。この乳酸に、尿酸の体外への排出を阻害する働きがあるのです。

ビールから直接プリン体を摂取したうえ、アルコールの分解時にプリン体が増え、さらには尿酸の排出を阻害するという悪循環が生まれるため、ビールの飲みすぎには注意が必要です。

高尿酸血症・痛風の予防のためには、1日のアルコールを20~25g以内にとどめることが推奨されます。ビールは中瓶1本、日本酒は1合、ワインはグラス1杯、ウイスキーはダブル1杯までが目安です(痛風と核酸代謝 第41巻 第2号「アルコールが尿酸代謝に悪い理由」https://www.jstage.jst.go.jp/article/gnam/41/2/41_228/_pdf)。

高尿酸血症・痛風を予防する食材

高尿酸血症・痛風を予防するには、プリン体の吸収を抑制する「乳酸菌PA-3株」、プリン体の生成を抑制する「ポリフェノール」、尿酸を体外に排出する「ビタミンC」が有効です。

乳酸菌PA-3株を多く含む食品としては乳酸菌飲料やヨーグルトがあげられ、近年では乳酸菌PA-3株を主軸に置いた商品も発売されています。

ポリフェノールを多く含む食材にはブルーベリー(267㎎/100g:「地域特産農産物の総ポリフェノール量及び抗酸化能」https://hyogo-nourinsuisangc.jp/archive/3-k_seika/hygnogyo/200/09.pdf)、ビタミンCを含む食材はキウイフルーツ(71g/100g:文部科学省「食品成分データベース」https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=7_07054_7)などがあります。

冷凍ブルーベリーとキウイがのったヨーグルト
乳酸菌を取ることができるヨーグルトと、ビタミンC、ポリフェノールを多く含む果物の組み合わせがおすすめ
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そこで、ヨーグルトに、ブルーベリー、キウイフルーツを合わせて食べるのが、痛風予防にはよい組み合わせといえます。

なお、ブルーベリーは冷凍することでポリフェノールの効果が高まる性質があるため、スーパーで一年中入手のしやすい冷凍ブルーベリーを使うとよいでしょう。ただし、ブルーベリーに含まれる「アントシアニン」というポリフェノールは、長期保存に向かないため早めに使い切るようにしてください。また、熱加熱にも弱いためジャムはおすすめしません。

高尿酸血症・痛風には漢方薬も役立つ

漢方薬のなかには、高尿酸血症・痛風の原因のひとつである肥満にアプローチできるものもあります。「脂肪や老廃物を排出する」「脂肪代謝を促進する」といった働きのあるものを選ぶことで肥満の根本改善につながります。なお、すでに痛みがある場合には「炎症を抑える」働きのある生薬を含む漢方薬がおすすめです。

小皿にのった生薬
痛風の痛みを和らげるのに有効な漢方薬を紹介
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痛風は治ったと思っても再発することがあるため、継続的に痛風の症状が起きないように取り組むことが大切です。のむだけでいい漢方薬は、生活に取り入れやすく続けやすいことも利点です。

おすすめの漢方薬

・防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)

お腹周りの内臓脂肪や皮下脂肪が気になる人に用いられる漢方薬です。余分な老廃物の排泄をしやすくし、代謝をあげて脂肪燃焼を促す効果が期待できます。

→防風通聖散について詳しく知る

・越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)

すでに痛風の痛みがある人へ向いている漢方薬です。熱感や関節の腫れ、痛みのある人、尿量が少ない人に用いられ、関節の炎症やむくみの解消に効果が期待できます。

漢方薬を始める際の注意点

漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。

ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。

◆教えてくれた人:薬剤師・山形ゆかりさん

白衣の女性
薬剤師の山形ゆかりさん
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やまがた・ゆかり。薬剤師、薬膳アドバイザー、フードコーディネーター。病院薬剤師として在勤中、食養生の大切さに気付き薬膳の道へ。牛角・吉野家ほか薬膳レストラン等15社以上のメニュー開発にも携わる。「健康は食から」をモットーに健康・美容情報を発信する「Medical Health -メディヘル-youtubeチャンネル」(@medicalhealth–7900)で簡単薬膳レシピ動画を公開するなど精力的に活動している。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)でも薬剤師としてサポートを行う。

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