美容や健康のために取り組もうとして続かなかったものが、あなたにはいくつありますか?振り返ってみれば数えきれないほど…という人もいると思います。しかし、『ひざたたき 世界一かんたんな健康法』(アスコム)の著者で整形外科医・美容皮膚科医の中村光伸さんによると「特別にあなたがだらしがないのではなく、ごくありふれたこと」。そこで、習慣化が難しい理由や継続のコツについて、教えてもらいました。
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習慣化が難しいのは脳は急激な変化を好まないから
今ある不調や疾患の改善のためではなく、健康の維持や不調の予防のためには「直ちに問題がなくても当たり前のようにやる習慣」が不可欠だと中村さんはいいます。
しかし、必要に迫られているのではなく、“健康のため”となると、ついついやらない理由が先行してしまうのだそうです。例えば、健康診断や人間ドックの問診で「バランスのいい食事や適度な運動を心がけましょう」と言われて、すぐ実践できる人は多くないでしょう。
「健康の維持や予防のためにこれまでの習慣を変えたり、新しい習慣を身につけたりするのは、誰であっても難しいことなのです」(中村さん・以下同)
脳が変化を好まないのは省エネのため
健康のための習慣や運動はやったほうがいいと頭でわかっていても、なかなか続けられない理由として、脳が急激な変化を好まないといわれていることがあげられます。
朝起きたらテレビをつける、帰宅したら手を洗うなど、1日の行動を振り返ると無意識で行っていることはたくさんあるはずです。アメリカの学者が2006年に発表した論文によると、なんと人間の行動の45%は習慣なのだそうです。つまり、半分近くの行動が「やるぞ」と決めずに行っていることだといいます。
脳を使って決断するにはエネルギーが必要なため、「何度も繰り返し行っていることについては、その行動を自動化(習慣化)してしまって、決断に使うエネルギー消費をカットしようとする」のだそうです。
考えることが多いと挫折しやすい
エネルギーを節約するために物事を習慣化する脳の仕組みによって、歯磨きや手洗いなど小さい頃から繰り返し行っている行動は無意識でできるようになっているのです。逆に、喫煙や飲酒など長い時間をかけて習慣化したことは、やめるのが難しくなります。
「新しい習慣を始めるにせよ、長く続いた習慣をやめるにしても脳は急激な変化に抵抗するのです」
例えば、毎朝ジョギングをすると決めたとき、ジョギングは食事の前か後か、服は何を着るか、コースや距離をどうするか、など決めなくてはいけないことが増えて、面倒な気持ちになるでしょう。
「雨が降っているから、ちょっと調子が悪いから、今日は忙しいから、スポーツウェアがないから……など、何か理由があれば、あっさりと普段通りの生活に戻ってしまいます」
習慣化までにかかる時間は平均66日
では、どのくらい継続すれば習慣化することができるのでしょうか? ロンドン大学のピッパ・ラリー博士の研究が96人の学生を対象に行った研究によると、取り組んだ3つの内容全体の平均は66日だったそうです。
「しかし取り組んだ内容によって期間に差があり、体にいいものを食べる習慣ができたのは平均で約65日、同じく飲む習慣はもう少し短くて約59日、そして運動は逆に長く約91日でした」
この結果から、「単純な行動は習慣化するまでの期間が短く、複雑な行動の習慣化にはより時間がかかる」と中村さんはいいます。
また、スポーツジム入会者の行動を12週間にわたって追跡した別の研究では、ジム通いの頻度が週3以下の人は6週目を過ぎると脱落する人が多かったことから、週4回以上の実行が習慣化に有利に働いたということがわかったそうです。
「一見簡単そうな健康法や、装着するだけの健康器具でさえ、多くの人が挫折してしまう理由がわかると思います」