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元メガバンク支店長が、口座を作るなら「親子で信用金庫」をすすめる理由

4冊の通帳
親子で同じ信用金庫に口座を作ることのメリットとは?(Ph/photoAC)
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『一生お金に困らない! 新・お金が貯まるのは、どっち!?』(アスコム)を上梓した、元メガバンク支店長でもあるお金の専門家・菅井敏之さんが口座を作ることをすすめるのは、実は信用金庫。その理由と、親と子は同じ銀行で口座を作るべきか、別の銀行か、どちらがいいのかについても教えてもらいました。

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信用金庫に口座を作るのがいい理由は「つながり」

菅井さんが口座を作ることをすすめるのは、まずは「信用金庫」。それが近くになければ「地方銀行」でもいいそうです。なぜでしょうか。

「あなたの周りに、地元で商売をしている友人知人がいませんか? その人は、地域に密着した銀行からお金を借りている可能性が高いはずです。地方銀行やJAバンクからかもしれませんが、ここでは仮に『X信用金庫』から借りているとしましょう。その人は、X信用金庫に口座をつくって担当者とつきあい、信用を積み重ね、お金を借りています」(菅井さん・以下同)

つきあいが長くなるほどに、「貯金」だけではなく「信用」も積み立てられているはずだと菅井さんはいいます。

握手する男女
親の信用が子の信用にもなる(Ph/photoAC)
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親の信用が子どもにも引き継がれる

そして、子どももその銀行に口座を作ることで、その人が積み立てた信用を子どもにも引き継ぐことができるのです。成人したばかりで、子どもの口座にほとんど預金がなかったとしても、親に信用があることで子どもの印象もよいものになるでしょう。そのため、菅井さんは同じ銀行に口座を作ることをすすめます。

「銀行は、どこの誰かわからない人よりも、『あ、○○さんのお子さんですか』とわかる人を圧倒的に大切にしてくれます。『つながり』を大切にする信用金庫ならば、なおさらです」

銀行は家族ベースで預金や信用を判断する

銀行は、親と子の財産やそれによって得られる信用を「家族合算ベース」で判断するのだそうです。つまり、商売をしている人に限らず退職金などの大金を預金することで、あなたと同時に子どもも、2000万円なら2000万円の信用を得ることができます。信用が大きければ、「子どもがお金を借りるとき、一般よりも『安い金利』を提示してくれる」可能性もあるそうです。

現金と通帳と電卓
銀行は親子の財産を合算し、信用としてくれる(Ph/photoAC)
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「マンションを買いたい息子が、銀行に住宅ローンを申請したが、収入が足りず、審査が厳しいとします。このとき親が戸建ての家を持っていれば、銀行は『ご両親の資産を担保に入れてほしい』とお願いするかもしれません。でも、親子で同じ銀行なら、親の信用を見て『資産背景は十分』と判断し、審査が通る場合もあります」

銀行は会社に融資する際、親会社と子会社など関連会社全体を連結ベースで見て審査するのだそうです。同様に、家族の場合も同じ考えかたをするといいます。そのため、子供がある程度の年齢になったら、銀行の担当者へ紹介するとよいでしょう。

「銀行とのよい関係を築くやり方を子どもに教え込む。これが、資産家のお金の基礎なのです」

給与口座はメガバンクより信用金庫が◎

信用金庫が、地域の中小企業や商店に勤める個人を主な取引先にしている一方、メガバンクは、大企業勤めや公務員など安定した人ばかりを相手にしがちなのだそうです。

例えば、貯金500万円ではメガバンクでは相手にされなくても、信用金庫では上客といえます。

「給与が振り込まれる口座(通称・きゅうふり口座)を、メガバンクではなく信用金庫に開くことをおすすめします」

給与明細と現金
給与の振り込み口座を信用金庫にするのがおすすめ(Ph/photoAC)
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地域の事情をよく知っている信用金庫は、地元で不動産を買うときにいろいろと相談にのってくれますし、付き合いが長く信用があれば、担保評価額70%を超えた土地値目いっぱいの融資をしてくれるケースもありうると菅井さんはいいます。

銀行との関係性が親の資産を守ることにもつながる

親子で同じ銀行に口座を作るメリットは、信用が大きくなり、お金を借りやすくなるだけではありません。「『子どもが親の財産を守るうえ』でも、とても効果的な方法なのです」と菅井さん。

「銀行員になったつもりで、ちょっと想像してみてください。ある親子がそろってあなたの顧客だとすれば、親御さんに投資信託をすすめるとき、お子さんの顔がちらつくでしょう。この投信で大きな損を出してしまったら、ご本人はもちろん、お子さんに怒られるかもしれない…。こう思うのが人間の心理です」

つまり、銀行を同じにするだけで、「金融機関の営業や売り込みを慎重にさせる効果がある」のです。

説明を受ける女性
親と同じ銀行に口座を作り、関係値をきずくことが親の財産を守ることにもつながる(Ph/photoAC)
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「子どもとしては、親に『○○なんか手を出しちゃ、絶対にダメだよ!』と強くいってはダメ。親はかえって身構え、『この子には相談できない』と心を閉ざしてしまいます」

子どもは自身も資産運用の勉強をしたうえで、「金融機関はけっこう高齢者の財産を狙っているようだから、なんでもオレに相談してよ」と親に優しく話すのがいいそうです。

「同時に銀行にも、『うちの父も歳だから、なにかあったら、僕にもひとこと教えてくださいね』と伝えておきます。これだけで充分で、銀行にとってもありがたい話。あとあとのトラブル回避につながるからです」

書類にハンコを押す男性
関係値があると銀行とのトラブル回避にもなる(Ph/photoAC)
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銀行には、70歳以上の客と契約する場合に家族の同席を求める決まりがありますが、子どもが忙しかったり、遠方だったりで同席できない場合、やむなく同席なしで契約することもあるそうです。そこで損が出たときに、高齢だからとなんてことをしてくれた!と怒鳴り込んでくるケースも多いといいます。

「つながり」を大切にする信用金庫で親子ともに信用を積み重ね、いい関係を築いていくことが、資産を増やしたり守ったりすることにつながるのです。

◆教えてくれた人:菅井敏之さん

スーツを着た男性
菅井敏之さん
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すがい・としゆき。1960年、山形県生まれ。学習院大学卒業後、1983年に三井銀行(現・三井住友銀行)へ入行。個人・法人取引、およびプロジェクトファイナンス事業に従事し、2003年に金沢八景支店長(横浜)、2005年に中野支店長(東京)に就任する。48歳で銀行を退職したのちアパート経営をスタートし、現在は10棟80室のオーナー。銀行を舞台にしたテレビドラマの銀行監修を務めるほか、報道・情報番組などのメディアにもお金の専門家として出演している。著書『お金が貯まるのは、どっち!?』シリーズ(アスコム)はシリーズ52万部を突破。https://toshiyukisugai.jp/

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