銀行との関係性が親の資産を守ることにもつながる
親子で同じ銀行に口座を作るメリットは、信用が大きくなり、お金を借りやすくなるだけではありません。「『子どもが親の財産を守るうえ』でも、とても効果的な方法なのです」と菅井さん。
「銀行員になったつもりで、ちょっと想像してみてください。ある親子がそろってあなたの顧客だとすれば、親御さんに投資信託をすすめるとき、お子さんの顔がちらつくでしょう。この投信で大きな損を出してしまったら、ご本人はもちろん、お子さんに怒られるかもしれない…。こう思うのが人間の心理です」
つまり、銀行を同じにするだけで、「金融機関の営業や売り込みを慎重にさせる効果がある」のです。
「子どもとしては、親に『○○なんか手を出しちゃ、絶対にダメだよ!』と強くいってはダメ。親はかえって身構え、『この子には相談できない』と心を閉ざしてしまいます」
子どもは自身も資産運用の勉強をしたうえで、「金融機関はけっこう高齢者の財産を狙っているようだから、なんでもオレに相談してよ」と親に優しく話すのがいいそうです。
「同時に銀行にも、『うちの父も歳だから、なにかあったら、僕にもひとこと教えてくださいね』と伝えておきます。これだけで充分で、銀行にとってもありがたい話。あとあとのトラブル回避につながるからです」
銀行には、70歳以上の客と契約する場合に家族の同席を求める決まりがありますが、子どもが忙しかったり、遠方だったりで同席できない場合、やむなく同席なしで契約することもあるそうです。そこで損が出たときに、高齢だからとなんてことをしてくれた!と怒鳴り込んでくるケースも多いといいます。
「つながり」を大切にする信用金庫で親子ともに信用を積み重ね、いい関係を築いていくことが、資産を増やしたり守ったりすることにつながるのです。
◆教えてくれた人:菅井敏之さん
すがい・としゆき。1960年、山形県生まれ。学習院大学卒業後、1983年に三井銀行(現・三井住友銀行)へ入行。個人・法人取引、およびプロジェクトファイナンス事業に従事し、2003年に金沢八景支店長(横浜)、2005年に中野支店長(東京)に就任する。48歳で銀行を退職したのちアパート経営をスタートし、現在は10棟80室のオーナー。銀行を舞台にしたテレビドラマの銀行監修を務めるほか、報道・情報番組などのメディアにもお金の専門家として出演している。著書『お金が貯まるのは、どっち!?』シリーズ(アスコム)はシリーズ52万部を突破。https://toshiyukisugai.jp/