不調を極限まで溜め込まないようにする
「月経関連片頭痛」と言って、女性の場合は生理周期に合わせて片頭痛が起こる方も少なくありません。生理によって引き起こされる片頭痛には、女性ホルモンのエストロゲンが関係しています。エストロゲンの分泌量は月経周期に合わせて増減していますが、分泌量が急減するタイミングで片頭痛が起こりやすいといわれています。
エストロゲンは、生理が始まると徐々に分泌量が増え始め、排卵前にピークを迎えます。そして、排卵が起こると急激に下がります。片頭痛が起こる一つ目のタイミングがこのときです。そして、排卵後にエストロゲンの分泌量は少しずつ増えていき、生理前後に再び下がります。これが、片頭痛が起きやすい2つ目のタイミングです。思い当たる人も多いのではないでしょうか。
妊娠・出産を経た女性の中には、「妊娠中は片頭痛がなくて快適だった」という方も多いのですが、これは、妊娠中はエストロゲンの分泌量が高い状態で保たれており、急減するタイミングがこないためだと考えられます。こういった不調に対して医学的にはホルモンの変動を減少させる低容量ピルや対症療法的な漢方薬の服用が効果的ですが、まずは、食事の質を見直して、適度に運動をして、質のよい睡眠をとることが重要です。
食事・運動・睡眠を整えることが健康への近道
一日のリズムを整えていくことは自律神経のバランスをよく保つことにつながり、それがホルモンバランスを整えることにもつながっていくのです。食事・運動・睡眠。もう聞き飽きてしまったかもしれませんが、どの分野の専門家でも、この3つが大切だと口を揃えていうはずです。結局は基本を整えることが健康への近道であることに変わりはないのです。
PMSや生理痛、月経関連片頭痛などホルモンが関連する痛みや不調は、20代以降の女性に多く見られます。もちろん、10代でも悩んでいる方はおられますが、10代のときはなんともなかったのに社会人になってから生理痛がつらくなったという方の割合はかなり高いと感じています。女性のライフステージと合わせて考えてみると、社会人になって生じる人間関係や仕事上のストレスもあるでしょうし、社会人になって運動量が減ったことも大きく関係していると思います。
20代から30代になると、仕事だけではなく、結婚する人や出産する人も出てきます。するとますます自分の体をいたわる時間がなくなって、極限まで不調を我慢してしまい、どうにもならなくなってから病院に駆け込む、という方がたくさんいます。
学生時代のように、自分が主役の時間を持つようにすることも、生理に関連した不調の改善には役立つと思います。「忙しいから」と言い訳をせず、えいやっと立ち上がり、頭で考える前に行動してみましょう。元気、やる気、活気。すべては気の流れがよくないと発揮できないものばかり。自分の気が滞らないように、好きなことで発散する時間を積極的に持つようにしてみてください。
◆教えてくれたのは:産婦人科医・内山心美さん
産婦人科医、『のぞみ女性クリニック』院長。1999年昭和大学医学部卒、昭和大学産婦人科学教室入局。水戸赤十字病院、昭和大学藤が丘病院、昭和大学病院、佐野厚生総合病院などを経て2014年昭和大学江東豊洲病院 助教。2018年まつしま病院 常勤。2020年昭和大学江東豊洲病院 兼任講師。2020年9月、のぞみ女性クリニック開業。