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薄井シンシアさんが語る“離婚の極意”「結婚は終身ではない」「離婚しても恨まない関係でいたい」

薄井シンシアさん
薄井シンシアさんが語る“離婚の極意”とは?
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薄井シンシアさん(64歳)は、外交官の男性と結婚後、仕事を辞めて17年間の専業主婦生活を送りました。その後、1人娘が米国の大学へ進学したタイミングで再就職。58歳のとき、30年あまり連れ添った男性と離婚しました。現在、シンシアさんは外資系企業の正社員として働いています。「シンシア流離婚・その2」は、娘の世代に伝えたい「離婚の極意」です。

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結婚は終身でなくてよい。間違っても心配なし

娘や今の若い人たちに伝えたいのは、「結婚は終身ではない」ということです。ただ、もし嫌なことがあったりして離婚になったとしても、お互いにまともな人間でいられるかどうかが大事です。私の元夫は、本当にまともな人だったので、退職金を半分くれたし、喧嘩もなかった。だから今も関係が続いています。

例えば、「幸せ、幸せ」と話していた人が、離婚した途端に「二度と相手の顔を見たくない」と言って、驚くことがありますよね? 私は最終的に離婚したとしても、お互いに恨まないような関係でいたい。会社を辞めるときと同じだと思います。

私の娘は、結婚や出産に焦りがありません。あるとき、恋人について「彼との5年先の生活は見えるけれど、その先が見えてこないんだよね」と言ったので、「5年先が見えるならよいじゃない。見えなくなったら離婚すればいい」とアドバイスをしました。娘は素直に「あ、そっか」とうなずきました。

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「結婚したら一生結婚しなくちゃならない」というデフォルトはない
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きれいに財産も分けた

私には「結婚したら一生結婚しなくちゃならない」というデフォルトがありません。彼女が子どもを産むかどうかを悩んでいたときも、「結婚は何歳でもできる。子どもは、自分で産みたいならタイムリミットがある。そうでなければいつだってできる」とアドバイスをしました。娘はすごく気が楽になったようです。周りの若い人たちに比べて、私の娘は焦りがなく、ゆっくりと生きている。バランスのとれた生き方をしているなと思います。

30年以上も結婚をしていれば家族です。だから私は、離婚した途端に憎しみあって「もう二度と会わない」という人たちが理解できません。子どもの幸せを考えれば、喧嘩して離婚することは避けたほうがいい。

私と元夫は、きれいに財産も分けました。私が駐在妻として元夫に同行していた期間の退職金は、その半分を私の退職金としてもらいました。ただ、自分が同行しなかった赴任先の期間分の退職金は受け取りません。

家族も一つの会社でビジネスだと思えば、財産で揉めることはないと思いませんか? 私たちの場合は「家族に何を貢献したのか」「何を一緒につくりあげてきたのか」を基準にして財産を分けました。彼が親から相続するものは、私とは関係ないので一切受け取りません。

格好悪い生き方はしたくない

家具は、元夫に「どれがいる?」と尋ねて、彼が欲しいものは彼に譲り、それ以外の大半は私がもらいました。娘や家族の思い出の品は私が預かっています。生きる上で、格好悪いことをしたくないじゃないですか。鏡で自分の顔を見たときに「嫌な人になったな」と思いたくないので、淡々と分けました。

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生きる上で、格好悪いことをしたくない
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義理の家族への離婚の報告は、彼がしたかもしれないけれど、私は知りません。だって私が結婚していたのは夫で、家族と結婚したわけじゃないから。ただ、義理の家族へ会いに行かなくなっただけです。ただ、娘が一時帰国するときは「おばあちゃんに会いに行ってね」「ちゃんとお土産を買ってきてね」と言います。

幸せな結婚を目指しつつ、円満に離婚する準備も

私が病気になったり、交通事故にあったときの緊急連絡先は、いまだに元夫です。だって離婚しても娘の父親ですよ。娘が日本にいれば緊急連絡先は娘にするけれど、彼女は米国にいるから、元夫に仲介してもらいます。離婚したからといって、他人になるわけがないんですよ。

娘も元夫と連絡を取りあっている

娘と元夫も、私ほどではないけれど頻繁に連絡を取っています。私も、元夫の誕生日など、用事があるときは彼と話します。だって家族ですから。男女の関係は終わっているかもしれないけれど、親としての関係は続いているんだから。

元夫にはパートナーがいるので、そこは配慮します。パートナーとの面識はないけれど、彼に電話をするときは、事前に「いま電話していいですか?」と尋ねます。

私自身は、もう誰かのスケジュールに合わせて生きるのは嫌。今の自由は変えられない。唯一、私が合わせたい相手は娘ぐらいなので、パートナーを欲しいとは思いません。

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熟年離婚を迷っている人にメッセージを送るとしたら、「離婚は決して悪くない」ということ。離婚=失敗でもありません。ただ、もし離婚をしたいなら、よほどの理由がない限り、時間をかけてでも円満な離婚を目指すことをすすめます。

一番格好悪いのは、離婚する気がないのに愚痴を言う人

もし相手が「離婚したくない」といえば、そういう選択肢もあるかもしれない。人生後半の夫婦は、争いごとをしないほうがよい。お互いに妥協できるなら妥協して、妥協できないなら離婚する。もし、ギクシャクしながらも夫婦で添い遂げたいなら、それもいい。ただ、「自分が選んだ道なら文句を言うな」と思います。

一番格好悪いと思うのは、妥協しながら文句を言う人です。「妥協するなら歯を食いしばって、やってよ」と思います。女友達と集まると、必ず愚痴を言い始める人がいます。でも私は「愚痴を言う暇があったら改善したら? 改善する力がないなら我慢すれば」と感じます。そういう時は10分間だけ愚痴を聞くけれど、それ以上は勘弁。あなたはそういう格好悪い人になりたいですか?

◆薄井シンシアさん

薄井シンシアさん
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1959年、フィリピンの華僑の家に生まれる。結婚後、30歳で出産し、専業主婦に。47歳で再就職。娘が通う高校のカフェテリアで仕事を始め、日本に帰国後は、時給1300円の電話受付の仕事を経てANAインターコンチネンタルホテル東京に入社。3年で営業開発担当副支配人になり、シャングリ・ラ 東京に転職。2018年、日本コカ・コーラに入社し、オリンピックホスピタリティー担当に就任するも五輪延期により失職。2021年5月から2022年7月までLOF Hotel Management 日本法人社長を務める。2022年11月、外資系IT企業に入社し、イベントマネジャーとして活躍中。近著に『人生は、もっと、自分で決めていい』(日経BP)。@UsuiCynthia

撮影/小山志麻 構成/藤森かもめ

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