
ライター歴45年を迎えたオバ記者こと野原広子(66歳)。10月下旬、人生初めての講演会を開催した。大勢の人の前で話すのは初めて。どんな準備をして臨んだのか? オバ記者が振り返る。
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1か月、人前で話すコツを聞きまくった
ついこの前までだらだらと暑い日が続いたと思ったら一転して晩秋の気候。かと思えばまた夏日! 気温のギャップが激しい中、私もいろいろな上がり下がりに翻弄された秋だったの。
生まれ故郷で講演会を開催していただいてね。その準備にガッツリ1か月、人前で話すコツを体験者から聞きまくったわよ。

「とにかく万全なスピーチ原稿を作ること。それを少なくとも100回は練習して頭に叩き込むことだね」と言ったのは広告会社でプレゼンのコツの講師をしている Kさん。彼に言わせたら人に話し上手も話下手もなくてどれだけ準備に時間をかけるかなんだって。
「練習は鏡の前でするといいよ」とも。
それでも本番が近づくにつれて気もそぞろ。それを仲良しの舞台女優のミナに訴えると、「私はできる!って舞台に上がる前に言い聞かせるのよ。これ、シンプルだけど効くよ」と。それでいざステージにあがったらどうするか。「客席の人とアイコンタクトをとること」と教えてくれたのは若きビジネスアドバイザーのTさんだ。

こうしてさまざまな人の力を借りて講演会に臨んだら、緊張どころか次から次に話したいことが浮かんできた。平日の午後だというのに想像以上の人! サイン会には長蛇の列ができたりと、それはそれは天にも登るような体験をしたの。と、ここがピークで、問題は終わった後。
“丼もの健康法“?
何でも初めてのことはそう。要領がつかめないから、本人はリラックスしているつもりでも変なところに力が入っていたのね。それで気持ちはふわふわ、体の芯がずぶずぶで、寝ても寝てもまだ眠い。
こんなときはどうなるかというと、主食、汁物、主菜、副菜を揃えたちゃんとしたご飯が面倒くさい。作るのはもちろんだけど、誰かが作ったものを並べてくれたとしても口を動かすのがしんどいんだよね。かといってお腹はいつも以上に空くというチグハグさ。

そうそう。私の健康法のひとつに頭に浮かんだもの、すごく食べたいものは体が欲しているから食べるべし、というのがあるのね。で、講演会の後の一週間、何が食べたいかというと、ズバリ丼ものよ。

講演会の翌日と翌々日は、小学生の国会案内のアルバイトだったのね。体はそれどころじゃなかったけれど、ま、仕事だし、子供たちが後々、ニュースを見て「あそこに行った!」と思えるようにと、テレビの中継のポイントで足を止めて説明したりして、ついつい張り切っちゃう。
で、案内と案内の合間のランチは私にご褒美で、衆議院会館の地下食堂で特上うなぎ重を注文したんだけどね。ここでちょっとした事件(?)が起きたのよ。まあ、聞いてちょうだいな。

今年7月に食べた特上鰻重は3000円。それが値上がりして3300円になったという説明は聞いたのよ。それでも「ええい、矢でも鉄砲でも持ってきやがれ!」の心境でオーダーしたら、あれ? あれあれ? 鰻2枚が1枚になり、副菜もお新香もなし。
電車で日帰り温泉の旅へ
2日目はアルバイトを早めに切り上げて、今度こそは本気で体を癒したくて、ひとり温泉へ。目的地は埼玉県、東武動物公園の日帰り温泉『雅楽(うた)の湯』で、「温泉もいいけれど食事がおいしい」という評判を聞いていたの。
それプラス、乗り鉄の私の目当ては夕方から夜にかけてだけ走っている東京メトロTHライナーに乗ること。秋葉原から東武動物公園まで690円の乗車券のほか690円の指定席券がないと乗れない、地下鉄から直通の中距離電車って、それだけで萌えない?
こうしてたどり着いた『雅楽の湯』は疲れた身体を癒すに最高な温泉でね。広い露天風呂に心地いい夜風が吹いて、しばしうたた寝の気持ち良さったらない。

さてさて、お風呂の後は評判の食事!さんざん迷ったあげく私が注文したのは、カツ丼でした。いくらなんでも、と思ったのよ。前日に鰻重で翌日はカツ丼って、部活少年じゃないんだからさ。ここは66歳らしく軽くお蕎麦にしようよと、私の中の理性は言うんだけど、その倍くらいの大声で「カツ丼食わせろ」と、私の中の野性が叫ぶんだよ。さすがにご飯は4分の1くらい残したけれど、しかしおいしかった!
そしてシメは『富士そば』
そんな丼シリーズのしめは、秋葉原の『富士そば』の春菊天そばに長ネギ追加。これをすすったらすっかり憑き物が落ちて、気がつくと体も食事も平常通り。こうなるまでに丸2週間、ジタバタしたね。

思えば日常って感情が揺さぶられることが少ないからいいんで、天に登るようなうれしいことは慣れてないと後が大変。手足がバラバラに動く壊れたマリオネットみたいになるなんて、これは誰も教えてくれなかったわね。
◆ライター・オバ記者(野原広子)

1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
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