話が合わないと感じる人には「共感」を
世の中にはたくさんの人がいて、それぞれ意見を持っています。そのため、何気ない雑談のなかでも、「なんだか意見が合わないな」と感じることがあると思います。そんな時には、真っ向からぶつかって相手と意見を戦わせるのではなく、とりあえずの「共感」を示すのがおすすめです。ここでいう共感は、相手の意見に賛同することではなく、相手の意見を受け止めたという、サインとしての共感です。
「無理に相手の意見に賛同する必要もないですが、その場で反論する必要もありません。いろいろな環境で育った人が、いろいろな意見を持ったまま、一時のおしゃべりを楽しむ。それが雑談です」
語尾を伸ばして共感を示す
共感を示すときのおすすめの方法は、語尾を伸ばすこと。その際、「そうですねぇ~」と伸ばしきるのではなく、「そうですねぇ」と小さく伸ばす程度にとどめるのがポイントです。
「たとえ、相手と意見が合わなくても、『そうですねぇ』と答えていれば、共感を表現できます。自分の本当の意見は、もっと仲良くなってから言い合えばいいのです」
「わかります」の返答で共感を示す
語尾を伸ばす方法のほかにおすすめの共感の示し方は、「わかります」という言葉を使うこと。「人は、話しながら『私の言っていることが、相手に通じているだろうか』と、常に心配しています」とひきたさん。だからこそ、「わかります」という言葉は、話し手の心配を解消しつつ共感を示すことができる、非常に便利な返答です。
「ただ、多用しすぎは注意しましょう。あまりにくり返すと、『ほんとに聞いてるの?』と思われかねません」
長引いた雑談を終わらせるコツ
話し始めるのに苦労しても、一度始めるとどんどん新しい話題に移ったり、元の話に戻ったりして、なかなか終わらないことのある雑談。そろそろ雑談を終えたい、と思っていても、相手が気持ちよく話しているのを切ることに罪悪感を感じてしまい、いつまでも雑談に付き合ってしまうという人もいるのではないでしょうか。
しかし、「基本的に話を切るのは悪いことではありません」とひきたさん。話を切るための最初のポイントは話を終わらせることに「申し訳なさ」を感じないことだと言います。
「雑談のキホンは、お互いに気持ちよくしゃべれることなので、そんなふうに思ってしまうと相手の話をただ聞く係になってしまいます。そうなってしまうと、それはもう雑談ではなくなってしまいます」
自分のせいにして話を切り上げる
雑談を切り上げるときのポイントは「話が長くなった責任は、私にある」と相手にアピールすること。例えば「面白くてついつい聞き入ってしまい、こんな時間になってしまいました」という言い方をすると、あくまでも自分のせいで話が長くなったということを伝えることができます。
「そのうえで、『もっとお話をお聞きしたいのですが、ちょっと時間がなくて』と言えば、相手も事情を察し、嫌な顔をしないでしょう」
心に残った気持ちでフェードアウト
もう一つの上手な話の切り上げ方は、「その雑談で心に残った気持ちをひと言で表す」という方法です。例えば、「お会いできてうれしかったです」、「楽しい時間でした」、「ただただ、驚きの連続でした」といった言葉を最後に伝えること。これだけで、それまでの雑談の内容が、うれしかったり、面白かったり、楽しかったり、驚きの連続だったという印象が残ります。
「人は、別れる瞬間の相手の顔、態度、言葉、しぐさ、印象をよく覚えていると言います。ならば、話の最後には、きっちりと相手に好印象を残しましょう」
◆教えてくれたのは:コミュニケーションコンサルタント・ひきたよしあきさん
大阪芸術大学芸術学部放送学科客員教授。早稲田大学法学部卒業。博報堂に入社後、クリエイティブディレクターとして数々のCMを手がける。政治、行政、大手企業などのスピーチライターとしても活動し、幅広い業種、世代の価値観、世代間のギャップ、言葉遣いの違いなどを分析、コミュニケーション能力が高まる方法を伝授。著書に『雑談が上手い人が話す前にやっていること』(アスコム)、『5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』(大和出版)など。https://smilehikita.com/