「彼、ホンマにええ歌を歌うよな」
私はしばらく、もんたよしのりさんの歌声を聴いていなかった。
それでも、もんたさんが急逝していたことが報じられた10月23日、朝の情報番組『めざまし8』(フジテレビ)で谷原章介さんが、「NHK『うたコン』の9月26日の生放送で共演したとき、本番中に僕の肩をぽんとたたいて、ゆずの岩沢さんのことを『彼、ホンマにええ歌を歌うよな』と言ってて」と思い出話をされた時、「彼、ホンマにええ歌を歌うよな」が、すぐに、彼の笑顔としゃがれ声で脳内再生できた。やっぱりすごい声だ。
改めて聴き返すと、私は歌手ではないけれど、それでも、もんたよしのりさんの声は聴いていて、猛烈に羨ましくなる。心配になるほどしゃがれているのに、低くも高くも広く響く声。セクシーなのにカラッと乾いている声。言葉が伝わる声。記憶に残る声。
ホンマにええ声してるよな。
もう歌声が聴けないとわかってはいるのだが、それでも、羨ましくてたまらない。
そして、この原稿を書いている途中、大橋純子さんの訃報が届いた。もう、本当に寂しい。
◆ライター・田中稲
1969年生まれ。昭和歌謡・ドラマ、アイドル、世代研究を中心に執筆している。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)、『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)がある。大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し、『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。他、ネットメディアへの寄稿多数。現在、CREA WEBで「勝手に再ブーム」を連載中。https://twitter.com/ine_tanaka
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