17年間の専業主婦を経てキャリアアップを続ける薄井シンシアさん(64歳)は、無駄が大嫌い。ホテル勤務時代は、丁寧に働く同僚に「自分を安売りするあなたはバカ」と言い放ちました。同僚はシンシアさんと衝突したあと、転職して外資系企業へ。シンシアさんも転職を経て外資系企業に就職。今でも彼女と連絡を取っているといいます。自らを「強引で言葉がきついけれど、敵はつくらない」と話すシンシアさんに、友人との距離感を聞きました。
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「私は、やり方が強引。周りとよく衝突する」
私は基本的に仕事でミスをしません。ただ、やり方がすごく強引なので、周りと衝突することはあります。同僚たちに「シンシアは悪気があってしたわけではありません。よい仕事をしたいだけです」とフォローしてもらうことがあります。
例えば、ホテルで営業担当をしていたときに「ホテルで三味線コンサートを開きたい」という申し込みが入りました。けれども、その日に空いていた会場は結婚式用のチャペルだけ。私は所属部長の反対を押し切って、総支配人の元へ「チャペルでコンサートを開きましょう」と直談判に行きました。このときは「なぜ直接、総支配人に話をしに行くのか?」と反発する人たちに対して、同僚が「彼女はチームとして成功すると思っているんだ」と経緯を説明してくれました。
同僚に「あなたは1万円で売れる人材。バカみたい」と言った
ホテル勤務時代には、ラウンジのマネジャーを務める女性とも、よく衝突しました。彼女はすごくエレガントで仕事もできるので、お客様から人気がありました。彼女のやり方は、いわゆる「日本流のおもてなし」。だからどんな客が来ても、丁寧で優雅な「おもてなし」をしていました。
あるとき、私は彼女に「ちょっと待って。1日は24時間しかないのよ。お金を落とさないお客さんにコーヒーを出して、延々と話し相手になるのは違うんじゃない」と言いました。すると彼女は「でも、お客様だから」と言い返します。
私は「お客様の定義が違う。お客様というのはホテルにお金を落としてくれる人でしょ」と言い、しまいには彼女に呆れて「あなたは自分の価値すら、わかっていない。あなたは1万円で売れる人材なのに100円ですら売れていない。バカみたい」と言い放ちました。
それでも彼女との友情は続いています。その理由は、大事なお客様が来ると、必ず彼女が働くラウンジへ連れて行き、「ここがホテルの一番の宝物のスペース。彼女が仕切っています」と客観的に彼女のことをほめるから。
それを続けるうちに、彼女も少しずつ私のことを理解したようで、「シンシアはすごく言葉がきついけれど、やることはちゃんとしてくれる」と考えるようになったみたいです。
パニックになった同僚に「もう予約を取っちゃった」
彼女とはEUの団体客をめぐって対立したこともあります。桜の季節に2週間ほどEUから50人ほどの客がホテルへ宿泊したことがありました。普段、彼らは別のホテルを利用するけれど、たまたま満室だったので、うちへ来た。私は彼らに「うちのホテルに一度泊まったら、二度と〇〇ホテルには戻れませんよ」と言って仕事を引き受けました。
同僚たちは「そんなことを言っていいの?」と慌てたけれど、私には自信がありました。私たちのホテルには自慢の「クラブラウンジ」があり、彼女がマネジャーをしているからです。50人が2週間滞在するのは大変だとわかった上で、私は彼らに「クラブラウンジを利用できます」と宣伝しました。
すると早速、マネージャーの彼女から「何を考えているの? 出来るわけがない」と怒りの電話が入りました。パニックになっているわけ。私は「もう予約を取ってしまいました。あなたたちの力を信じて取ったんだから、何とかして」と言って電話を切りました。彼女は相当に頭に来たと思いますが、結果的になんとかなりました。彼女たちは、そこで初めて自分たちの実力に気づいたのかもしれません。