健康・医療

《家族だからこそ苦しい…》「老老介護」を楽にするには「しすぎないこと」、無理せず続ける4つのポイントを専門家が指南

介護と書かれたハート
介護の4つのポイントをプロが解説
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大事な家族だからこそ自分が介護したい。そう思っていても、段々と負担が大きくなり、追い詰められてしまうことがあるのが家族間での介護の問題です。とくに老老介護となると、体力面も大きな壁となります。そこで、『老老介護で知っておきたいことのすべて』(アスコム)を上梓した、看護師で看護・介護ジャーナリストの坪田康佑さんに、老老介護を楽にするポイントと心構えについて教えてもらいました。

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介護が苦しくなるのは「尽くしすぎる」から

長年連れ添った相手だからこそ、大事な家族だからこそ、自分が支えになりたい。そんな思いから始めた介護も、最終的にはすべてを投げ出したいと思うような状態になってしまうことがあります。

「仲睦まじい夫婦、愛情が深い家族であればあるほど、思いやりの気持ちが強い人であればあるほど、時間の経過とともに苦しむケースが多かったのです」(坪田さん・以下同)

思いやりによって疲れてしまう

相手のためにあれもこれもと頑張っていると、いつしか疲れてしまい、自分だけが大変な思いをしているように感じられてしまいます。さらに、そんな状態で介護をしていると、介護をされる側も相手にきちんと感謝の思いが伝わっていないと感じ、どんどんと噛み合わなくなっていきます。

悩む女性
相手が大切だからこそ尽くし過ぎて疲れてしまう介護(Ph/photoAC)
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「思いのすれ違いの中で、互いが見返りを求めてしまい『自分は相手をこんなに思いやっているのに』という、いわば『思いやりの一方通行』になっている例を数えきれないほど見てきました」

介護は周りの人の力を借りていい

介護を周りに頼ることは「思いやりのない行為」でも「薄情な行為」でもないと坪田さんはいいます。むしろ、介護や看護のプロに委ねたほうが、要介護者の本人にとってよりよい状況に改善できることも多くあるそうです。

サポートと書かれたハート
介護では周りの手も借りること(Ph/photoAC)
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「介護の目的は、介護を受ける方が、自分らしい生活を営めるようにすることです。この原点に立ち返れば、周囲や地域の方たち、介護サービスの力を借りることが『思いやりを減らすことにはならない』と思えるのではないでしょうか」

老老介護を楽にする4つのポイント

坪田さんは、とくに老老介護では「しすぎないこと」が相手のために重要だと言います。要介護と言っても、状態は人それぞれであり、自らできることがまだまだたくさんある場合もあるからです。

自分でできることにまで手を差し伸べてしまうと、要介護者の自分で体を動かす機会を奪うことにつながります。その結果、筋力や気力が低下し、「要介護者が自分でできないこと」を増やしてしまう可能性があります。

「老老介護のポイントは、要介護度を目安にしながら、たとえゆっくりでも本人のペースでできることはやってもらい、運動機能や認知機能の低下を防ぐことだといえます」

改めてお互いを知り、尊重する

では、具体的に、老老介護における苦労や負担を減らすにはどうしたらいいのでしょうか。「私は4つのポイントがあると考えています」と坪田さん。その1つ目が「お互いを知ること」。

そのためには、介護をされる側がどんなことをしてほしいのか、どんなことはしてほしくないのか、これからやりたいことは何か。そして、介護をする側はどんな介助をしていきたいのか、健康状態は問題ないか、確認する機会を持ちましょう。

「長年連れ添った夫婦や家族であっても、あらためて質問し合うと、意外な一面に気づくことがあるかもしれません。それぞれの思いを尊重し、それぞれにとってよりよい介護のあり方を考えることが、少しでも負担をやわらげることにつながるはずです」

介護という、これまで経験のない局面をともに歩んでいくためには、わかったつもりにならずに、お互いを知ることが大切だといえます。

手を握っている
わかっているつもりにならず、理解し合うことが大切(Ph/photoAC)
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興味のある消費やサービスに挑戦してみる

老老介護を楽にする2つ目のポイントは「挑戦してみること」。介護に関してはさまざまなサービスがあります。初めて利用する時は不安もつきものですが、まずは挑戦して利用してみなければ、自分たちに本当に必要かどうかは判断できません。

「興味を抱いたサービスや商品があれば、まずは利用してみて、自分たちに合うかどうかを吟味してみてください」

閉じこもらずに外に触れる

3つ目のポイントは「閉じこもらないこと」です。在宅で行う老老介護では、必然的に2人で過ごす時間が多くなるため、世間から孤立してしまうことがあります。その結果、介護の悩みや不安などでいっぱいになり、他のことに目を向ける余裕がなくなってしまったり、追い詰められてしまったりする可能性があります。

「2人のイライラを溜め込んだ関係性も、『外』に触れることで、少しはやわらぐかもしれません。閉じ困らず、人と会うことで、家族以外にも相談相手が身近にでき、介護に関する情報やアドバイス、知恵などを共有する機会もきっと広がります」

「困った」と口に出す

4つ目のポイントは「困ったことを『困った』と口に出すこと」です。介護をする中では、困ったことやつらいこと、わからないことなどに直面することが多々あるでしょう。そんなとき、すべて自分で何とかしようと考えるのではなく、誰かに頼ることが大切です。

SOS
困ったときはきちんと「困った」と言うことが大切(Ph/photoAC)
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「介護について相談を受けてくれる人や機関はたくさんあります。家族や友人に言いづらいことがあれば、ホームヘルパーやケアマネジャーが相談に乗ってくれるでしょう。困ったことを困ったと言うことで、周囲や専門家が力になってくれます」

老老介護は事前の備えを

周囲に頼ったり、使える制度をきちんと使ったりすることで負担を減らすことができる老老介護ですが、一方で体の急変などによって、急に介護が深刻になってしまう可能性もあります。

そのために大切なのが、「介護が明日やってくるかもしれない」、「深刻な介護が必要になるかもしれない」という意識を持って備えておくこと。いざというときに誰に何を頼ればいいのか、市区町村ではどんな支援をしてくれるのかなどを知っておくのが重要です。

「現状どうしたらいいのかだけでなく、これからどうなるのか、どういうことが考えられるのかも含めて、未来の知識とノウハウを蓄え、備えておくことがとても大切なのです」

◆教えてくれた人:看護・介護ジャーナリスト・坪田康佑さん

白いシャツにジャケットを着た男性
看護・介護ジャーナリストの坪田康佑さん
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つぼた・こうすけ。2005年慶應義塾大学看護医療学部1期卒業。国際医療福祉大学医療福祉ジャーナリズム分野博士課程在籍。米国Canisium大学MBA取得。ETIC社会起業塾を経て、無医地区への医療提供体制づくりや、問看護師向け雑誌などでの連載、高齢者向け新規事業開発に取り組む。著書に『老老介護で知っておきたいことのすべて』(アスコム)など。

老老介護で知っておきたいことのすべて

『老老介護で知っておきたいことのすべて』(アスコム)

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