行きつけの「回転寿司店」をつくる
これまたある先輩から聞き、ガッテン、ガッテン、と連打したくなったエピソードです。
食欲が落ちたら、行きつけの回転寿司店に行く。
目の前に食べ物が次々出てくるのを見ていると、ふと「食べてみたい」と思い、手が伸びます。1皿食べると、もう1皿食べてみようという気になり、ガリを食べて、次はあら汁も飲もうかという気になる。お寿司だけではなく、デザートも回っていますね。
また、何人かで行っても、自分のペースで食べられることもいいものです。人とペースが同じでなくても気になりませんから、食欲があまりなくゆっくり食べていても、周囲に心配されすぎることはありません。
もちろん、回転寿司でなくても、お気に入りのレストランやお蕎麦屋さんが1、2軒あると、行きさえすれば食べたいものが見つかることがあります。食欲がないとき、「デパートのお惣菜売り場に行って、自分ではつくらないしゃれたお惣菜をちょっと買う」と言った人もいました。
健啖家の先輩の「食欲低下」への楽しい対策。ぜひ取り入れてみてください。
口にするものの「パッケージの裏」を必ず見る
みなさんは食品のパッケージの裏などについている原材料表示や栄養成分表示を見ますか? 長生きする食べ方は、これらの表示に鋭く目を光らせることです。
たとえば「どらやき」なら、原材料表示のトップに「砂糖・小麦粉」とあるものは控えます。ここは「つぶあん」「小豆」などと表示されているものを選ぶのです。
というのも、多く使われているものから順に表記してあります。小豆ではなく砂糖と小麦粉ばっかりのものは安いけれど、それを2個食べるより、高くてもおいしい、本物の小豆がぎっしり入った1個を食べたい。私はそう思いますが、それは、体にもいい選択と言えます。
こまめな間食はおすすめ
高齢期の低栄養を防ぐためには、おやつやデザートは食事を補う間食として、ぜひ召し上がっていただきたいもの。そのときは「本当においしいもの」にこだわるのが◎です。
食事量がとれないときには、こまめに間食を口にしてください。在宅療養をしている人の栄養状態を調べたとき、3食に加え、お楽しみの間食を食べる習慣のある人のほうが、3食だけの人より栄養状態が良好という結果が出ています。
砂糖ばかりとりすぎにならないように、バナナ、焼き芋、干し芋、ドライフルーツ、ナッツ、温泉たまご、魚肉ソーセージ、チーズ、ヨーグルト、小袋シリアル、グラノーラ、栄養補助スナック(ドラッグストアで売っています)なども間食に役立てましょう。生のフルーツを一口大にして冷凍しておくのもいいでしょう。
食べるも、振る舞うも楽しい「行事食」
お正月のおせち料理やお雑煮、節分の恵方巻き、ひな祭りのちらし寿司、端午の節句のちまき、七夕のそうめん……など、昔ながらの「行事食」を食べる習慣も、健全な食欲喚起につながります。
たとえば、お彼岸なら、当日に食事会などがあれば、おはぎを振る舞ってしまいます。ご参加いただく方も、たんまりおはぎをつくって、もってきてくれる人もいます。
そうなると、おはぎ2倍! 60代なのに「あなたはまだ若いからいっぱい食べなさい」などと言われて、お腹いっぱいになります。
でも、おはぎなども人がつくったものは微妙に風味が違って、別のおいしさ。うれしいやりとりです。
こうした行事食は、食欲がないときにも役立つことがあります。子どものころに食べた思い出がある料理などは、「ちょっと食べてみようか」と食指が動きやすいのです。
・「あっさり」がいいとは限らない
また、土用でなくても「うなぎ」は精がつく食べ物というイメージがあって、香りがよくて、食欲が低下している人にも人気が高いメニューです。
食べたくても食べられないでつらそうな人に対して、ついあっさりしたものがいいかと気を遣いますが、逆に「元気になるイメージ」の料理が食べやすいこともあります。
山芋、にんにく、たまご、肉、アボカドなど、一般的に「精がつく」と言われるものをちょっと出して、感想を聞きます。出した品はNGでも、食べ物のことを考えるきっかけになって、食べられそうなものが浮かぶことがあります。過去には、がん闘病中の方に、抗がん剤の合間に何が食べたいか聞くと、「こってりした手羽先」と答えてくれたこともありました。病人にはあっさりしたものを、とは限らないということでしょう。
ただし無理強いはさらに食欲を減退させてしまうことがあるので、さりげなく希望を聞くことができたらいいですね。