
ライター歴45年を迎えたオバ記者こと野原広子(66歳)は一昨年10月、「卵巣がんの疑い」で手術を経験。その後、境界悪性腫瘍と診断された。体調の不安を感じると同時に、最近気になるのが自身の「顔と年齢」のこと。オバ記者が綴ります。
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「66歳」と聞いてすぐに納得する人たち
「えっ、66歳? ウソでしょ!」と私の顔を見て言う人が男女ともにいる。「いやいや、ネットでウソ書けないから」とこのサイトを見せてやろうとスマホを触る私。が、サイトを開くまでもなく、「ああ、そうか」と何やら納得顔になるのがいつものことでね。この数秒の間に何があるのか、気になるんだわ。

そもそも私は自分を若く見せたいという気持ちがない、とは言わないけれどかなり少ない方だと思う。だから年齢を聞かれて「いくつに見えますか?」なんて聞き返したことがない。てか、こんなムダな会話ってある? スッと数字、言えばいいのに、「私って若く見えるでしょ? さぁ、どれだけ若く見えるか言って」と言わんばかり。
「何歳に見えますか?」の答えにぶ然のM子
年齢といえば、忘れられないことがある。自分は歳より若く見えると日頃から自慢している10歳年下のM子とふたりでイタリア旅行に行ったときのこと。どういういきさつかは忘れたけど、ローマの地下鉄の中でM子はまた「私は若く見える」が始まったんだわ。さらに「外国だと日本人は若く見えるから私は20代半ばくらいに見えるかも?」ときた。
「そうねぇ、そうかもねぇ」と、これまでのように聞き流せばいい。わかっていたんだけどなぁ。旅の疲れもあって、つい、「それはいくらなんでも無理だと思うよ」と本心が口から出た。するとM子は「う〜ん、20代は無理でも30代半ばには絶対に見られないと思う」と尖った声で言い返すからムカ〜ッ。私は当時54歳。M子の実年齢は44歳。共に独身だ。
「じゃあさ。彼らにあなたがいくつに見えるか聞いてみる?」と前の席に座っている20代半ばらしき男の子を目で示したら、「聞いて、聞いて」とM子。自慢じゃないけれど私、30年前にちょっとだけ勉強したイタリア語が、ムカつくとなぜか立ち上ってくるのよね。

「すみません。ひとつ質問があります。いいですか?」と私。「はい、どうぞ」とイタリア男。「彼女は何歳に見えますか?」とM子を手で指し示したら、まぁ、なんのためらいもなかったね。「43歳、44歳」 だって。それをおうむ返しにM子に伝えると「うそっ。もう一度聞いてッ」と言うから、「43歳、44歳?」と復唱すると、男の子同士、顔を見合わせて「45歳、46歳、47歳?」と数字を上げていくし。しかも指で空に数字まで書き出した。
ぶ然とするM子に、「ああ、そうか。きっと彼らの母親と近いと思ったんじゃない?」と慰めたつもりだったけど、それきり彼女は私の前で「私は若い」と言わなくなったの。それはよかったけど、そのうち彼女との縁も切れてしまった。
「顔は元気のバロメーター」
で、66歳の私。あと2か月で67歳になる私。毎朝、鏡をのぞくとその日によって「げっ」だったり、「わっ」と思ったり、月に何日かは「おっ」という日もある。この年になると顔は元気のバロメーターなんだよね。
今日一日、さあ、あれとこれをして、できればこれもしたい、なんて前のめりの朝は、それなりいい顔の66歳の顔に見えるし、逆にのそっと起きて鏡をチラ見する日は、10年後の私を予見する顔をしている。いやいや、そんなのはまだ序の口で体調が悪いと鏡、見ないし。それが何日も続いたりするし。
どこが悪いというわけではない。悪いのは天気。気象病というやつでね。最悪は2日後に雪が降るとか、数日後に強風が吹くなんて日がダメ。丸一日、布団から出られない日もある。思えばこういうことって閉経前は年に何回かあったけど、それももう15年以上も前のこと。それが最近、また始まったのよ。悪いことにこういう“落ちた日”に限って、人に嫌なことを言われたり、あり得ない誤解をされたりで、精神的にも叩きのめされたりするんだわ。

背負っているものがない顔?
だけど布団をかぶりながら、歳を重ねるのは悪くないなとも思うのよ。叩きのめされても、めげない(笑い)。老い先を考えたら反論したり、釈明したり、ましてや論破なんてとんでもない。言わせておけ、やらせておけって、横着といえば横着だよね。こちらにやましいことが一点もない誤解は、日常に差し障りがない限り、されっぱなしよ。相手の脳みその中にまで踏み込まないし、それで縁が切れても、まぁ、仕方がないかと思うんだわ。

で、冒頭の話だけど、私の歳を聞いて驚いたあと、「ああ、そうか」と納得顔になる理由が、最近、わかる出来事があった。私より7、8歳年上の男性から、「女の人って子供が中年になったり、思春期の孫がいたりすると、それなりの顔つきになるんだけど、独身の人はたいがい年齢不詳の顔になるよね」と言われたのよ。背負っているものがないと生活感のない顔になるって。
すごく合点がいったけど、それって女として人としてどうなのよ。結論なんか出ないことだけど、最近、冬型の気圧配置で体調が回復してきた私は、ま、いいか、仕方ないかと思う日が多い。
◆ライター・オバ記者(野原広子)

1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
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