“集中”を阻害する要因の多くは自律神経に起因していると話すのは、『自律神経の名医が教える集中力スイッチ』(アスコム)の著者で、順天堂大学医学部教授の小林弘幸さん。自律神経を整える習慣を日常的に実践することで、集中を阻害する要因が改善され、集中力アップにつながるのだそうです。どんな習慣を身につけるべきか、詳しく教えてもらいました。
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集中できない理由は「自律神経」にある
誰しも手に入れたいと思う集中力。体調不良やストレスなど、集中を阻害する要因はさまざまありますが、すべてを1つずつ解決していくのはなかなか困難です。しかし、集中力を高めるためにまず意識するのは1つだけでいいと小林さんはいいます。
「それは『自律神経のバランスを整えた状態を保つ』ことです。実は集中できないほとんどの要因は、突き詰めていくと、自律神経に起因しています」(小林さん・以下同)
自律神経が乱れている状態とは
自律神経とは、内臓の働きや代謝などをコントロールするための身体の機能で、人間が活動をしているときに活発になる「交感神経」と、リラックスしているときに活発になる「副交感神経」があります。交感神経と副交感神経には波があり、日中は交感神経が高まり、その後夜が近づくにつれて副交感神経が高まっていきます。
「自律神経が乱れている状態とは、この大きな波のリズムが狂っていること。たとえば交感神経の波が異常に高いレベルで一日中続き、副交感神経の波が一日中低いままだと、心や体が休まりません。エンドレスでアクセルを踏みっぱなしの状態なので、いつしか心や体に疲れが溜まり、不調をきたします」
「変化」で乱れやすい自律神経
自律神経は変化が苦手で、特に過度のストレスなどがかかるとリズムが崩れやすくなります。ストレスというとネガティブなものを思い浮かべがちですが、昇進や出産などの「おめでとう」と声をかけてもらえるようなポジティブな変化も自律神経を乱れさせることがあるそうです。しかし、突発的な出来事や変化を完璧に避けることはできないため、日常では変化のない規則正しい生活を送って自律神経を保つことが大切だと小林さんはいいます。
「また、そういった生活を心掛けておくことによって“ここぞ”というときに集中力を発揮できるようになるのです」
自律神経を整える習慣【1】睡眠
自律神経を整えるための最大のポイントは「睡眠」。ほかの方法で自律神経を整えようとしても、睡眠が悪ければ不調に陥ります。
「しっかりとした睡眠をとり、副交感神経を上げ、交感神経が優位だった日中の心や体の疲れをとることで、初めて自律神経のリズムは保たれるのです」
光断ちで睡眠の質を上げる
睡眠の質を上げるために小林さんがすすめるのは「光断ち」をすること。眠りにつく1~2時間前には部屋の照明を暗めにし、テレビやスマホなどの光を見ないようにします。そして、就寝直前に電気を完全に消して眠るようにしましょう。
「朝は窓から入ってくる光で目を覚ます。もしくは起きたあとにカーテンを開けて朝日を浴びるのが理想的です。朝日を浴びた時間から自律神経は活性化し、日中に活動できる状態にしてくれます」
体温に気をつかうのも重要
睡眠の質を上げるもう1つのポイントは体温に気をつかうことです。副交感神経は体温が下がったときに活性化しやすいという性質があるため、就寝の1時間30分ほどまでにお風呂に入り、40度くらいのぬるま湯で、全身浴なら5分、半身浴なら15分ほど浸かって体を温めるといいそうです。
「その後、1~2時間かけて体温が下がってきたタイミングでやってくる眠気をうまく利用することで、良質な深い眠りにつくことができます」