
13時間に及ぶ大手術を受け、直腸がんステージⅢBから生還した女優の立花理佐さん(52歳)。がん自体は寛解したが、その後はうつ症状に苦しみ、4年近く仕事に復帰することができなかった。立花さんが、そんな苦しい状況を克服するまでを振り返った。
毎日泣いて、死にたいと繰り返していた
2020年に直腸がんと診断され、腸や子宮などの摘出手術を受けた立花さん。1か月の入院を経て帰宅し、傷は順調に回復していったが、長い間うつ症状に悩むことになる。
「痛みが治まってきて体は元気になっていくんですけど、心がついていけなくて。外に出ようと思えないし、仕事をする気にもなれない。すごく顔がむくんで、おばあちゃんみたいな顔になっちゃったんですよ。だから鏡を見るのも嫌でした。生きる希望が見つからず、毎日、死にたい死にたいって繰り返していました。

旦那さんに“子供の前で言うな”って叱られて、そんな自分にも落ち込んで……。退院してから泣かない日はありませんでした。毎日泣く日が更新していくから、新記録だな、って自分を皮肉ったりして。でも、自分ではどうにもならなくて苦しかったです。
せっかく治してくれた先生にも“死にたいです”って言っちゃって。言った瞬間に“失礼なことを言ってすいません!”と謝りました。先生は“大丈夫ですよ”と言ってくれたんですけど。本当に情緒が不安定でした」
遊びに連れ出してくれた友人たち
そこから抜け出せたのは、長い付き合いの友人たちのおかげだという。
「デビュー時から親友の伊藤美紀や、千葉美加、西村知美ちゃんとかが声をかけてくれたり、遊びに連れ出してくれたりしたんです。初めは外に出ると気分が悪くなってしまって、素直に“気持ち悪い”と言える友人としか外出できませんでした。外に出ることに慣れてくると、少しずつ気持ちが浮上していきました。

そうしているうちに、昨年10月に3年目の検診を受けることになりました。そこで再発もなく順調に回復していると先生に言われたんです。再発率が今までよりも下がるので、定期検診は半年に一度になります。すごくホッとして、生きる希望が湧いてきました」
誰でもがんやうつになる。自分の体験を広く伝えていきたい
その1か月後、自身のブログで直腸がんの手術を受けたことを告白した。
「がんについてブログを書いたのも、友人のすすめでした。すごく元気な理佐でもこうなるんだから、誰だってがんにもうつにもなる可能性があるんだって。情報を発信して、たくさんの人に知ってもらったほうがいいよって言われたんです。実際に友人たちは検査を受けに行って、何人かに初期のがんが見つかったそうです。理佐のおかげだって報告してくれました」
ブログ読者からの反響も大きく、コメント欄にはたくさんの励ましの言葉や、同じ経験をした人からメッセージが寄せられた。

医療関係者からの千羽鶴も
「コメントを読んで励まされました。嬉しくて泣いちゃった。何回も読み返しています。なかなか返事はできないんですけど(苦笑)。私のブログを見た医療関係の方が千羽鶴を送ってくださったりもして、思い出すだけでまた泣きそうです。手紙がついていて、つらかったでしょ、って。胸に響きました」
昨年までは睡眠薬などの薬を服用していたが、いまでは薬に頼る必要はほぼなくなった。
「友人と散歩を始めたんです。毎朝1時間ぐらい、1万歩ほど歩いています。引きこもっている間に太っちゃったので、ダイエットとメンタルのために(笑い)。朝日を浴びながら爽やかな空気を吸って、楽しくおしゃべりして歩いているうちに、メンタルの薬をのまなくてよくなりました。まだ少し睡眠導入剤に頼ることもあるのですが、それも手放せそうです」

昨年12月には、3年8か月ぶりに仕事にも復帰。無気力だったころが嘘のように、今はやる気に満ちている。
「歌を歌いたいし、もっと仕事も頑張りたい。それに、がんやうつ病について啓蒙する活動もしたいですね。母ががんで亡くなっているので、その姿を間近で見ていたのに、自分が経験しないと分からないこともある。自分の体験を伝えて行きたいと思います」
◆歌手・女優・タレント・立花理佐さん

1971年10月19日生まれ。大阪府出身。1986年にロッテのCMオーディションでグランプリを獲得。1987年1月放送の『毎度おさわがせしますⅢ』(TBS系)にて主演を務め、同年『疑問』で歌手デビュー。現在はラジオ、バラエティーでも活躍中。プライベートでは、2000年に結婚、2004年に長男を出産。2020年に直腸がんと診断され、子宮などの摘出手術を行った。https://ameblo.jp/lisalovers/
撮影/浅野剛 取材・文/小山内麗香
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