地産食材への愛があふれるシェフの絶品料理を味わう「モダンベトナム料理~CHILAN」
宮島の対岸、廿日市市にある住宅街で、ご夫婦で営むベトナム料理のお店「CHILAN」。オープンキッチンを囲むように配された席はわずか8席。基本は木・金・土曜日のランチ営業で、それ以外は貸し切りに(ランチ4名~、ディナー6名~)。メニューもシェフおすすめ料理7品にワインのマリアージュ(※ノンアルコールも可)というワンコースのみ。
オーナーシェフのドグエン・チランさんは、RED U-35 2021で、岸朝子賞を受賞するなど、今注目の若手料理人。東京生まれの東京育ちですが、ソムリエである藤井千秋さんと結婚、藤井さんの故郷である広島県廿日市に移り住み、3年前に「CHILAN」を開業したといいます。
広島を中心とした瀬戸内の、知る人ぞ知る食材、生産者さんの思いのこもった食材をテーマに、修行したフレンチの技法を用い、両親がベトナム人というルーツから、コース仕立てのベトナム料理を提供するユニークなスタイルです。
訪れた3月は、牡蠣の最盛期。でも「牡蠣を提供するお店は広島中にたくさんありますし、王道ではない、もっと違う食材も知ってほしい」と、魚料理は牡蠣ではなく、広島サーモン(ニジマス)やヒレナマズを使った料理が登場。これからのシーズンのおすすめ食材を伺うと「その時々に届く食材を活かす、素材ありきの料理なので(予めは決めていない)」との答えが返ってきました。
また前菜に鴨のペーストが出た折には、女性ひとりで養鶏を営む「ふぁーむbuffo」のものであること。鶏の餌には一般に黄身の色を濃くする安価な輸入トウモロコシなどは使用せず、地元産の野菜や穀類を発酵させた餌で育てていること。何もない場所を開墾して養鶏を始めたパワフルな女性であることなど、生産者の背景や思いまで、一つのお料理から話が膨らみ、世界がどんどん広がります。
他方、旦那様である藤井さんはワインのコンサルティングや商品開発などの仕事を持ちながら、CHILANではソムリエとしてお店に立ち、料理にあうお酒……ナチュラルワインを中心に、それぞれのお客様との対話を大切にしながらサーブ。産地やワインの作り手、お料理との相性など、多方面にわたる話に、好奇心がむくむくと沸き上がります。
お客様同士も自然と言葉を交わす、料理と会話を楽しむ、心地よい時間が過ごせるとあって、首都圏から通うひとり旅のかたも多いそう。
お店の営業をランチメインにしているのも、「子育て中なので子どもとの時間を大切にしたい」という思いから。ご夫妻の生き方や関係性も素敵で、共感することしきり。「もともとはパティシエ志望だった」というシェフのデザートまで約2時間、気が付けばお腹だけではなく、気持ちも満たされます。
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「ガストロノミー」というと敷居が高く感じられますが、広島を舞台に旅をして改めて感じるのは「人」が主役だということ。地産地消で食を楽しむのはもちろん、体験をしたり、会話を一歩踏み込むことで、関連する多くの人の営みや思いを知り、知見が広がります。
春からの瀬戸内海は景色も一段と華やかになり、広島では鮮度の問題から地元でしかなかなか味わえない「小いわし」や「生しらす」なども旬を迎えるといいます。気候も良い季節、注目の「ガストロノミー」をテーマに、ぜひ旅へでかけてみてくださいね。
■おいしい!広島 https://oishii.hiroshimakensan.org/
◆教えてくれたのは:旅行ジャーナリスト・村田和子さん
旅行ジャーナリスト。「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」をモットーに、旅の魅力を媒体で発信。宿のアドバイザー・講演なども行う。子どもと47都道府県を踏破した経験から「旅育メソッド(R)」を提唱、著書に「旅育BOOK~家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ(日本実業出版社・2018)」。現在は50歳を迎え、子どもも大学生となり、人生100年時代を楽しむ旅を研究中。資格に総合旅行業務取扱管理者、1級販売士、クルーズアドバイザーなど。2016年より7年間、NHKラジオ『Nらじ』月一レギュラーを
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