
ライター歴45年を迎えたオバ記者こと野原広子。雑誌などでの執筆を中心にライター業をしながら、67歳となった今でも続けているのが、国会の議院事務所でのアルバイトだ。とくに、小学生のグループや知人に国会議事堂を案内するのがライフワークの1つ。その醍醐味について綴る。
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3月は1年で体調がいちばん落ちる
「今年ほど寒い3月ってなかったと思わない?」
先日、友達のAさんが電話でそんなことを言い出したんだわ。別のメル友は3月最後の日曜日に「今日は花見です。咲いてないけど」と彩に欠けた宴会の写真を送ってきた。そして3日後には朝から地震速報って、なんか落ち着かない感じ。
落ち着かないといえば、うちの近所の橋には水道管がかかっていて、毎年3月になるとカモメが鈴なりになって止まっているんだよね。神田川の河口が近いからだけど、それが今年に限って一羽も見かけない。やっと羽を休めている数羽を見かけたのは4月4日よ。

毎年、3月は天候が不安定でおかげで私の体調が1年でいちばん落ちるときだけど、それにしても今年はひどかった。風邪をこじらせて半月はベッドからなかなか起き上がれなかったもんね。これが67歳という年齢のせい? それとももっとヤバいこと? 今年の1月に大学病院で「すい臓に6mmののう胞があります」と告げられて、生きている限り半年に一度、経過観察をすることになった身。その“のう胞”とやらがいきなり成長しだした? なんてことも考えちゃう。

知り合いの家族を国会案内
が、そんなクヨクヨも長く続かないんだよね。私が自分をつくづくおめでたい性格だなと思うのは体調がちょっと上向くと身体の心配がきれいさっぱり消えてしまうこと。それでまた風邪をぶり返したりしたんだけど、それも1週間前まででね。4月に入ったら朝のお茶の味がするじゃないのよ! それまで全く味がしないか、薄くしか感じなかったかだったんだよね。だからなんかもうそれだけで嬉しくて、体の芯から力がみなぎってきたわよ。
体調が戻ってうれしかった理由はそれだけじゃないの。火曜日と水曜日と2日続きで国会見学の約束をしていたんだよね。どちらも知り合いの家族連れで、数か月前から「いつか野原さんの案内で国会見学をしたいです」と言ってくれた人たちなの。それなら子供が春休みに入ってからと決めたから、どうしても実現したかったんだよね。
バイトでやっている国会案内はほとんどが小学6年生のグループで、学校から修学旅行や社会科見学で来ているから、私もどこか杓子定規。でも知人の子なら自由に話せるし、そのつど感想も聞ける。それをやってみたかったわけ。思えばこういう機会ってこの6年間、なかったんだよね。

で、まずやってきたのがM君(50歳)とその妻と中1のS君と小2のN君の一家だ。M君は学生時代、女性セブンでバイトをしていた男の子で、まぁ、骨惜しみせずによく働くんだわ。それでバイト期間が終わるという時に「私のアシスタントをしない?」と声をかけたわけ。青山の住まい兼事務所に毎日のように通って原稿を書いていたのが昨日のことのようだ。当時は蚊とんぼのように細かった青年だったけれど、今や2人の男の子のお父ちゃん。
そのM君とは数年前にFacebookでつながって「いいね」の関係になったけれど、会うのは27年ぶりだ。それなのに何だろう。奥さんのJさんもふたりの子供たちも初対面という気がまるでしないんだよね。ずっと前から家族ぐるみで付き合っていた感、半端ないの。
誰でもできる「国会見学」
翌日、案内したKさんとお嬢さんのKちゃん(中1)もそう。KさんとはFacebookで知り合って会うのはこの日が初めてだ。なのに女3人、会うなり楽しいんだよ。同業のKさんと私はオタク気質なところがよく似ているから気が合うだろうなと思っていたけど、13歳のお嬢ちゃんも笑いのツボがいっしょだったの。
でね。意外と知られていないんだけど、国会議事堂はほぼ1年中、誰でも無料で見学できるんだよ。何人かグループをつくって地元選挙区の国会議員の事務所に「見学をしたい」と連絡するのもいいかもね。

実は私もバイトをする前に2度、国会見学をしているんだよね。一度目は小4の時で議員会館の職員をしていた親戚のお姉さんが案内してくれたの。2度目は週刊誌の企画で小泉進次郎議員の追っかけをした10年前。政治キャスターの佐野美和さんがある議員秘書を紹介してくれて、とても親切に国会議事堂の隅々まで案内してくれたの。
その時、聞いたんだよね。「議員の秘書さんってみんなこんなに親切に案内してくださるんですか?」って。そうしたら「選挙区からいらしたらこの程度のことはほとんどの議員秘書はしますよ」とサラッとおっしゃったの。
美しい建造物を見てほしい
その時はピンと来なかったけれど、6年前から議員事務所でバイトをするようになってしばらくしたら、私も友人から「案内して」と言われると迷いはないよね。理由はふたつ。ひとつは私が惚れているこの美しい建造物を見ていただきたいから。もうひとつは、来客の反応をリアルタイムで見たいから。
なんたって国会議事堂の異空間さは他にないって。国会議員はもちろんだけど、国会議事堂を守る衛視さん、新聞記者、霞ヶ関のお役人、陳情にきた地方の県会議員、それから議員秘書などなど、ふだんの生活では絶対に会うことがない人たちばかりが行き来しているんだよ。通路を歩きながらその人たちの見分け方などを話すとみんな目を見開いて驚いてくれる。案内する私もこんなに楽しいこと、ないって。

とはいえ、それもこれも体力と時間に余裕があるとき限定の話でね。また「オバの案内、最高に楽しかったです」と満面の笑顔を見たいけど、さていつまでできるのかなと、ふと弱気が出るのは67歳という年齢のせい? おお、こわっ。
◆ライター・オバ記者(野原広子)

1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
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