こまめな面談で信頼関係を築く
ネガティブフィードバックを聞いてもらえる人になるためには、部下とのコミュニケーションの「質」だけでなく「量」も増やし、信頼関係を構築することが大切です。心理学的に、接触する頻度が高いほど相手に対する親しみが増すという「単純接触効果(ザイアンスの法則)」があります。月に1回1時間のミーティングを行うよりも、月に4回15分のミーティングを行うほうが、親近感や信頼感は高まります。
「最近はリモートワークやテレワークという働き方が定着してきて、上司と部下が接する時間が減ってきている会社も多いと思います。『たまたま顔を見かけて雑談』という単純接触をする機会が減っているからこそ、短時間でいいので、定期的に1対1で面談の機会を設けることをおすすめしています」
耳が痛い話は「日頃から」「1対1」で信頼関係を構築する
信頼関係を構築するという点では、「期末評価でサプライズを起こさない」ということも非常に重要です。厳しい評価であったとしても、日頃から指摘されていたことであれば比較的受け入れやすいですが、普段まったく伝えていない内容であった場合、「もっと早く教えてほしかった」「自分の行動は今までそんな風に見られていたのか」などと感じさせてしまい、自分の行動への内省ではなく、上司への不信が先に浮かぶことになります。
また、耳が痛い話をするときは、「部下と1対1で話す」ことも大切です。他の人の前で指摘されると、理論的に受け止めるより感情的に納得がいかない状態になってしまいます。
「指摘するときは、会議などが終わった後に『ちょっといいですか?』と残ってもらう、オンラインの場合はミーティングを終わらせて『この後5分だけいいですか?』とメッセージを送るなど、場を区切るのが鉄則です」
信頼関係の構築が難しいときは「課題の分離」をする
部下と上司のどちらかが異動したばかりであったり、会社の方向性が大きく変わり、今まで許容されていた部下の行動を大きく変えてもらわなければならなかったりなど、なかなか信頼関係を構築するのが難しい場面もあると思います。そんなときに覚えておきたいのが、アドラー心理学の「課題の分離」という思考法です。
「課題の分離」とは、「自分の課題」と「相手の課題」に分けること。例えば「厳しいことを相手に伝えるかどうか」は自分の課題であり、「伝えられたことをどう受け止めるか」は相手の課題とみなします。自分が何を言うかということと、相手がそれを聴いて何を感じるかは別問題である、ということです。
「こんなことを伝えたら怒るかな、ショックを受けるかな、嫌だろうななどと考えるだけムダということです。そう考えれば、まずは上司として『可能な限り、事前に関係構築に努める』『そのうえで、伝えるべきことをしっかり伝える』という『自分の課題』に集中して第一歩を踏み出せるはずです」
◆教えてくれたのは:人事コンサルタント・難波猛さん
なんば・たけし。マンパワーグループ株式会社シニアコンサルタント。早稲田大学卒業。コンサルタントとして3000人以上のキャリア開発施策、2000人以上の管理者トレーニング、100社以上の人員施策プロジェクトにおけるコンサルティング・研修等を担当。セミナー講師、大学講師、官公庁事業におけるプロジェクト責任者も歴任。著書に『ネガティブフィードバック 「言いにくいこと」を相手にきちんと伝える技術』(アスコム)など。