歯茎痩せが悪化すると、歯がしみたり抜けやすくなったり、外見が老けて見えたりするなど、さまざまな悪影響がある。女性はホルモンバランスの影響によって歯茎が痩せやすいため、とくに注意が必要だと話す薬剤師の山形ゆかりさんに、歯茎痩せが起こる女性特有の原因と、予防のためのセルフケアや食事、漢方薬について教えてもらった。
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歯茎痩せが起こる女性特有の原因
歯茎痩せとは、歯を根元で支えている「歯槽骨(しそうこつ)」が溶けて、歯茎が下がった状態を指します。歯茎が痩せる主な原因は、乾燥や歯周病などによる口腔内環境の悪化、骨密度の低下、コラーゲン量の減少です。
とくに、歯周病は女性ホルモンと深く関係しており、月経周期に伴い女性ホルモンの分泌量が増えると、女性ホルモンを好む細菌が増殖して歯周病が起きやすくなります。
また、女性ホルモンには骨密度の維持や粘膜の潤いを保つ働きもあるため、女性ホルモンが減少する更年期には、歯槽骨の骨密度低下や口腔内の乾燥(ドライマウス)が起きやすくなるのです。
歯茎痩せの予防方法
歯茎痩せを予防するには、正しいブラッシングや定期検診などを行い、歯茎の健康を保つことが大切です。
歯磨きの習慣を見直す
磨き残しや間違ったブラッシングは、歯茎への負担となり、歯茎が痩せる原因になります。正しいブラッシングやフロスの使用など、毎日のセルフケアがとても重要です。
ブラッシングに力を入れすぎると、歯茎の負担になるだけでなく、磨き残しも多くなります。歯ブラシをペンのように持ち、力を入れずに手首と指先で小刻みに動かし、歯を磨きましょう。
また、歯茎痩せが目立つ場合、歯と歯茎の間の歯周ポケットが深くなっているかもしれません。歯周ポケットには汚れが溜まりやすく、歯石の原因となり、歯石が増えれば口腔内での細菌の繁殖が進んで歯茎痩せを悪化させることにもつながります。歯と歯茎の境目に45度の角度で歯ブラシを当てて磨くことで、歯周ポケット内の汚れにアプローチしやすくなります。
歯間ブラシやフロスも併用して、磨き残しのない歯をキープしましょう。
歯医者で定期検診やクリーニングを受ける
歯茎の状態や磨き残しのチェック、歯石の除去など、自分では難しい部分はプロの手を借りる必要があるので、定期的に歯医者で定期検診やクリーニングを受けましょう。
口腔内の状態によって異なる歯ブラシの大きさや形、かたさ、歯間ブラシのサイズなど、最適なオーラルケア用品や、セルフケアについて相談できることもメリットです。
コラーゲン線維の維持・生成
約60%がコラーゲン線維で構成されている歯茎が痩せるのを防ぐには、コラーゲン線維の維持・生成が欠かせません。
口腔内に細菌が増えると、歯茎のコラーゲン線維が壊れます。細菌の増殖を防ぎ、コラーゲン線維を維持するには、咀嚼回数を増やして唾液分泌を促し、口腔内の食べカスや細菌を洗い流すのが有効です。
また、加齢により増える、必須アミノ酸であるメチオニンを代謝する際に生成されるアミノ酸の一種であるホモシステインは、体内に蓄積されると活性酸素を発生させ、コラーゲン線維をもろくします。
ホモシステイン生成の抑制には、体内でホモシステインの代謝を助ける働きをする「ビタミンB群」が関係しています。ビタミンB群とは、ビタミンB1、B2、ナイアシン(B3)、パントテン酸(B5)、B6、ビオチン(B7)、葉酸(B9)、B12の8種類のビタミンの総称で、レバーや赤身の魚などに多く含まれています。
ビタミンCを多く含む食材は、次で紹介します。