
食べた料理の積み重ねが今の体を作っていると思えば、毎日のおかず選びも慎重になるのでは? そこで、どんな食材を選びどんな調理法で食べたら太りにくいのかを、話題の新刊『食べても太らないのは、どっち?』(三笠書房)を上梓した管理栄養士菊池真由子さんが教えてくれました。
【ベーコンエッグVSオムレツ】卵のたんぱく質とビタミンで体を燃やす
どちらも卵を使った料理だが、卵1個を使ったベーコンエッグは282kcal(カロリー数は菊池さんの著書『食べても太らないのは、どっち?』より、以下同)なのに対し、卵2個で作るオムレツは133kcal。ボリュームのあるオムレツの方が太りやすそうだが、太りにくいのはオムレツ。太りにくくなるポイントは卵の量。
「卵にはやせる栄養素のビタミンB群が多く含まれるうえ、食べた食事のカロリーを体温として発散してくれるたんぱく質も豊富に含まれています。ダイエッターには積極的に食べてほしい食材です」(菊池さん・以下同)

卵は太らない体をサポートする食材ではあるが、健康的にやせるためにはいろんな栄養素をバランスよく摂ることが大事だ。そうなると、卵だけのオムレツよりもお肉も一緒にとれるベーコンエッグの方選んでしまいそうだが…。
「ベーコンは脂肪が多いうえ塩蔵品なので塩分も多い。塩分が多いおかずは、主食のご飯やパンを食べすぎてしまう傾向にあるので、結果的に太ってしまう。また、過剰な塩分はむくみの原因にもなるため、塩分の多い食事を続ければやせにくい体になるのです」
ダイエットにはマストな卵だが、コレステロールも多く含まれるので、コレステロール値が気になる人は主治医の指示に従って適量をとるのが望ましい。
「実は、卵よりベーコンの方がコレステロール値を上げてしまうので、ベーコンも食べすぎは禁物。コレステロール値が高い人はベーコンをハムにすれば、コレステロールもカロリー(65kcal)も減らせます」
【チキンカツVSメンチカツ】揚げ物は低脂肪の具材をチョイス!
揚げ物と聞いただけで太るおかずと思ってしまう人も多いのでは? チキンカツは256kcalなのに対し、メンチカツは584kcal。なんとメンチカツのカロリーはチキンカツの2倍以上! 当然チキンカツの勝利という予想通り、太りにくいのはチキンカツ。
「一般的なメンチカツはひき肉と玉ねぎを主原料にしたものが多い傾向にあり、ひき肉の脂肪の多さが太りやすさの原因です。肉の部分が少ないひき肉は、代謝を活発にするたんぱく質やビタミンB群も不十分なため、やせる要素が少ない。それでもメンチカツを食べたいときは冷凍食品のお弁当用がベター。ミニサイズで1個70~80kcal程度ですから、4~5個食べたとしても280~400kcal。通常サイズよりもカロリーダウンできます」
一方、低脂肪で良質なたんぱく質の鶏肉を揚げたチキンカツは、衣と揚げ油の脂肪以外は、たんぱく質とビタミンB群をしっかり摂ることができるので太りにくい。
「鶏肉はもも肉よりも脂肪が少ない胸肉をチョイスしましょう。胸肉は、渡り鳥が長距離を飛び続けるメカニズムについての研究から、抗疲労物質イミダゾールペプチド(別名イミダペプチド)という成分が豊富に含まれていることがわかっており、疲労回復にも有効です。体が健やかならば筋肉や内臓の働きを活性化させ、自然にやせやすい体になります」

また、ダイエットには揚げ物と生野菜を一緒に食べるのが効果的。生野菜には脂肪がないので、揚げ物を食べたとしても食事全体に占める脂肪量の割合を少なくすることができる。
「生野菜は水分が多くかさもあるので、自然に噛む回数が増えて食事の満足感を得やすく、満腹感を長持ちさせられます。温野菜ならゴロっとしたサイズのブロッコリーやにんじんなら量も噛み応えも確保できます。手軽な冷凍野菜は大きめカットを選びましょう」
【豆腐VS厚揚げ】肥満抑制成分の大豆サポニンが鍵
豆腐(1丁)は168kcalなのに対し、厚揚げ(1枚)は286cal。油で揚げてある厚揚げはカロリーも高いので豆腐の方が太りにくいはずだが、太りにくいのは厚揚げ。脂肪よりも太りにくい健康成分の量が決め手に!
「豆腐1丁(300g)脂肪量は9.6gに比べて、厚揚げ1枚(200g)の脂肪量は21.4g。厚揚げの分量は豆腐よりも100gも少ないのに、脂肪もカロリーも豆腐より断然多い。それなのに厚揚げの方が太りにくいのは、脂肪の代謝を促し肥満を予防する大豆サポニンが豊富に含まれているためです」

一方、豆腐は88.5%もの水分が含まれ、その分大豆サポニンの含有量が少ない。つまり、豆腐だけを食べ続ける“豆腐ダイエット”は、体重が落ちやすいものの栄養失調に陥りやすく健康度が下がる傾向にあり、リバウンドもしやすい。また、やつれや老け見えになりやすいので美容的なダメージも。
「厚揚げの脂肪もお湯をかけて油抜きすれば気にならない程度です。また、同量のステーキ肉に比べてたんぱく質はほぼ同量なのに対し、カロリーや脂肪は約半分。厚揚げは、食事のカロリーを体温として発散させ、代謝の活性化に必要な筋肉の材料となるたんぱく質が十分とれる優秀なダイエット食材と言えます」
肉や卵などの動物性たんぱく質は、同時に脂肪やコレステロールも摂取することになるので量を抑える必要があるが、植物性たんぱく質の油揚げなら余分な脂肪やコレステロールを気にせずたんぱく質を確保できる。
【かぼちゃのポタージュVS豚汁】噛み応えのある野菜で過食防止
見た目にも違うのは具材の量。かぼちゃと牛乳のポタージュに比べて豚汁には野菜や肉がたっぷり入っている。かぼちゃのポタージュは229kcalなのに対し、豚汁は169kcal。カロリーも低く、栄養バランスも整っている豚汁の方が太りにくそうだ。結果は、太りにくいのは豚汁。
「豚汁は豚肉、ごぼう、大根、にんじん、しいたけなど、具だくさんで太りにくい栄養素が豊富に含まれています。特に、ごぼうに多い食物繊維はコレステロールの上昇を抑えるので、豚肉の脂身(コレステロールの塊)を食べてもごぼうで帳消しに。また、歯応えのある野菜が多いのもポイント。噛む回数が増えれば早めに満腹になり食欲がわきづらくなるので、食べすぎ防止にもなります」
ごぼうだけでなく大根やにんじんにも食物繊維が含まれているので、長く胃にとどまり次の食事までの食欲もわきづらくなる。

「一方、ポタージュには牛乳がしっかり入っているので、十分なたんぱく質とカルシウムが摂れます。かぼちゃには食物繊維だけでなく、若さを保つビタミンACEの含有率も高く栄養価にも優れた食材です。ただ、ポタージュにするとかぼちゃ自体の量が少ないので、野菜が少なく、食事全体に占める脂肪量の割合が増えてしまいます」
かぼちゃのポタージュは、健康効果を得にくい粉末タイプより、手作り、缶詰、レトルトがおすすめ。
「暖かくなると冷たいスープが好まれますが、暖かい料理には自律神経をリラックスさせる効果があるのでムダな食欲がわきづらい。また、胃腸が温まって内臓機能が活性化すれば、消化や便通もスムーズになりやせ効果も期待できます」
毎日のおかずで、たんぱく質、ビタミン、食物繊維などをバランスよくしっかり食べ続けることが、太りにくい体作りへの近道と言えそうだ。
◆教えてくれたのは:管理栄養士・菊池真由子さん

1966年大阪府生まれ。管理栄養士。健康運動指導士。NR・サプリメントアドバイザー。日本オンラインカウンセリング協会認定上級オンラインカウンセラー。大阪大学健康体育部(現・保健センター)、阪神タイガース、国立循環器病センター集団検診部(現・予防検診部)を経て、厚生労働省認定健康増進施設などで栄養アドバイザーを務める。ダイエットや生活習慣病の予防対策など、のべ1万人の栄養指導に携わる。著書に、ベストセラーになった『食べても食べても太らない法』(以上、三笠書房《知的生きかた文庫》)がある。https://www.diet-class.com/