
ダイエットのために夜ご飯を抜くことは、摂取カロリーが減る一方で栄養不足になって痩せにくい体となる可能性があると、薬剤師の山形ゆかりさんは話す。では、夜ご飯には何を食べたらいいのだろうか。健康的に無理なくダイエットを続けるうえで、夜ご飯におすすめの食材など、食べながら痩せるコツを山形さんから教えてもらった。
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食べながら痩せるには朝・昼・夜のバランスが大切
食事を抜いたり、食事量に偏りがあったりすると、痩せにくくなるため、1日3回栄養バランスのよい食事をとることがダイエットには重要です。
1日の食事量のバランスは、朝ご飯3、お昼ご飯4、夜ご飯3の割合になるのが理想です。
食後に仕事や家事などで体を動かすお昼はため、カロリーを多く消費します。一方、夜ご飯後は日中に比べて運動量が少なくなりがちでカロリーが消費されにくく、たくさん食べると余ったカロリーが脂肪として蓄積されてしまいます。

ダイエット中はとくに、朝ご飯や昼ご飯の量を増やして夜ご飯のバランスをとり、1日の食事量を調整しましょう。
ダイエット中の夜ご飯におすすめの食べ物
ダイエット中であっても夜ご飯をしっかり食べることは重要ですが、その上で意識して摂りたい栄養素があります。
食物繊維が豊富な食材
ダイエット中の夜ご飯には、糖質の吸収を遅らせることができる食物繊維を多く含む食材がおすすめです。
食物繊維は野菜やきのこ類、海藻類に豊富に含まれています。これらの具材を組み合わせて味噌汁にすると、食物繊維を一度にたくさん摂取でき、さらに水分が多い汁物なので満腹感を得やすく、どか食い防止にもなります。
食物繊維を多く含む食品を先に食べると、炭水化物の吸収がゆっくりになるため食後の血糖値の上昇が緩やかになり、体内へ脂肪をためこむのを防ぐ効果が期待できます。夜ご飯に限らず、食事の際には食物繊維が豊富な食材を最初に食べることを意識しましょう。
高たんぱく質・低脂質な食材
筋肉量と基礎代謝を上げて脂肪が燃焼しやすい体を作るたんぱく質が豊富で、かつ脂質が少ない食材は、ダイエット中の食事におすすめです。
鶏のささみや鶏胸肉などの肉類、まぐろの赤身やかつおの魚類、納豆や豆腐などの大豆製品はたんぱく質を豊富に含んでいます。牛乳やヨーグルトなどの乳製品もたんぱく質が豊富な食材ですが、脂質が多く含まれているものもあるため、ダイエット中は低脂肪や無脂肪なものを選びましょう。

また、植物油や魚に多く含まれる不飽和脂肪酸は、脂質のなかでも肥満の原因となる悪玉コレステロールや中性脂肪を下げる効果があります。
不飽和脂肪酸にはn-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸があり、40〜50代の女性の摂取したい目標量は、n-6系脂肪酸は8g/日、n-3系脂肪酸は1.6〜1.9g/日(農林水産省「脂質による健康影響」https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_eikyou/fat_eikyou.html)です。
N-6系脂肪酸はオリーブオイルやなたね油などの植物油に、n-3系脂肪酸はさんまやぶりなどの魚介類に多く含まれています。植物油であれば大さじ1杯程度(約12g)、さんまは1尾(約150g)、ぶりは1切れ(約80g)などを目安に、適度に不飽和脂肪酸も摂取するといいでしょう。
ただし、体にいい油でも1gあたり9kcalあり、摂りすぎはカロリーオーバーにつながります。油からの摂取カロリー量が、1日の摂取カロリーの20〜30%未満に収まるように注意しましょう。
トリプトファンが豊富な食材
トリプトファンを豊富に含む食材も、ダイエット中の夜ご飯におすすめです。トリプトファンは心身をリラックス状態にするセロトニンの材料であり、セロトニンが増えるとストレスへの耐性が高まってダイエット中のイライラを抑えたり、食欲を抑えたりする効果が期待できます。

豆腐や納豆、味噌などの大豆製品、チーズや牛乳などの乳製品、米などの穀類、ごまやピーナッツ、卵、バナナなどに含まれています。
ビタミン・ミネラルが豊富な食材
ビタミンやミネラルも、ダイエット中の食事に欠かせません。とくに、ビタミンB群やマグネシウム、亜鉛、カルシウムなどは、タンパク質や脂質、糖などの代謝を助ける栄養素です。
ビタミンやミネラルは野菜や果物に多く含まれていますが、時期によって栄養価が異なります。たとえば、通年で流通しているトマトですが、カロテン含有量は旬の時期ではない11月は241μgなのに対し、旬の7月には528μgも含まれています(e-ヘルスネット「旬を取り入れた食生活(春・夏)」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-03-020.html)。
このように、旬の食材は栄養を豊富に含んでいるため、そのときどきの旬の食材を食事にとり入れることも、効率的にビタミンやミネラルを摂取することにつながります。
ダイエット中の夜ご飯で避けたい食べ物
ダイエット中の夜ご飯では、アルコールや糖質を多く含む食材を控えましょう。
いきなり禁酒するのが難しい場合は、お酒を飲むのを週末だけにしたり、1日に飲む量を減らしたりして、なるべくカロリーや糖質の摂取量を抑えるように心がけましょう。

また、野菜のなかでも糖質の多いとうもろこしやかぼちゃ類、加工にでんぷんや砂糖が多く使われているちくわやさつま揚げなどの練り物はダイエット中の夜ご飯では避けるのがおすすめです。
そして、めんつゆや市販のドレッシングなど、調味料には意外と糖質が多く含まれていることもあります。せっかく糖質の少ない食材を選んでも、調味料で糖質をたくさん摂取してしまう場合があるため、調味料の糖質にも注意してください。
ダイエットに効果的とされるヨーグルトも、糖質が含まれているものは逆効果になる場合もあるため、低脂肪で無糖のものを選びましょう。
夜ご飯を抜かずに痩せるコツ
ダイエット中の夜ご飯は、食べる時間や食べ方にもポイントがあります。
寝る3時間前までに夜ご飯を食べる
食べ物の消化には時間がかかります。消化前の胃に食べ物がある状態で寝ると、消化活動が睡眠を妨げてしまい眠りの質も悪くなるため、就寝の3時間前までに夜ご飯を食べ終わるよう意識しましょう。
眠りの質が悪いと代謝が下がり、食欲増進ホルモンが増加しやすくなるため、思うようにダイエットの成果を得られない可能性があります。
よく噛んで食べる
咀嚼によって満腹中枢を刺激する神経性ヒスタミンが放出されるため、よく噛んで食べることが食べ過ぎの予防に有効です。意識して噛む回数を増やすこと、根菜類や弾力のある食材など噛みごたえのある食材を食事にとり入れることで、自然によく噛んで食べるようになるでしょう。また、薄味にすると食材の味を味わおうとして噛む回数が増えるため、味付けを抑えるのもポイントです。

夜ご飯は油っこい食事を避ける
朝や昼と異なり、食後に活動しない夜のご飯には、カロリーが高い油っこい食べ物は控えるのがおすすめです。
揚げ物や炒め物よりも蒸し物や焼き物のほうが摂取カロリーを抑えられるので、たとえば餃子を食べるなら、焼き餃子より蒸し餃子や水餃子のほうがよいでしょう。どうしても揚げ物や多量の油で調理したものを食べたいときは、昼ご飯で選ぶなど工夫しましょう。
ダイエットには漢方薬も役立つ
ダイエットには、のむだけで太りにくい体質を目指すこともできる漢方薬の活用もおすすめです。
ダイエットには、「脂質代謝を改善する」「たまった老廃物を排出する」「余分な脂肪の吸収を抑え、脂肪燃焼を促して肥満改善をサポートする」「水分代謝を整え余分な水分を排出してむくみや水太りに働きかける」などの作用をもつ漢方薬を選びます。

おすすめの漢方薬
・防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
便秘がちで、おなか周りに脂肪がつきやすい人に向いています。体内にたまった余分な老廃物を便と一緒に排泄するとともに、脂質代謝、脂肪分解・燃焼を促すことで食物繊維が不足している人や脂質の摂取量が多い食生活の人のダイエットをサポートします。
・防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
疲れやすく汗かきの人に向いています。水分代謝を整えて余分な水分を体外に排出することで水太りやむくみに働きかけるため、筋肉量が少なく基礎代謝が低いために太りやすい人の肥満症の改善に役立ちます。
漢方薬を始める際の注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:薬剤師・山形ゆかりさん

やまがた・ゆかり。薬剤師、薬膳アドバイザー、フードコーディネーター。病院薬剤師として在勤中、食養生の大切さに気付き薬膳の道へ。牛角・吉野家ほか薬膳レストラン等15社以上のメニュー開発にも携わる。「健康は食から」をモットーに健康・美容情報を発信する「Medical Health -メディヘル-youtubeチャンネル」(@medicalhealth–7900)で簡単薬膳レシピ動画を公開するなど精力的に活動している。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)でも薬剤師としてサポートを行う。