お年寄り向けのYouTubeも
私は今まで、専業主婦の再就職に伴走していました。彼女たちを見ていると、「就職したいけど、子どもがまだ小さい。でも、やっぱり先に就職してしまおう」と振り切った人の多くは失敗しています。自分の限界を把握できていないから失敗する。
お年寄りの多くは、自分の限界をわかっているから「体力に自信がないのでフルタイムではなく、パートでいいや」と余裕をもって選ぶと思います。ただ、お年寄りには、その第一歩を踏み出す仕組みや環境が整備されていないし、その自信もない。
だから私はYouTubeチャンネルを始めようかなと思っています。私が働く様子を1週間分、動画に撮ってYouTubeに流す。それを見たら「なーんだ。65歳のおばあさんが、こんな仕事をできるなら、私にもできるんじゃないか」と思うお年寄りもいるんじゃないかと思っています。
今まで専業主婦の再就職支援をしてきたけれど、その蓄積は、お年寄りのマーケットにも広げられる。元気なお年寄りのマーケットにはビジネスチャンスが見えているんじゃないかなと感じています。私って、本当にビジネスチャンスを見つけるのが好きなんですよ。
老後の資金は考えず、計算する
年を取ればとるほど、体力が大事です。いくら頭が良くても体力が無ければやりたいことが実現しない。老後のお金が不安なら、考えるのではなく計算をすることも大事です。計算すれば具体的な数字が見えてきます。私の場合、一通り条件に合う老人ホームをリサーチして費用を計算しました。もし希望のホームに入るための貯金が足りなければ、あとどのぐらい働けば良いかがわかるでしょう?
みんな「不安だ、不安だ」と、ただぼんやりと考えているけれど、それでは前に進まない。お金は、あればあるほどいいでしょう? でも、そう考えていると、いつ仕事を辞めて良いかわからなくなる。いつ冒険できるかもわからないし、いくら投資するか、どれだけリスキーなものに投資できるかも判断できません。だから、お金については、「考えるのでなく、計算しようよ」といつも話しています。
◆薄井シンシアさん
1959年、フィリピンの華僑の家に生まれる。結婚後、30歳で出産し、専業主婦に。47歳で再就職。娘が通う高校のカフェテリアで仕事を始め、日本に帰国後は、時給1300円の電話受付の仕事を経てANAインターコンチネンタルホテル東京に入社。3年で営業開発担当副支配人になり、シャングリ・ラ 東京に転職。2018年、日本コカ・コーラに入社し、オリンピックホスピタリティー担当に就任するも五輪延期により失職。2021年5月から2022年7月までLOF Hotel Management 日本法人社長を務める。2022年11月、外資系IT企業に入社。65歳からはGIVEのフェーズに。近著に『人生は、もっと、自分で決めていい』(日経BP)。@UsuiCynthia
撮影/小山志麻 構成/藤森かもめ
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