
全国的に梅雨入りし豪雨への備え、また台風リスクも気になる時期に。そこで、旅の万一に備えて知っておきたい天候リスクによる飛行機の対応を、旅行ジャーナリストの村田和子さんに、実際に体験した例を交えて紹介してもらった。
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ゲリラ豪雨や台風などの自然災害が多い昨今、旅を安全に楽しく過ごすためにも「万一への備え」が大事です。特に飛行機や鉄道など交通手段の乱れ(遅延・欠航・運休)は、「自分事」として頭の片隅においておきたいもの。今回は、飛行機の遅延や欠航・運休時の対応ポイントを、実際に私が遭遇した事例とともに紹介します。

飛行機が欠航・遅延の場合の対応は?
飛行機への搭乗予定がある際には、天気予報のチェックをマメにしましょう。台風や荒天が予想される場合は、各エアラインのホームページの運航状況を確認することが大切です。欠航はもちろん、運航に影響が見込まれる便については、手配したチケットの種類を問わず、変更(搭乗日から30日以内)やキャンセルが手数料無料で可能です。往路便が対象になった場合は、復路や乗継便なども同様に手数料無料で対応をしてくれます。
ただし、いつ運航や影響があると判断するかは状況によりまちまち。前日に発表される場合もあれば、当日空港で欠航や条件付き運航となることもあります。現地での滞在が楽しめるかなども考え、わかった時点で旅行計画そのものを見直す(出発日時の変更、キャンセル等)ことも検討しましょう。

ただし上記はあくまで航空会社で直接購入をしている場合。ツアー等へ申し込んでいる場合や予約サイトなどを経由している場合は、旅行会社などそれぞれの窓口の判断となるため、早めに以下を確認しておきましょう。特に出発が旅行会社の営業時間外の場合は、予め確認をすることをお忘れなく。
・ツアーの催行か中止かの判断はいつするのか?
・連絡はどのようにくるか?自ら対応が必要なことは?
・緊急時の連絡先
添乗員がつかない宿泊と飛行機がセットのツアーなどは、各自で振替対応等が必要なこともあります。なお、ツアーの中止決定前に、自らキャンセルする場合は所定のキャンセル料が発生しますので、ご注意ください。
条件付き運航便は注意!「出発したけれど着陸できない」は本当にある
欠航よりも悩ましいと個人的に思うのが、引き返しや他の空港へ着陸する可能性がある「条件付き運航便」。5月に旅を一緒にする予定だった夫は、2回連続で着陸できず羽田空港へ引き返す事態となりました。
今回、私は大阪伊丹空港から、夫は羽田空港からそれぞれ出発し、秋田空港で待ち合わせて旅をする予定でした。ところが到着時間の早い羽田発の便は前日の夜に、伊丹発の便は当日朝に、秋田空港が荒天とのことで条件付き運航便となりました。久しぶりの夫婦旅ということもあり、また伊丹のカウンターで聞いたところ「現状では条件付き運航便の中でも、リスクが一番低い状況」とのことで、変更せずにそれぞれ飛行機へ乗り込むことに。
私の飛行機は、揺れがひどかったものの秋田空港に無事に着陸。しかしホッとしたのも束の間。先に到着しているはずの夫の飛行機が見当たりません(というか一台も飛行機がいなかった)。ほどなくして夫から「秋田空港で着陸にトライしたものの難しくて引き返した。次の便も条件便ではあるけれど空きがあったから振り替えた」との連絡があり、私は空港のラウンジで待機することに。

その後、飛行機は普通に離発着をしていたので安心していたところ、夫の到着時間が近づくと再び風が強まりいやな予感が。到着予定時刻になると「上空で待機中」のアナウンスが空港内に流れ、30分ほど秋田上空で粘ったものの再び引き返す事態となりました。この日は他の航空会社も東京便のみが運悪く立て続けに引き換えし、秋田から東京へ向かう予定だった人も機材がなく欠航。途方に暮れる姿がみられました。

引き返した飛行機から30分後に到着の便は、通常通り着陸していたのをみるに、昨今の気象状況は急に変わり予測が難しいこともあるようです。条件付き運航となると「なんとかなる」と思いがちですが、急ぎの場合を除き、最悪の事態を念頭におき判断をすることも重要です。
引き返したあとは?その他の後処理も大変
その後の我が家ですが、当日の羽田空港発の秋田便は既に満席で振替は不可(※以降の便も条件がついたものの到着はできていました)。夫は帰宅し、翌朝の便で一日遅れて秋田入りとなりました。
振替の手続きは、当日便への振替は特別カウンターが設けられ、そちらで希望を伝えて対応。翌日以降の便への振替やキャンセルはWEBで操作するようにと案内が配られたとのこと(JALの場合)。
私はといえば、予約していた宿はレンタカーで向かう予定の遠方だったこともあり事情を伝えキャンセルし、空港からリムジンバスでアクセスできる秋田市内のビジネスホテルを予約。レンタカーも日数を変更するなどの手続きをしました。天候で到着できない旨の理由を伝えたところ、宿は先方のご厚意でキャンセル料はとられず、レンタカーは1日分の返金がありました。
なお空港からのリムジンバスは、地方空港の場合、発着便にあわせてダイヤが組まれており、空港発の便は、到着がおくれればリムジンバスも遅れて出発という対応が多いようです。

条件付き運航便は予定通り到着できれば問題はありませんが、引き返せば計画が大きく狂い無駄に時間を消費します。また他の空港へ着陸すれば、自腹で予定地までの移動も必要となり、加えて天候による場合、飛行機の揺れがひどいことも。
先の例では夫曰く「ジェットコースターのようで怖かった。気分を害している人もちらほらといた」とのこと。天気予報の状況やスケジュールを考え予定を改める、あるいは便を変更する際も、より確実な便を選ぶことも重要そうです。
晴れていても欠航!? 同じエアラインで予約するのが◎
注意したいのが、搭乗日は晴れていても、前日の欠航などで機材がなく欠航となるケースがあることです。各エアラインでは、メール等で運航状況をお知らせするサービスもあるので登録しておくこと、荒天後のフライトは念のため運航状況を確認して空港へ向かうなどをおすすめします。
また、先にお伝えの通り、往復や乗継で予約をしていた場合、往路便が欠航や運航に影響が見込まれる便となった場合、復路便や乗継便も、手数料なしで変更やキャンセルができます。
ただしこれは同じエアラインで予約をしている場合に限ります。往復や乗継で違うエアラインで予約をしていると、当然のことながら復路については通常の扱いとなり、キャンセル料が徴収されたり、そもそも変更ができなかったりという事態となります。遅延で乗り継ぎがぎりぎりの場合も、同じエアラインなら出発を待つなどの配慮がありますが、違うエアラインだと特別対応はありません。リスクをヘッジするのなら、同じエアラインで手配をするのがおススメです。

いかがでしたか? 遭遇しないのが一番ですが、万一のときに焦らないためにも、基本的な対応は確認をしておくといいですね。
◆教えてくれたのは:旅行ジャーナリスト・村田和子さん

旅行ジャーナリスト。「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」をモットーに、旅の魅力を媒体で発信。宿のアドバイザー・講演なども行う。子どもと47都道府県を踏破した経験から「旅育メソッド(R)」を提唱、著書に「旅育BOOK~家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ(日本実業出版社・2018)」。現在は50歳を迎え、子どもも大学生となり、人生100年時代を楽しむ旅を研究中。資格に総合旅行業務取扱管理者、1級販売士、クルーズアドバイザーなど。2016年より7年間、NHKラジオ『Nらじ』月一レギュラーを