不調改善

運動、睡眠、食事…専門医10人が「がんを遠ざける」ために実践しているルーティン

スクワット
運動、睡眠、食事…専門医10人が実践している「がんを遠ざける」ルーティンとは?(Ph/イメージマート)
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日本人の死因トップである「がん」。誰しもがなりうるこの時代、知りたいのは正しく、そして効果の高い予防法と、いざかかったとき、再発しないために何ができるかということ。がん細胞を目覚めさせないための秘密のルーティンを専門医たちに直撃した。

スクワット、ダンベル運動、加圧トレーニング

すべての専門医に共通していた習慣は、積極的に体を動かすこと。帝京大学福岡医療技術学部教授でがん治療認定医の佐藤典宏さんは、筋トレをルーティンにしている。

 

佐藤典宏さん
佐藤典宏さん
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「週に2、3回は【1】スクワットや【2】ダンベル運動、体幹を鍛える【3】プランクを合計20分程度行っています。筋トレや有酸素運動ががんのリスクを低下させることは、国内外の複数の研究で示されています。例えばアメリカで約144万人を対象にした大規模調査の結果では、活発に運動する人はそうでない人に比べて、がん発症リスクが7%低い。

また2022年に東北大学や早稲田大学らの研究グループが16の信頼度の高い論文を調査したところ、週30分の筋トレを行うことでがんの発症リスクが9%低下することもわかっています」

スクワット
スクワットは効果的(Ph/PIXTA)
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同じく筋トレを習慣にしているのは、東京女子医科大学乳腺外科教授の明石定子さんだ。

「筋肉量を維持するために【4】週1回30分、ジムで加圧トレーニングを行っています。適度な運動をして健康的な体を維持することは、がんに限らず糖尿病や高血圧など生活習慣病の予防にもつながります。特に、女性にとって閉経後の肥満は乳がんのリスクを上昇させる要因にもなる。閉経後にBMIが1増えると乳がんリスクは5%増えるともいわれています」

湘南記念病院乳がんセンター長の土井卓子さんも声を揃える。

土井卓子さん
土井卓子さん
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「閉経後は女性ホルモンが減少して代謝が落ちやすいので、若い頃と同じカロリーを摂取していると確実に太ります。50才を過ぎたら食事量に気を配り、体を動かすべき。ジムには通っていませんが、【5】数駅程度ならバスに乗らずに歩き、【6】食べすぎないようにするなど、ちょっとした意識を心がけています」

2018年に膀胱がんで内視鏡切除手術を受けた東京大学大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授の中川恵一さんは、毎日30分の運動を欠かさない。ジムでの【7】ランニングや【8】自転車こぎなどの有酸素運動に加え、スクワットや【9】腕立て伏せなどの筋トレも行う。

中川恵一さん
中川恵一さん
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「膀胱がんは喫煙がリスク因子だといわれますが、もともと私はたばこを吸わないので罹患したのは偶然でしょう。ただし、有酸素運動と筋トレは、がんの再発を予防するといわれているので、運動は続けていきます」(中川さん)

入浴、映画鑑賞…ストレスがかからない生活

多忙な専門医たちはストレスコントロールにも気を抜かない。消化器外科医として20年で2000件以上の大腸がん手術に携わった石黒成治さんは、「何よりストレスがかからない生活を心がけている」と話す。

石黒成治さん
石黒成治さん
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「ストレスは免疫力を低下させるので何を置いても避けるべき。ストレスホルモンのコルチゾールが常に高い状態の人は、がんのリスクが高いというデータもあります。多くの場合、ストレスの原因は他者が関係していて自力ではコントロールできません。そのため私は【10】たとえ家族であっても他者の行動にとらわれないように意識しています」(石黒さん)

獨協医科大学下部消化管外科教授である中村隆俊さんのストレス発散法は「入浴」と「映画」だ。

中村隆俊さん
中村隆俊さん
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「単身赴任中で自宅がユニットバスのためシャワーで済ませることが多いですが、手術が続いたときなどは時間が許せば【11】病院近くの温泉に行って、広い湯船で足を伸ばしリラックスしています。【12】趣味である映画鑑賞の時間も大事。過度なストレスは免疫力の低下に加えて過食を引き起こし、その結果肥満を招いてがんのリスクを上げる可能性も。好きな方法で上手にストレス発散を行うといいでしょう」(中村さん)

どれだけ忙しくても、しっかり睡眠時間を確保していることも医師たちに共通するマイルールだ。厚生連高岡病院消化器外科診療部長の小竹優範さんが言う。

小竹優範さん
小竹優範さん
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「質の悪い睡眠が続けば、全身の長期的な体調不良につながり、がんを含め、あらゆる病気の罹患リスクが上がる。仕事柄、夜中に電話で起こされることはありますが【13】できるだけ決まった時刻に布団に入り、7時間は寝るようにしています。毎日続けると睡眠のリズムが整い、22時に寝るとアラームをかけなくても自然と5時頃に目が覚めます」

当然ながら、喫煙は絶対にNGだ。

「【14】たばこは吸いません。喫煙だけでなく、副流煙もがん全般の危険因子ですし、肺機能の低下を招きます」(小竹さん)

21時以降は食事をしない、朝食をしっかりとる

体は食べ物でできている—それを体現するかのように、医師たちが声を揃えて主張したのが「食生活」の重要性だった。昨年秋までがん研究会有明病院で乳腺センター長兼副院長を務めた相良病院院長の大野真司さんが言う。

大野真司さん
大野真司さん
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「食生活の乱れは肥満のもと。肥満は乳がんに限らず、糖尿病などの病気を招き、糖尿病はすい臓がんなどのリスクを高める。私自身、糖尿病予備軍でもあるので【15】砂糖や油を控えて、【16】21時以降は食事をとらないようにしています」

夜勤や急患などで生活が不規則になりやすいからこそ、食事の仕方やタイミングにもひと工夫。

「一日の体調を整えるためには、【17】忙しくても朝食をしっかり食べることが非常に大切。夕食が遅くなることもありますが、食べてすぐに寝ると胃や腸に負担がかかってしまうので、【18】2時間くらい空けて寝るようにしています」(小竹さん)

内臓に負担をかけないために【19】「間欠的ファスティング」を実践しているのは、石黒さんだ。

「食事の回数はあまり意識せず、食事をとっていい時間帯だけを決めています。私の場合はもともと朝食を食べないタイプなので、13〜21時の間に食事をとり、そのほかの時間帯は水やお茶以外は何も口にしません。食べ物を消化するには想像以上に体のエネルギーを使うので、食べない時間を作って内臓を休めれば免疫機能がアップします」

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