ライター歴45年を迎えたオバ記者こと野原広子(67歳)。出身は茨城県。もちろん愛する食べ物は「納豆」だ。これまで納豆を使ったアレンジ料理は否定派だったが、このほど機会があり初めて食べてみることに……その味やいかに?
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若い人との交流を求めて久我山へ
「ちょおーっとお。いつまで暑いのよ〜」と天に向かって叫びたくなるほどの酷暑。67年生きてきて、ここまで暑い夏ってあったっけ。一生懸命、思い出そうとしても温まった頭は動きません。かといって家に引きこもっていたら、老化が進みそうで怖い。
いやさ。同世代を見ていると65歳からだよね。ちょっと話して「老人」と思う人と「中高年」に見える人がいるんだよ。なので私は、ちょっと欲張って「中年寄りの中高年」あたりに踏みとどまっていたいと願って始めたのが若い人の中に混じることと、「これまで降りたことのない駅には積極的に参ろうぞキャンペーン」よ。
で、30代の集まるイベント会場で仲良くなったSちゃんから誘われて先日、久我山駅からほど近い『BAR SOU』へ。ここでSちゃんの友だちが月一回、納豆を使った料理をお披露目しているんだって。
“ソウルフード”納豆が意外な料理に変身
納豆と聞いたら茨城生まれの私のソウルフードではないの。大昔、20代半ばにイタリアに3 週間いたことがあるんだけど、ある朝、目が覚めたら瞼の裏に納豆が浮かんで思わず泣いたもんね。日本語も白いご飯も恋しかったけれど、それより何より納豆だったのよ。
「え、これは私の知っている納豆じゃない!」
そう言ってカウンターの向こうに立つ阪本仁さんの顔を思わず見ちゃったわよ。イタリア料理は好きだけど私は自分で料理をするようになった19歳の時から納豆スパゲッティを作ったことはないんだわ。そりゃそうよ。炊き立てのキラキラした新米にトマトソースをかける気になるかって。コラボだ何だって言っても世の中には混ぜたらイカンものがあるんだって!
と、本来なら怒りそうな私だけど、ひと口含んだらお口の中では納豆とマスカルポーネがまったりと混じり合って、ふふふ、ほほほと喜んじゃってる。ふむふむふむ。なるほどね。これは納豆が別格なんだわ。
「わかってもらえますか? 納豆の原材料の大豆も製法も違います」と阪本さんが言えば、「納豆の独特の臭みがなくて、大豆の香ばしさが先に立つんだね」と私。 「じゃあ、これはどうですか? ドライ納豆です」と阪本さん。「いやいや、何なんですか、このエレガントな納豆は!」と私。で、つい禁酒中のわれを忘れて昼間なのにハイボールを注文しちゃった。