ライター歴45年を迎えたオバ記者こと野原広子(67歳)。ライターという仕事柄、多くの人と会う機会があるが、こと地元の人との交流となると高いハードルがあるという。そんなオバ記者のもとに知人から近所の盆踊り大会のお誘いが。重い腰を上げて向かってみると……。
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重い腰がなかなか上がらないが…ヨガ教室へ
五十肩が痛くてしばらく休んでいたヨガ教室。毎週、日曜の朝になると行こうか、やめようかグズグスしたあげく、腕が上がらなくてできないポーズを思い浮かべて、ああ、もう、やめやめ!とグレていた私。
だけどなぁ、そんなことを言っているとますます腰回りは太くなるばかり。このまま何もしないと体の動きがどんどん鈍くなって、やがては歩けなくなる、動けなくなる。あああ、それはイヤだ、絶対にイヤッ。と、ベッドの上でひとしきり大悶絶をしたあげく、よっこらしょと重い腰を上げたある日曜日のこと。
壁一面、鏡張りのスタジオに入って行くと「お久しぶりぃ〜」と声をかけてくれたのがM子さんなの。みんなから「ボンオドラー」と呼ばれている人で去年だったか、一昨年だったか、私にも「踊りの稽古があるから来ませんか?」と誘ってくれたのよね。話したらM子さんの家と私の住まいは徒歩5分圏内ではないの!
ジモティに対して高い高い心の壁
とはいえ、ここからが大変なんだよねぇ。秋葉原に引っ越してきて8年。根が田舎もんの私はジモティに対して高い高い心の壁があるんだわ。地域のお祭りも毎年、気になるんだけど遠巻きに見ているだけで近づけないんだよね。
「ええ〜、どこにでもズカズカ入っていくあなたが? 信じられな〜い」と言うのは40歳のときに2年弱住んだ青山でひょんなことから仲良くなった青山育ちのK子さんだ。前例があるではないかと、当人に言われたらひと言もないけれど、でも考えたらK子さんは例外でね。18歳で上京してから半世紀経つけど、ご近所友達になったのは彼女だけよ。
そりゃあ、ライターをしていれば職業上、誰とでも話すわよ。今年は夏の初めに都知事選挙前の石丸伸二さんとガハハ笑いのインタビューをしているし、宮崎謙介・金子恵美夫妻には、「お二人が離婚しないのは民意に反します」なんて失礼なことを言っている。
バイト先の議員会館では、あら、やだ。数年前だけど私、総理大臣とツーショット写真なんか撮ってる!
でもなぁ〜、なんだよね。ご近所付き合いは気が引けるのよ。「私も子供が生まれるまではダメだったなぁ」と40代のライター仲間のE子はいう。そうそう、子供がいると交友関係が一気に広がるよね。いわゆる”ママ友”だ。それでも「地方出身ママとジモティのママとは、それなりの壁があることはあるよね」とE子はいうの。
「今年、最後の盆踊り」にお誘いが
そんな私に「今年、最後の盆踊りですよ」とM子さんはまた声をかけてくれたわけ。10月末、日本橋の寳田恵比寿神社のべったら祭りが毎夏、東京各地で行われている盆踊りの最後の最後なんだって。
いや、びっくりしたねぇ。寶田恵比寿神社前の大提灯に数の提灯が交通止めにした道々を照らして名物のべったら漬けのほかたこ焼き、七味、飴細工などの露店がびっしりですごい賑わいなの。盆踊りの輪に近づくと「こっちこっち〜」とM子さんが手を振ってくれて、「入って入って」。気がつくと輪の中に入って手足を動かしていたわよ。
しかしさすがはお江戸のど真ん中、日本橋の盆踊りだわ。輪の中には日本髪のお姉さんがいるかと思えば歌舞伎俳優?という風情のお兄さん。そして着物をシュッと着た70代、80代のおじさま、おばさまが踊るキレッキレの『ダンシングヒーロー』や『東京ブギブギ』のなんと素敵なことよ! あらら、ちゃんとした袈裟を着たお坊さんもいる! 思えばここは小伝馬町の牢獄のすぐそばなのよね。私のヘナチョコ踊りが慰霊になるとは思えないけど、まぁ、いいか。
思い出した、母ちゃんが言っていた言葉
そして祭りが終わるとM子さんのお仲間が集まってコレド日本橋で二次会になり、こうなったら私も本領発揮してビールをぐびぐび、キャハハ、おかしー! 根がお調子者だから飲むとはしゃいじゃう。
そして日本橋から秋葉原のそれぞれの自宅まで3人でほろ酔い機嫌でおしゃべりしながらぷらりぷらりと歩いて帰ってきたのでした。
そういえば2年前に92歳で亡くなった母ちゃんが言ってたっけ。「馬には乗ってみよ。人には添うてみよ」と。
そうだよね。67歳。グズグス言ってないで人からお声がかかったらまず行く! 出来るだけ行くことにしようっと。
◆ライター・オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
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