めがねよりも快適に過ごすことができるからとコンタクトレンズを手放せない、という人もいるだろう。そこで、目の健康を守るために知っておきたい知識や新常識を『いつも使っているコンタクトレンズのことを、あなたはほとんど知らないかもしれない』(アスコム)の著者で、コンタクトレンズ会社社長の吉田忠史さんに聞いた。すでに使っている人も、これからデビューする人もコンタクトレンズ選びの参考にしよう。
Q.コンタクトレンズに年齢制限はある?
よくある問い合わせとして、「コンタクトレンズは何歳からつけられますか?」と聞かれることがあるという吉田さん。
A.定期的な診察で目に異常がなければ何歳でもOK
小中学生の成長期のタイミングは長時間つけることを避けるのが望ましいが、年齢の上限はないという。
「眼科医による診察を定期的に受け、目に問題が起こっていなければコンタクトデビューは、何歳からもOKです」(吉田さん・以下同)
コンタクトレンズにも遠近両用レンズがある
「老眼がある場合には、メガネと併用するか、コンタクトにも遠近両用レンズがあるので、そちらを使用するという選択肢もあります」
ただし、加齢によって減ってしまう角膜内細胞が2000個/平方ミリメートル以下と計測された場合は、コンタクトレンズの使用を控えた方がよいとされている。角膜内細胞を計測する機械がある眼科で、定期的に検査するのが安心だ。
Q.コンタクトレンズはめがねと同じ度数でいい?
吉田さんは「別に検査しなくても、めがねと同じ度数で作ればいいや」と安易に考えるのはNGだと話す。
A.コンタクトの度数はめがねよりも弱くなる
その理由は、めがねとコンタクトレンズでは目との距離が違うことによる。めがねは目から10〜15mm離れているのに対し、コンタクトレンズはほぼ距離がなく、同じ度数を使った場合は見え方に差が出てしまうからだ。
「一般的にコンタクトの度数はめがねよりも0.25〜1.00ほど弱くなります。ですから、たとえ自分の度数を知っているめがねユーザーでも、コンタクトをつくるときには改めて視力検査が必要です」
同じ度数でも人によって見え方が違う
また、角膜の大きさや形は人によって異なるため、同じ度数でも人によって見え方が異なる。
「家族と同じ視力だからと同じコンタクトを使用しても、見え方が違ったり、装着したときに違和感を覚えたりするはずです」
Q.コンタクトレンズは乱視や老眼も矯正できる?
近視を矯正するというイメージが強いコンタクトレンズだが、結論からいうと乱視や老眼の矯正も可能だと吉田さんはいう。
A.矯正可能だがタイプによってはコンタクトレンズが限定される
乱視とは近視や遠視と同じ、屈折異常の1つ。角膜や水晶体の形にゆがみがあることで、文字やものが二重に見えたりブレて見えたりする状態。実はこのゆがみは、程度の差があるものの、ほとんどの人にあるという。その上で、大きく分けて乱視には正乱視と不正乱視の2つのタイプがあり、これは眼科で診断される。
「正乱視は角膜や水晶体が上下、左右、斜めのいずれかの方向に傾いたラグビーボールの形になっているために焦点が合わない状態のことです。不正乱視は角膜の表面に不規則なでこぼこが生じたり、ゆがみが生じたりすることでピントが合いにくい状態です」
正乱視はソフトコンタクトレンズでの矯正が可能だが、不正乱視はハードコンタクトレンズでの矯正になる。
老眼はなるべく早く遠近両用に切り替え
老眼も、遠近両用コンタクトレンズでの矯正が可能だ。老眼は、水晶体の厚みを変える機能(調節)が衰えて、近くにピントを合わせるのが難しくなることによって起こる。
老眼は大体40歳前後から現れるが、コンタクトレンズで矯正するのであれば早めの切り替えがよいという。
「遠近両用のコンタクトには、遠くを見るための度数と近くを見るための度数が同心円状に交互に入っています。遠近両用のコンタクトは、加入度数(近くを見るための度数と遠くを見るための度数の差分の数値)が小さなものからのほうが慣れやすいといわれています。そのため、老眼がはじまったと思ったらなるべくすぐに遠近両用のものに切り替えると、早く慣れることができますよ」
◆教えてくれたのは:株式会社パレンテ代表取締役・吉田忠史
よしだ・ただし。2011年に株式会社パレンテ代表取締役就任。コンタクトレンズECサイト「レンズアップル」を運営するほか、 自社ブランド「WAVE」では「“見える”をもっと楽しく。 “見える” をもっと手軽に。」 をコンセプトに、コンタクトの枠を越えた商品・サービスを展開し、 視覚を通じて人生を豊かにすることに貢献。 日本一コンタクトを愛し日本一コンタクトを売りたい男として、YouTube「コンタクト社長よしだちゃんねる」 を配信している。https://www.youtube.com/channel/UC42lUmww3cdxr0nUKiS647g
◆監修:眼科医・河内敏
かわち・さとし。コンタクトレンズの正しく安全な使用法を啓もうすべく、 株式会社パレンテと組んでさまざまなプロジェクトを企画したり、ラジオパーソナリティやイベントでの講演も行なったりしている。