LDLが高い人の方が総死亡率は低かった
都内在住の主婦Aさん(61才)は、血液検査で高コレステロール(脂質異常症)と診断され、薬をのみはじめたもののひどい目にあったと話す。
「数週間くらい経って手足の筋肉に痛みを感じるようになって、明らかにおかしいと感じたんです。ネットで調べたら副作用かもしれないとわかって、医師に伝えて薬をやめたら症状がおさまりました。いまは食事に気をつけてはいるものの、薬はのんでいません」
東海大学名誉教授で健康診断の数値に詳しい大櫛陽一さんは、Aさんのようなケースを数多く診てきた。
「病院を受診すると薬に誘導されますが、コレステロール値を下げるスタチン系の薬には筋肉が溶けて痛みを感じる横紋筋融解症だけでなく、うつなどの脳障害や間質性肺炎、糖尿病、がん、肢体の不自由な子供の増加など重い副作用のリスクがある。手足の筋力が徐々に低下していくALS(筋萎縮性側索硬化症)のリスクが10〜100倍に増えるという報告もあります」
LDLの数値が高いと心筋梗塞になりやすいという言説について、大櫛さんは疑問を呈する。
「私が日本人を対象に行った追跡調査では、LDLが高い人の方が総死亡率は低かった。アメリカでは2023年に、心血管系疾患のリスクを予測する計算式からLDLの項目が削除されました。ただし、500人に1人存在する遺伝性の家族性高コレステロール血症で血栓を起こす遺伝子異常が同時にある場合は、心筋梗塞が多いことがわかっています。
LDLは、細胞と神経の膜やホルモン、ビタミンDの材料です。不足して細胞膜が弱くなると免疫力の低下や脳障害、骨粗しょう症のリスクも高くなります」
室井さんが続ける。
「アメリカでは2013年、心臓病学会がコレステロールに摂取制限を設けないとし、コレステロールが含まれた食品を多量に食べても問題ないとしました。日本でも2015年に厚生労働省がコレステロール摂取目標量を撤廃しましたが、いまだに消費者の間では“高コレステロールは悪”とする風潮があり、低コレステロールをアピールする食品があふれているのが現状です」
※女性セブン2024年11月28日号