寒い時期に起こりやすい乾燥による肌荒れは、かゆみや痛みを引き起こすため、悩む人も増える。「乾燥性湿疹の改善には、肌への刺激を避け、バリア機能の修復を助けるためのセルフケアが重要です」と話すのは薬剤師の山形ゆかりさん。そこで、乾燥による肌荒れの原因や対策のためのケア方法や食事、漢方薬について教えてもらった。
乾燥によるバリア機能の低下が原因
空気が乾燥する秋冬は肌から水分が失われやすく、肌のバリア機能が低下し肌が荒れる「乾燥性湿疹」が起きやすくなります。
通常、肌のバリア機能は外部刺激から肌を守り、水分の蒸発を防いで潤いを保つ役割をもっています。しかし、秋冬は湿度が低下することで肌の水分が蒸発しやすくなり、肌が乾燥してバリア機能が低下し、さらに乾燥が進むため、わずかな刺激でも炎症が起きやすくなるのです。
とくに、更年期以降の女性は、コラーゲンの生成を促し肌の水分をキープする女性ホルモンの分泌量が減少するので、肌が乾燥しやすい傾向にあります。
乾燥性湿疹はかゆみや痛みを伴うため、寝ている間に無意識にかいてしまうことも多く、知らず知らずのうちに悪化していることがあります。
乾燥による肌荒れの対策
乾燥による肌荒れには、保湿をこまめにするだけでなく、肌のバリア機能を傷つけないように肌への刺激を避ける対策が有効です。
ただし、乾燥性湿疹の症状が進行している場合は、炎症を抑えるためにステロイド外用剤や抗アレルギー薬が必要になることがあります。湿疹やかゆみがひどい場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。
保湿効果の高い成分や加湿器で保湿をする
朝や入浴後、外出前などには、ローションやクリームなどでこまめに保湿をしましょう。とくに、お風呂上がりや食器洗い後など、乾燥しやすいタイミングはより丁寧な保湿が必要です。
乾燥性湿疹対策には、保湿効果の高いセラミドやヘパリン類似物質、抗炎症作用のあるグリチルリチン酸が配合されたものが適しています。
また、部屋の湿度を40〜60%に保つと、肌の水分の蒸発を防ぐのに役立ちます。加湿器を使用する、入浴後に浴室のドアを開けておく、洗濯物を室内に干すなどの方法で適切な湿度をキープしましょう。
衣類などを工夫し、肌への刺激を避ける
肌に直接触れる服は、肌触りが優しく刺激が少ない「綿(コットン)」や「絹(シルク)」などの天然素材がおすすめです。体を締め付けないサイズや縫い目が肌に当たらないデザインを選ぶと、さらに刺激を抑えられます。
防寒用の吸湿発熱機能インナーは、熱を生み出すために肌の水分を吸収します。肌の乾燥を悪化させる可能性があるため、乾燥性湿疹の予防や改善のためには避けた方がよいでしょう。
また、40℃以上の熱いお湯への入浴やこすり洗いは肌への刺激になります。お風呂の温度は38℃程度に設定し、かたい素材のタオルやスポンジ、ブラシなどで肌をゴシゴシ擦るのではなく、よく泡立てた洗浄料でなでるように洗うのがよいです。
乾燥による肌荒れ改善にはビタミンB群
乾燥による肌荒れ改善には、ビタミンB群を含む食材が役立ちます。ビタミンB群とは、ビタミンB1、B2、ナイアシン(B3)、パントテン酸(B5)、B6、ビオチン(B7)、葉酸(B9)、B12の8種類のビタミンの総称です。
エネルギー代謝に関わり、皮膚や粘膜の健康を保つ働きもあるため、肌のターンオーバーを整える効果が期待できます。
ビタミンB群は、肉や魚、たまご、野菜など幅広い食材に含まれています。旬の食材であれば、まつたけやしいたけなどのきのこ類、かつおやいわしなどの魚類がビタミンB群が豊富です。
ビタミンB群は互いに作用しているため、不足しているものがあると本来の働きを発揮できません。さらに、体内での消費が早いため不足しやすい栄養素です。そのため、含有量の多い食材をバランスよく食べることを意識しましょう。
なお、ビタミンB群は水に溶けやすい性質をもっています。ビタミンB群の流出を防ぐ刺身やたたき、流出した栄養素も摂ることができる汁物などにすることで、栄養を効率よく摂取できます。
乾燥による肌荒れには漢方薬も役立つ
乾燥による肌荒れを改善するには、「血流を整えて肌に必要な栄養を届ける」「余分な熱を取り去り、かゆみや炎症を抑える」などの効果がある漢方薬を選びます。
おすすめの漢方薬
・当帰飲子(とうきいんし)
「血(栄養)」を補うことで血流を整え、肌に栄養と潤いを与える漢方薬です。冷え症で肌が乾燥し、かゆみがある人に用いられます。
・温清飲(うんせいいん)
血流を整えて肌に栄養を与えるとともに、体内にこもった余分な熱を取り去り、炎症やかゆみを抑えます。肌が乾燥して色つやが悪くのぼせやすい人に用いられます。
漢方薬を始める際の注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、効果が実感できないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用するときには漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:薬剤師・山形ゆかりさん
やまがた・ゆかり。薬剤師・薬膳アドバイザー・フードコーディネーター。病院薬剤師を経て食養生の大切さに気付き、薬膳アドバイザーとしても活動する。牛角・吉野家他薬膳レストラン等15社以上のメニューを開発。そのほか、症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp)で薬剤師を務めている。