ジェネリック薬と先発薬に差異が出やすい「形状」
前出の長澤さんによると、ジェネリック薬と先発薬に差異が出やすい「形状」があるという。
「そのひとつが、皮膚や粘膜に直接貼るタイプの外用薬です。外用薬は、シートや粘着部分が特許になっていて真似ができないことも少なくありません。ジェネリック薬の湿布を貼るとかぶれてしまうという患者さんに先発薬をすすめてみたところ、かぶれが治まったということがありましたから、同じような悩みを抱えている人は、試してみるといいかもしれません」
また、少しずつ長時間にわたって有効成分が溶け出す「徐放剤」タイプの薬も、効果に差を感じるケースが多いという。
「溶け出し方の再現が難しいのです。急速に効き目があらわれることで、薬によっては、動悸などの『副作用』の方が強く出てしまうこともあります」(長澤さん)
実際、ジェネリック薬の製造過程には、曖昧な部分がある。2023年に厚労省が発表した「後発医薬品使用促進ロードマップに関する調査報告書」によれば、ジェネリック薬の製造会社118社のうち、約40%が、輸入後そのまま使う原薬を中国とインドの2か国から輸入していた。
「中国やインドの製薬会社の中には衛生管理体制が非常にずさんなところも少なくありません。ある中国の企業では、下水道から採取する悪質な再生油を原薬の原料にしていたというケースがありましたし、アメリカの食品医薬品局が、インドのある製薬工場を視察したところ、工場内にハエの大群や鳥がいたことがあったといいます。海外の製造環境を仔細に把握することは難しく、このような事態がいまも起きていないともいえません。
強い副作用に襲われる可能性や製造環境の不透明性があることから、医療関係者に一定数は、『私はジェネリック薬はのまない』という人もいます」(前出・医療ジャーナリスト)
先発薬は次々と販売中止に
それでもジェネリック薬が急激にシェアを伸ばす理由はどこにあるのか。松田医院和漢堂院長で日本初の「薬やめる科」を開設した松田史彦さんが“からくり”に言及する。
「高齢者の増加とともに、年々増大する医療費を少しでも削減したいのでしょう。かつては医師が『ジェネリック薬でも可』と指定しない限りジェネリック薬を処方できませんでしたが、いまは薬剤師の判断でジェネリック薬をすすめることができます。
国はジェネリック薬を推奨しており、それに追随する形で、ジェネリック薬を処方するケースが増えています。つまり患者さん本人に確固たる拒否の意思がない限り、ジェネリック薬を処方されることになるのが実情といえます」
強引なジェネリック薬への移行は、ほかの弊害を生み出している。
先発薬を希望すると差額を請求されるようになったことは先述したが、医師が先発薬の必要性を担保すれば差額は生じない。だが、「これは厚労省のアリバイ作りのようなものです」と慶應義塾大学名誉教授で医師の加藤眞三さんが指摘する。
「ジェネリック薬の製造過程や細かい原材料は不透明で把握が困難なので、この患者さんにこのジェネリック薬はダメ、と医学的根拠に基づいて判断することは事実上不可能です。黙って見ているしかありません」
安価なジェネリック薬の増大で、先発薬は次々と販売中止に追い込まれており、ジェネリック薬へ移行する潮流は止められない。
ジェネリック薬に移行するか否か。加藤さんも、頭を悩ませているという。
「私の専門は消化器内科なので、ストレス性の腹痛や下痢に悩む患者さんに、効き目が高い『セレキノン』という先発薬をよく処方していました。私自身気に入っていた薬でしたが、ジェネリック薬への移行が進み採算が取れなくなったのか、販売中止に。やむなく『トランコロン』という先発薬を使おうと思いましたが、そちらも販売中止に追い込まれた。
じゃあジェネリック薬しかないかと思ったが、流通量は依然として不安定な状態です。 ジェネリック薬の品質についても不安はありますが、薬の効果が出ているか、副作用がないかを、患者さんが主体的に確かめながら、医師や薬剤師に伝えていくことが重要です。
今後は、医師や薬剤師に言われるがまま薬を処方されるのではなく、自分に合ったメーカーの製品を処方してもらうなど、薬を『自分で指定する』時代になっていくかもしれません」
ジェネリック薬新時代はどこに着地するのだろうか。
※女性セブン2024年12月12日号