“花の82年組”と謳われた人気アイドル・堀ちえみ(57才)が、ステージ4の「口腔がん(舌がん)」と左首のリンパ節への転移を公表し、芸能活動を休業したのは、2019年2月19日のこと。術後さらに食道がん(ステージ0)も見つかり、療養は長引きそうに思われた――。それから5年後の今年2月、自身のブログで“舌がんの完治”を公表。それまでの空白を埋めるかのように、芸能活動を再始動させた。そんな“Re‐Born(再起)の2024年”の活躍と、それまでの闘病生活について、堀自身が改めて振り返る。
ファンの声援を聞き、「手術してよかった」と思えた
2024年10月29~30日、東京・渋谷の「duo MUSICEXCHANGE」でライブ「CHIEMI STYLE 2024~Autumn~」が開催された。病気療養のため2019年に音楽活動を休止していた堀が、5年におよぶリハビリテーション期間を経て、本格的に音楽活動を再開したとあって、会場は満席。当時の親衛隊もかけつけ、大いに盛り上がった。堀は自ら作詞した新曲『FUWARI』を含む19曲を熱唱し、元気な姿を印象付けた。
「実は闘病後、初めてのライブは2023年に開催しました。私のデビュー40周年を記念して企画していただいたもので、東京・大阪・名古屋・福井で公演。このときは26曲を歌いました。昔からの親衛隊の皆さんをはじめ、ファンの方たちから、“おかえり”“おめでとう”と言っていただき、手術をしてよかったと思えました。年末にはXmasディナーショーにも初挑戦させていただいて……。不定期ながらも少しずつ活動し、皆さまの前に出る自信をつけていったんです」(堀・以下同)
そして満を持して今年、本格復帰を果たしたというわけだ。
闘病中の目標は「歌が歌えるようになる」こと
「“皆の前で歌う”という目標は、リハビリを初めて2か月たった頃、私が言語聴覚士の先生に提案しました」
というのも、術後早い段階から家族や担当医らに、「そろそろ仕事の予定を考えてみては」と言われていたからだ。何をして復帰とするか……そう考えたとき、“もう一度歌いたい”と思ったのだという。
「でも、ファンの皆さんに痛々しい状態をお見せしたくない。私は舌の6割超を切除し、太ももの組織を移植して再建したのですが、神経が通っていないため、思うように舌が動かせないんです。それで、発語が不自由になりました。リハビリをしても、以前の状態に戻ることはありません。とはいえ、なるべく完璧を目指したい――。その思いを伝えると先生が、“好きな曲を1曲、繰り返し音読する”という宿題をくださいました。歌詞をローマ字に直して音読したりするのですが、とにかく発語しづらい。『ゆらり』という単語なら『YURARI』と書き直し、母音と子音に分けるなどして、1語1語、習得していきました」
代表曲の『リ・ボ・ン』を人前で歌えるようになるまで1年かかったという。去年のライブで26曲、今年のライブで19曲歌えたということが、どれだけの努力を要したのか、想像に難くない。
「いまのきみが素敵」という夫の言葉に救われて
“皆の前で歌う”という目標を持つことは生きる希望になったが、そこにいたるまでには、葛藤もあったという。
「出演しているレギュラー番組に迷惑をかけないためや、突然メディアに出なくなったことにより、いろいろな憶測が飛び交うのを防ぐなどの理由で、私は手術前に病名を公表しました。そのせいか術後すぐ、誹謗中傷にさらされました。夫が事前にネット検索できないよう私のスマホにロックをかけて守ってくれたおかげで、そこまで多くの意見を直接見ることはありませんでしたが、生き残ってしまったことを恥ずかしいと感じるようになったんです。歌うという目標があっても常に心の中は揺れていました」
そもそもどうしてがんになってしまったのか、なぜもっと早く見つけられなかったのか――がんになる前とは違う自分に対する葛藤や、思い通りに進まないリハビリ。ただでさえきつい闘病に加え、いわれのない誹謗中傷にもさらされ、気分は落ち込み、泣き暮れる日々が長く続いたという。
「そんなとき、夫から“これまでのすべてがなくなってしまったと悔やんでも仕方がない。いまのきみがかわいいし、素敵なんだ”と言われました。“そうなのかな、無理して言っていない?”と返すと、“そんなふうに思っちゃいけない、家族を信じてほしい”と。それで、余計なことを考えず、支えてくれる家族や先生方を信じて、歌える曲を増やしていこう。いまの自分をかわいそうと思わず、“これが私なんだ”と胸を張って生きていこうと思えるようになりました」
堀が前を向くにはどうすべきか。堀には7人の子供がいるが、夫も子供たちも言葉を尽くし、時に一緒に出掛けるなどして励まし続けてくれた。そんな家族に支えられ、気持ちを切り替えてからは、無我夢中でリハビリを続け、皆の前で歌うという目標に邁進したという。