健康・医療

森永卓郎さんが語るがん治療薬オプジーボを使う理由とメリット・デメリット「効いているかはわからないが、前向きな気持ちになって免疫力が上がった気がする」

終末期のがんと共存しながら生きる経済アナリストの森永卓郎さん
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2人に1人ががんになる時代、いまやがんは「不治の病」ではなくなった。治療法や治療薬も日進月歩で進化している。しかし、どんな薬にもメリットがあればデメリットもある。終末期のがんと共存しながら生きる森永卓郎さん(67才)が自身の経験から“夢の新薬”のリアルを語る。

今年8月には13冊もの本を上梓

晩秋らしい朝晩の急激な寒さに、「いまでも、もう手が、かじかんでいてですね。ちょっと雪の中に手を突っ込んでる感じです」と明かした森永さん。これは11月26日に出演したラジオ番組内でのコメントだが、ほかにも毎日のように森永さんの発言がメディアで報じられ、いまなお精力的に活動している。

昨年末にがん罹患を公表してから約1年。今年8月には、なんと13冊もの本を上梓し、「年内にあと13冊仕上げないといけない」(森永さん・以下同)というから、とても医師から昨年、“2024年の桜は見られないだろう”と余命を宣告されていたとは思えない。

森永さんの命を今日に至るまで支えているのが、2014年に承認された新薬で、世界初の免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」だ。

従来の抗がん剤との相性が最悪だった

がん細胞は、リンパ球の一種であるT細胞と結合して免疫細胞からの攻撃を免れ、増殖する。オプジーボはT細胞にかけられた“免疫のブレーキ”を解除し、免疫細胞に本来の働きを取り戻させることでがん細胞を攻撃できるようにする効果がある。

オプジーボは、がん治療に用いる薬である(写真/AFLO)
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従来の抗がん剤と比較すると、副作用が少ないとされ、治療効果も比較的高いと期待されている。承認当初は、使用できるがんの部位も限られていたが、次第に適用範囲は拡大し、手術による治療が難しい場合などの選択肢となっている。森永さんがオプジーボに踏み切ったのは“従来の抗がん剤との相性の悪さ”からだった。

「私のがんはもともと、すい臓がんと診断されていました。それですぐに抗がん剤治療が始まったのですが、抗がん剤には相性があるようで、私にはまったく合わなかった。投与が始まるまでは、がんとは予想もしないくらい元気だったのに、その抗がん剤を打ったら体調が急激に悪化。自力で立つこともできないし、食事はおろか水分もとれない。

“あぁこのまま死ぬんだな”と、三途の川がはっきりと見えて、死を意識しました。そこでいったん抗がん剤をやめて、まずは気付薬のようなものをのむことにしたんです」

すると途端に体調が回復。仕事をしながら治療と検査を繰り返すことで、原発不明がんとの診断を受けた。

「つまり、がんがどこにあるのかいまだによくわかっていない。抗がん剤は、がんの種類によって違いますから、なんのがんかわからないと打てません。そうなると、自ずと選択肢は免疫に働きかけて免疫を強くする治療法しかないわけです。

現在はオプジーボと、NK療法という、血を抜いて免疫細胞を増殖させて戻すという2つの治療を並行しています」

しかし、森永さんは「オプジーボに効果があるかはわからない」と話す。

「だって治ってないですから。少なくとも、がんを消したり、寛解させる力は私に関してはまったくない。がんが浸潤した広がりが肝動脈の周りにあって、それがこの1年間、大きくも小さくもならずに拮抗状態が続いています。寛解に向かっているわけでも、死に向かっているわけでもない、極めて不透明な状態が続いている。

10人以上の医師と相談しましたが、現状ではこれ以外の治療法はないそうです。私の場合は、原発不明がんなのでオプジーボは保険適用で二十数万円ほどですが、NK療法は自由診療なので1か月に100万円くらいかかっています」

痛い、苦しいというのは一切ない

オプジーボは承認当初、年間で3000万円を超えるほどの薬価がかかっていたが、現在では80%以上下落したと報じられる。

「製薬会社は反発しているようですが、最初は開発経費が上乗せされてバカみたいに高かった。適正価格になってきたと思います」

安価になったことで、投与患者数も年々増加。一方、従来の抗がん剤よりは比較的少ないとはいえ、オプジーボにも吐き気や倦怠感などの副作用が報告されている。しかし、森永さんにはいまのところ副作用は出ていない。一見すると、非常に“画期的な薬”のように思えるが、森永さんはこう指摘する。

オプジーボには吐き気や倦怠感などの副作用が報告されている(写真/イメージマート)
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「痛い、苦しいというのは一切ありません。それは、従来の抗がん剤とはえらい違いです。ただし、デメリットもあります。効いているかどうかがさっぱりわからないんです。悪化しているわけではないから効いているんだとは思いますが、普通は3か月くらいで効果が落ちてくるらしいのでレアケースのようです。でもこれはあくまで私の場合で、ほかの人の効果についてはまったく保証できない。人によって効くか効かないかは、まったく違いますから、“オプジーボを打てばがんが治る”というのは、私は嘘だと思う」

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