医療費は年を重ねるほどかさみやすくなるが、必要経費としてあきらめていないだろうか。実は医療費にも節約につながるポイントがあり、少しの工夫で支払うコストを削減することができる。そこで、節約アドバイザー・ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんに、病院にかかるうえで医療費を削減する方法について詳しく教えてもらった。
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医療費節約には「かかりつけ医」を持つことから
医療費節約のためにまず意識したいのが、「かかりつけ医」を持つこと。「かかりつけ医」とは、病気やけがをした際に最初に相談できる身近な医者を指します。
病気になったらとりあえず大きい病院に行けば安心、と考えている人もいるかもしれませんが、かかりつけ医であれば、日ごろの体調不良の相談ができ持病や病歴、体質を把握したうえで診察してもらうことができますし、必要な場合は大病院への紹介状を書いてもらうことができます。
紹介状なしで大病院に行くと10倍高く付く
大病院では患者が殺到しないよう、紹介状のない患者に対し、「選定療養費」という特別料金を取っています。この選定療養費は保険が適用されないため、紹介状なしで大病院にかかった場合は通常の治療費に加えて初診選定療養費7700円が追加で必要になります。また、日本赤十字医療センターでは、初診時・再診時、時間外にかかる選定医療費が1万1000円(税込)です。
ただし、災害により被害を受けた方が受診する場合や、労働災害、交通事故などのやむを得ないなどの事情がある場合は、紹介状なしでも徴収の対象外となります。
一方、他の病院から紹介状をもらった状態で大病院に行った場合は選定療養費がかかりません。紹介状の作成に2500円かかりますが、保険が適用されるため、3割負担なら自己負担額は750円と、紹介状がない場合の10分の1程度に抑えることができます。
通いやすいかかりつけ医を選ぶ
かかりつけ医は相談しやすいことが重要なため、自宅の近所にある内科や耳鼻科、皮膚科など症状に応じた診療所や小規模な病院から探すといいでしょう。また、いくら近所であっても、合わないと感じる医者には相談しづらいもの。質問に対して丁寧に答えてくれると感じられるなど、気持ち的にも通いやすいところを選ぶのがおすすめです。
かかりつけ医でも受診時間には要注意
かかりつけ医に行く場合でも、受診する時間には注意しましょう。曜日や時間帯によって、割増料金がかかることがあるためです。
医療機関によっても異なりますが、夜間には「深夜加算」、既定の診療時間外では「時間外加算」、や土曜日の午後、日・祝などの休診日や年末年始には「休日加算」など、割増料金がかかります。緊急性の高いとき以外は平日の日中や土曜の午前中など、割増料金がかからない曜日と時間帯に行くのがおすすめです。
なお、調剤薬局はドラッグストア内の営業時間中でも、日曜・祝日や平日の特定時間帯に調剤した場合は、割増料金が加算されますので注意しましょう。
はしご受診は避ける
1つの病気やけがで何度か通院する必要がある場合、複数の病院にかかる「はしご受診」も避けたほうがよいです。休日は自宅近くのかかりつけ医、平日は勤務先近くの病院にかかると便利そうに思えますが、新しい病院に行ったり、前回の診療から時間が空いたりすると初診料がかかります。
再度初診料がかかるまでの期間は病院によって異なりますが、厚生労働省では「患者が任意に診察を中止し、1か月以上経過した後」は初診として扱うことができるとしています。また、検査をそれぞれの病院でやることになれば、検査料も2回分かかります。
医師側も治療内容とその経過を把握しづらくなるなどデメリットが多いため、1つの病気やけがの治療では、最初にかかった病院を継続して受診するようにし、気になることがある場合は転院を考える前に、主治医にきちんと相談するようにしましょう。
月末の入院はなるべく避ける
入院や手術が必要になった際、緊急性が低いなどスケジュールを医師と相談して決められる場合は、月末の入院を避けるようにするのがおすすめです。
日本の健康保険には、高額な医療費を支払った際、自己負担限度額を超えた分を後から払い戻してもらえる「高額療養費制度」というものがありますが、暦の上での1か月ごとで支払額が計算されるためです。
例えば、自己負担限度額8万円の人が11月末から入院し、11月の医療費が5万円、12月の医療費が8万円となった場合、高額療養費制度で払い戻される金額はゼロ円ですが、12月から入院し、12月の医療費が13万円となった場合は、5万円の払い戻しを受けることができます。
自己負担限度額は年齢や所得によって異なるため、協会けんぽのページ(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3030/r150/)などで一度確認してみることをおすすめします。なお、自己負担額は世帯で合算できるため、可能なら世帯で治療のタイミングを合わせるといいでしょう。