【村上弘明インタビュー】「故郷の被災」「大腸がんの手術」を経て、古希目前で事務所から独立「人生は一度きり。不安を逃げ道にして温かい場所に埋もれていたくない」
がん宣告とコロナ禍──残りの人生を見つめ直して
転機はその後も訪れる。震災から7年後の2018年、61才で大腸がんと診断。そして2020年からのコロナ禍による自粛生活もまた、村上が人生を考え直すきっかけになった。
「幸い、がんのステージは0で、腹腔鏡手術で患部を切除してすみましたが、健康には自信があったので驚きました。やはり何事も“有限”なのだと改めて感じましたね。コロナ禍では思いがけず時間ができたので、それまでやりたくてもできなかった読書に没頭しました」
トルストイやドストエフスキー、ホメロスといった古典の長編を繰り返し読んでは、次のステップの礎にしているという。
「自分で書いた脚本で映像作品を作りたいんです。震災や故郷をテーマにしたものはもちろん、変わり続ける世界の中で失ってはいけない“人への愛情や愛着”の大切さについて伝えていきたい」
新たな目標を生き生きと語る村上だが、古希を前にした挑戦に不安はないのだろうか。
「もちろんあります。でも不安を逃げ道にして温かい場所に埋もれていたくないんです。やらずに後悔はしたくないタイプなんです」
いまは体調も万全だという村上。今後は俳優としてだけでなく、脚本家など新たな活躍が見られるかもしれない。
【プロフィール】
村上弘明(むらかみ・ひろあき)/1956年、岩手県生まれ。法政大学在学中の1979年に『仮面ライダー(スカイライダー)』に主演し、ドラマデビュー。1985年以降、『必殺仕事人V』シリーズにレギュラー出演。『炎立つ』(1993年)、『秀吉』(1996年)、『元禄繚乱』(1999年)など、NHK大河ドラマにも多数出演。時代劇のほか、『津軽海峡ミステリー航路』(フジテレビ系/2002~2009年)などのサスペンス、刑事ドラマでも好演。私生活では1990年に結婚して2男2女を授かる。
取材・文/上村久留美 撮影/政川慎治
※女性セブン2025年1月30日号