【花粉シーズン到来】近年増加している「子どもの花粉症」に有効な治療法は 医師が解説する「レーザー治療」 約80%が鼻づまり、鼻水やくしゃみの改善を実感したとの報告も

本格的な花粉シーズンがやってくる。東京都は1月8日に飛散が確認されていて、1985年の調査開始以来最も早い記録となっている。今年の花粉は過去10年で最も多いという予測もあり、花粉症の人にとっては悩ましい春となりそうだ。
「花粉症はいまや国民病と言われていますが、最近は子どもの花粉症が増えています。5~9歳の子であれば3人に1人、10~19歳では2人に1人が花粉症を発症しているという調査結果もあります」──そう語るのは、近著に『子どもの一生を決める花粉症対策』がある医師の村川哲也氏だ。前掲書から、子どもの花粉症対策にお勧めだという治療法のひとつ、「レーザー治療」についての解説をお届けしよう。
レーザー治療とは?
「レーザー治療」とは、レーザーを鼻の中に照射して、花粉症の症状を改善する治療法のことです。鼻の内側の粘膜をレーザーで焼灼すると、腫れていた粘膜が硬く縮こまり、鼻の中の空間が広がるので、鼻づまりの解消が見込めます。また、粘膜の受容体をこわすので、外から侵入した花粉やハウスダストなどが鼻の中に付着しても反応しにくくなります。
このレーザー治療の良いところは、一回手術をすればある程度効果が長続きすることです。薬物治療の場合は薬をやめると、症状が再び出てしまいますが、レーザー治療はいったんおこなえば、薬を飲まなくても鼻水、鼻づまり、くしゃみといった症状が出にくくなります。
その効果は1年から1年半とされ、花粉が飛散する前に1回だけおこなえば、その年は鼻水、鼻づまり、くしゃみで悩まされることが少なくなり、毎日、ラクに過ごすことができます。
子どもの場合は治療費も自己負担なし、あるいは少額で済む自治体もあるので、花粉症治療の選択肢の一つとして考えておくのも良いかと思います。
「鼻の中の粘膜を焼くのって痛くないの?」と心配されるかもしれませんが、治療前に麻酔をするのでほとんど痛みを感じません。くわえて、レーザー治療で使用する器具は細く、鼻に入れても違和感が少ないのが特徴です。
ただし、麻酔の際に細い綿棒を鼻の中に10本程度入れるので、それに驚かれる患者さんはいます。
子どもを施術する際は、痛みがほとんどないシリコンの細い綿棒を使うことが多いですが、それでも鼻の中に何かを入れることに抵抗感を覚える子はいます。特に、小学校の低学年以下の子どもは、綿棒を入れると泣いてしまったり、動いたりしてしまうケースがあり、レーザー治療をおこなえない場合があります。
そこで、子どもの適性を見るために、レーザー治療をおこなう前にも何度か診察をします。鼻に空気を吹きかけるなどして、その反応を見て、「できる」「できない」を判断します。それゆえに、ガマンができることが条件になり、多くの病院が小学校高学年を対象としています。
まずは近くの耳鼻咽喉科に、子どもにレーザー治療が可能かどうか相談してみてはいかがでしょうか。

レーザー治療の流れは? いつおこなうのがいい?
流れはとてもカンタン。基本的にはいつおこなってもOKです。
レーザー治療を受けるときは、問診と検査を受けてから日にちを決めておこないます。 入院は不要で、レーザー照射は原則日帰りで終わります。 レーザー治療は大人も子どもも同じようにおこなわれ、当日は次のような流れで進みます。
(1)ガーゼやスプレーを用いて、キシロカインと呼ばれる麻酔液で鼻粘膜を表面麻酔。15~20分ほど待つ。
(2)鼻の穴に細いパイプ型の器具を入れ、アレルギー性鼻炎の主な反応部位(下鼻甲介粘膜)をレーザーで焼灼する。焼灼時間は両側あわせて約10分。
(3)ほかに何も問題が起きなければこれで帰宅。
レーザー治療を受けると、約80%の人が鼻づまり、鼻水やくしゃみの改善を実感するという報告もあります。
ただ、レーザー治療をした直後は一時的に鼻づまりや鼻水がひどくなることがあります。それはレーザーで焼いた反応によるものです。たとえば転んですりむくと、血が出てきたあと、ジュクジュクしたものが出てきます。これは傷を修復するために白血球やマクロファージを含んだ滲出液が出てくるからなのですが、レーザー治療も同じです。
レーザーで焼いたところを修復しようとジュクジュクした滲出液が出てくるのです。
鼻の中は閉鎖空間なので、滲出液が出てくると、鼻づまりや鼻水の症状が出やすくなます。
その場合は、耳鼻咽喉科で鼻の中を掃除します。掃除は専門器具を使って、掃除機のように鼻の中の余分な滲出液や鼻水を吸いとります。鼻の中の掃除を毎日おこなうと、次第にスッキリとし、快適に過ごせるようになります。
レーザー治療は基本、いつおこなっても大丈夫です。ただ、治療後に鼻づまりを起こしてしまうと、どうしても口呼吸になりがちです。口呼吸になると、口の中やのどが乾燥を起こしてしまいます。
特に、秋から春先にかけて乾燥するシーズンでは、口呼吸をすると口からウイルスに感染し、風邪やインフルエンザにかかるリスクが高まるので、比較的湿度の高い、梅雨から夏の時期におこなうことをオススメしたいです。
※村川哲也著『子どもの一生を決める花粉症対策』より、一部抜粋・再構成